窃盗に関する少年事件

弊所には、「息子が万引きをしてしまったということで警察から連絡がありました。どうしたらいいでしょうか?」「息子は少年院に行くことになるのでしょうか?」といった窃盗に関する少年事件のご相談も多く寄せられています。

そこで、このコラムでは、

窃盗に関する少年事件に多いご質問について、

万引き事件を例にして、それぞれの場面ごとに回答します。

 

まず、一般的な少年事件は以下のような流れを経ることが多いです。

【手続きの流れ】

①逮捕・勾留

②家庭裁判所送致

③(観護措置)

④審判期日    

 

【Q未成年でも逮捕される?…①】

  未成年でも逮捕される可能性は十分にあります。窃盗罪の場合、最大で23日間、逮捕勾留される可能性があります。

 

  もっとも、少年法によって「やむを得ない場合でなければ…勾留を請求することはできない。」と規定されています(少年法43条3項)。逮捕勾留は少年の心身に重大な影響を与えるため、可能な限り避けるべきと考えられているのです。

  本件のように窃盗罪の事案であれば、勾留によって少年が受ける影響の大きさを考えると、可能な限り、勾留は回避すべきです。もっとも、被害額が大きかったり、知人、友人と一緒になって万引きしてしまった場合などには、裁判官は勾留を認める方向に考えます。

このような場合には、法律家の視点で効果的な説得を行うべく、弁護士に依頼されることをおすすめします。

 

【Q学校に事件のことは知られてしまうの?退学になってしまうの?…①、③】

事件になったからと言って、必ずしも学校に知られてしまうとは限りません。

 もっとも、逮捕勾留されてしまった場合や観護措置がとられてしまった場合には、それが長期間になればなるほど、いずれ学校に知られることとなってしまうでしょう。そのような場合には、弁護士にご依頼いただき、逮捕勾留、観護措置を回避したり、取り消してもらったりしてもらう必要があります。

 

一方、在宅事件といって、逮捕勾留などはされずに捜査・調査がされている場合であっても、捜査機関や裁判所からの連絡で、学校側に事件のことが知られてしまうリスクがあります。弁護士であれば、捜査機関や裁判所へ、学校への連絡を控えてもらうように交渉することも出来ます。

 

  退学処分の判断は各学校の裁量によるところが大きいです。もっとも、弁護士であれば、誤解のないように事件の状況を適切に説明したり、お子さんの反省状況をきちんと示す等の働きかけを行い、退学処分の回避に向け最大限の努力をしたします。

 

【Q警察署で話を聞きたいと言われたけど、どうすればいい?…①】

  もし万引きをしてしまったことが間違いない場合であっても、警察署に言われるがままに取調べを受けることは危険です。未成年は成人と比べて、捜査機関からの誘導を強く受けやすいと言われています。

  取調べでは供述調書という書類にサインすることを求められます。

  「やったのは間違いないし、反省しているから、ちょっと内容が正確でないところもあるけど、刑事さんに怒られたくないから、この調書にサインしよう。」こんな風に考えるお子さんはとても多いです。誠実なお子さんほど捜査機関に迎合的になりやすいリスクがあるのです。

  しかし、これはとても危険です。仮に万引きをしていたことが間違いないとしても、「どんな風に盗んでしまったのか」、「いつから盗もうと思っていたのか、「盗むときどんな気持ちだったのか」といった点は、事件の処分に大きく影響します。こういった点についてもしっかり法律的な観点から、適切な回答

をすることができるどうかは、とても重要になってきます。

  また、もし万引きの後に、店員さんの手を振り払って逃げる等していた場合には事後強盗罪という重大事件に発展することになってしまう可能性もあります。「ちょっと手を払っただけだから大丈夫。」そう考えて、安易に調書にサインしてしまうと、思いもよらない事態になってしまうかもしれません。

 

