どのような場合に器物損壊罪に問われる?具体例・判例から弁護士が解説

器物損壊事件について

器物損壊事件は、物を壊すというシンプルな犯罪です。しかし、その簡易な言葉とは裏腹に、意外な類型が器物損壊に含まれていたりもします。
器物損壊罪は、腹が立って感情に任せて行われたり、嫌がらせなどという軽い気持ちで行われたりします。
そのような事情は、犯罪の成立を妨げませんし、物を壊す行為をする認識が有るとなれば、捜査機関として捜査を行っても全く不思議ではありません。

また、その壊した物の価値や重要性は、得てして被害者の方がより理解が深く、加害者は軽んじていることがよくあります。そのような場合、事件を起こしてからその重要性に気付くということもありがちです。
損壊の結果が大きければ、捜査機関の捜査はより厳しくなりますし、最終的な結果としても大きな責任を問われることになりかねません。
また、そのシンプルな犯罪であることから、他の犯罪と同時に成立する場合もあり、全体として大きな事件となることも珍しくありません。
ここでは、器物損壊についての刑罰や刑事弁護について記載していますが、事案によって大きく性質が変わってきますので、「物を壊すなんて小さな事件だ」と決めつけたりせず、また、「物を壊したら取り返しがつかない」と諦めたりせず、当事務所までご相談いただきたいと思います。

器物損壊事件とは

人の物を壊すなどすると、器物損壊罪が成立します。
器物損壊罪の類型には、公用文書等毀棄、私用文書等毀棄、建造物等損壊及び同致死傷があり、それぞれ器物損壊罪よりも重い刑罰が定められています。
器物損壊罪とは、その名称のとおり「物」を「壊す」と成立します。
ここでいう損壊とは、(1)物を物理的に壊す場合だけではなく、(2)物の効用を害する全ての場合を含みます。
物理的に壊す場合と効用を害する場合を区別することは難しい場合もありますが、次のような例があります。

器物損壊の具体例

(1)物理的に壊す場合

・皿やコップを割る
・自動車を傷つける
・提示された選挙ポスターを破る

(2)物理的に壊さず、効用を害する場合

・食器に放尿する
・提示された選挙ポスターに落書きをする
・土地に多数の杭を打ち込み使用を困難にさせる
・コンピュータをウイルスに感染させ記録されたファイルを使用できなくする

器物損壊罪の法定刑

器物損壊罪で起訴された場合は、最高で3年以下の懲役が科せられる可能性があります。
刑法第二百六十一条
「前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。」

窃盗罪との関係

器物損壊罪と思っていたら、窃盗罪が成立するという場合もあります。
被害者を困らせるために被害者の物を一度持ち出したというような場合には、窃盗罪が成立するのか、器物損壊罪に留まるのか検討が必要です。

より大きな犯罪も成立する場合も

器物損壊罪は、物を壊すというシンプルな内容から、他の犯罪の手段として行われたりするなど、複数の犯罪とともに成立する場合が珍しくありません。
威力業務妨害罪の手段として器物損壊が行われる事案、
傷害罪と合わせて器物損壊が行われる事案、
銃砲刀剣類所持等取締法に抵触する銃砲刀剣類により器物損壊が行われる事案、建造物侵入罪の手段として器物損壊が行われる事案、選挙妨害罪の手段として器物損壊が行われる事案などの例は珍しくありません。

器物損壊事件の弁護方針

器物損壊罪は、親告罪とされておりますから、検察官が起訴するには被害者の告訴が必要です。
つまり、被害者に告訴を取り下げていただくと、公訴がされません。被害者に告訴を取り下げていただくためには、告訴を行った被害者の方に、お気持ちを変えていただくことが必要になります。
また、器物損壊罪の他にも犯罪が成立し、その犯罪が親告罪でないとしても、器物損壊についての示談は重要です。
そして、他の犯罪が成立する場合には、被害者の方のお気持ちも複雑なものになることが珍しくありません。
当事務所では、被害者の方に対して何を伝えるのか、依頼者の方と一緒に考えていきたいと思います。

【参考判例】令和5年7月12日福岡地方裁判所小倉支部判決 器物損壊被告事件

〖事案〗
 被告人Aは成人式の日に、①女性甲がレンタルし、着用していた振袖(損害額約14万6500円相当)等に対して墨汁様の黒色液体を振りかけて、②女性乙が着用していた振袖(損害額約60万円相当)等に対して、同じく墨汁様の黒色液体を振りかけて汚損した。
〖判決〗懲役1年2か月
〖判決の理由〗
⑴ Aに不利な事情
  ・ 連続的・計画的といえ、悪質性が認められること。
  ・ 振袖を着用している女性に対する悔しさ等の気持ちから犯行に及んだという動機が、身勝手といえる。
  ・ 被害額は合計約74万円と高額であること。
  ・ 被害弁償はなされていないこと。
  ・ Aには累犯前科が複数あること。
⑵ Aに有利な事情
  ・ Aがすべての事実を認め、謝罪や反省の態度を表していること。

この判例のように器物損壊罪のみであっても、前科が存したり、被害額が高額であった場合などには実刑判決に至ることもございます。
 器物損壊罪でお悩みの方は、一度、ヴィクトワール法律事務所までご相談ください。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

刑事事件について高い専門性とノウハウを有した6名の弁護士が在籍する法律事務所です。

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