被害届の出し方は?告訴状との違い、受理されない場合の対応について解説

被害届とは

被害届とは、犯罪の被害に遭った事実を捜査機関に申告する書類のことをいいます。被害届は、捜査機関が犯罪事実を知る端緒となります。犯罪の捜査を始めるきっかけとして、被害届はとても重要なものです。

 

被害届を提出しようとすればどこにいけばいいのか

刑事事件の被害にあって警察に被害届を提出したい場合は、警察署や交番で被害届を提出することができます。しかし、交番の場合は、警察官の人員も限られており、長時間事情を聞いて被害内容を確認する余裕がない場合があります。交番の近くの路上で発生した窃盗や暴行傷害事件のようなものでない限りは、なるべく警察署で被害届を出す方が良いでしょう。

実際に犯罪被害に遭った直後であれば、110番をして警察官に来てもらうことが、最もわかりやすい対応です。警察官が到着すれば、更なる被害を防ぐことができますし、警察官に被害状況を確認してもらえます。警察官が犯罪事実を認知すると、被害届を出すかどうか確認してくることが多いです。このときに、事件としてきちんと捜査をしてほしいと思うのであれば、警察官に対し、「被害届を提出したい。」と伝えましょう。警察官は、被害届提出の手続きをしてくれます。

目の前で犯罪が行われたのではなく、例えば、会社の帳簿を整理していたら横領の疑いが生じた、詐欺に遭った疑いが生じたなど、犯罪発生から時間が経過している場合には、110番ではなく、最寄りの警察署に相談に行くとよいでしょう。
相談に行く場合、事前に警察署に連絡を入れて、概要を説明し、担当警察官に時間をとってもらうことをおすすめします。警察署に行く際は、犯罪事実の存在を裏付ける資料を持って事情を説明しに行くとよいでしょう。担当警察官に事件の内容を理解してもらいやすくなります。

また、被害届には、犯罪の日時、場所、被害にあった物件、被害金額などを記載することになりますから、あらかじめ事情を整理したメモ等を作っておくとスムーズに手続きが進みます。

 

被害届について悩み事があった場合にはどうすればいいのか

犯罪の被害に遭ったときに、警察へ被害届を出した方よいのかどうか悩むことがあると思います。このような場合、まずは警察に相談してみるのも一つですが、あらかじめ弁護士に相談することも一つの方法です。
弁護士に相談しておくと、警察から聞かれると思われる事情について、あらかじめ整理できますし、被害届を出すのか、あるいは民事的な争いにするのかなどを総合的に考えて、今後採るべき対応を検討・選択することもできます。

 

告訴状と被害届の違い

捜査機関に犯罪の被害を申告する方法としては、被害届の提出の他に、告訴状の提出という方法があります。

被害届と告訴の違いについては、被害届は被害の申告にとどまり、告訴状はそれに加えて犯人を処罰することを求める意思が含まれているとよくいわれます。しかし、実際のところは、わざわざ時間をかけて被害を申告する場合には、形式的に提出したものが被害届であっても、犯人に対する処罰意思を有していることは多いでしょう。

告訴状と被害届は、犯罪事実を申告することは同じですが、その後の手続きが異なっています。告訴状を受理した警察官は、速やかに告訴に関する書類及び証拠を検察官に送付しなければなりません(刑事訴訟法242条)。この条文の意義については、警察において通常すべき捜査をした上で検察官に送付する扱いとされているため、告訴を受理した後、警察官は速やかに捜査を行わなければなりません。

 

被害届を受理してもらえない場合はどうすればよいのか

まず、警察官に何故受理できないのかという理由を尋ね、その理由が合理的なものであり、是正できるものであれば、速やかに是正して被害届を受理してもらえるよう努めるべきでしょう。
他の事件が多くて忙しい、被害が小さ過ぎる、民事事件として解決してほしいなど、納得できない場合は、弁護士に相談することをお勧めします。

 

事例

1 所轄警察署で受理を拒否された告訴を、後に受理してもらった事例

従業員から約600万円の業務上横領の被害を受けたAさんが、ご自身で所轄警察署を訪れて被害相談をし、被害届の提出、告訴の受理を求めたところ、所轄警察署からは、「業務繁多である。そもそも管轄違いの事件であり、別の警察署に相談に行くべきである。」などの理由で、被害届の提出も、告訴の受理も拒まれてしまいました。
Aさんから告訴のご依頼を受けた当事務所の弁護士は、警視庁本部捜査2課その他に働きかけを行い、その結果、所轄警察署に告訴を受理させることに成功しました。
その後もサポートを続け、捜査担当検事への働きかけ等を行った結果、被疑者は逮捕・勾留された後に起訴され、有罪判決が下されました。

※このほか、詐欺罪、名誉毀損罪、業務妨害罪などの告訴を受理してもらった実績があります。

 

2 県警本部等と協力しながら、被害届の提出にこぎつけた事例

強制性交等罪の被害に遭ったBさんが、所轄警察署に被害届の提出に行ったところ、「Bさんの供述だけでは犯罪事実があったとは言えない。」などと言われ、被害届の提出を拒まれてしまいました。
Bさんから、被害届提出や被害者支援全般を依頼された当事務所の弁護士は、県警本部や監察室等に働き掛けを行うとともに、Bさんに同行して再度被害相談に行き、所轄警察署の警察官に対し、事情を説明しました。
その結果、無事に被害届の提出を行うことができました。

 

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

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