  どの点がポイントになるのか、これは法律家でないと中々判断が難しいものです。弊所にご依頼いただければ、数々の少年事件に対応してきた弁護士の視点から、正しい取調べ対応をアドバイスすることができます。

 

 

【Q警察署、検察庁の後はどうなるの?裁判になる?…②】

まず、成人事件と同じく、捜査機関が今回の事件について捜査を尽くします。

その後、捜査機関が犯罪の嫌疑があると考えた場合には

全ての事件が家庭裁判所へ送られます。これを「全件送致主義」といいます。

成人事件と大きく異なるポイントです。

成人事件の場合は、被疑者の反省状況や示談状況に応じて今回に限っては起訴を猶予するという処分をすることもあるのですが、少年事件ではこれがありません。

少年事件は、処罰よりも、教育によって少年の更生を図ることが目的とされているためです。

 事件が家庭裁判所へ送致された後は、ご自宅か少年鑑別所で待機しながら家裁調査官といった専門家との面談を重ねて、審判までの時間を過ごすことになります。

 

【Q少年鑑別所ってどういうところ?…②、③】

  事件が家庭裁判所に送致された日に観護措置をとるか否か家庭裁判所は判断します。裁判所が観護措置をとるという判断した場合、少年は鑑別所に送られます。

  弊所の弁護士であれば、裁判官と面談して、観護措置をとられないように尽力をいたします。

鑑別所については、少年鑑別所法という法律に定められています。

少年鑑別所では、少年の性格、経歴、心身の状況及び発達の程度、非行の状況、家庭環境、交友関係などを調査します(鑑法16条2項)。

鑑別所にいる間には、鑑別技官との面談や心理テスト、法務教官による日常生活の観察が行われます。

また、家裁調査官が鑑別所に来て、少年と直接面談することもあります。

これらの調査によって、少年の家庭環境や内面的な問題点を探り、鑑別所として、少年に対してふさわしいと考える処遇意見を裁判所へ通知します。

弊所の弁護士であれば、少年の内省を引き出し,また家庭環境など調整し鑑別技官や調査官と面談してより軽い(少年にふさわしい)処遇意見を出してもらえるよう交渉いたします。

 

【Q家裁調査官ってどういう人?…②】

  家庭調査官は、審判期日までの間に、裁判官の代わりに少年から直接話を聞いて、少年に望ましい処分についての意見を出します。

もちろん、審判期日において、少年に対する最終的な処分を決めるのはもちろん裁判官ですが、家裁調査官の意見はとても重要です。というのも、家裁調査官は心理学、社会学、教育学といった専門的知識を学んでいるため、少年に対する処分を決定するにあたり、多角的かつ適切な検討ができるとされているためです。

家裁調査官は、少年はもちろん、ご両親やご家族との面談も行うことが多いです。形式的に調査官の質問に答えているだけでは、調査官の共感は得られません。調査官との面談までに、弁護士との面談を通じて、少年自身が事件に対する理解を深める必要があります。

今回どうして万引きをしてしまったのか、二度と万引きをしないために今後どんなことをしていけばいいのか、それに対してご家族はどんなサポートをするのかといったことを具体的かつ効果的に考えておかなければ、思わぬ評価を下されてしまうかもしれません。万引きだからといって決してあなどってはいけません。万引きという比較的軽微な犯罪にもかかわらず、決してあなどれない理由については次のQで解説します。

 

【Q審判期日って何?…④】

 審判期日では、今回の事件についての少年に対するふさわしい処分を決める場です。具体的には、不処分、保護観察処分、少年院送致処分のいずれかの処分をすることとなります。

  審判では、少年に対して裁判官から複数の質問がなされます。出席している両親に対しても質問がなされます。時には厳しい質問もあるかもしれません。成人の刑事裁判では、検察官と弁護士がそれぞれお互いの見立てを法廷で主張し,最終的に裁判所が判断するという形になりますが、少年事件の場合は、裁判官が主体的に少年や両親に質問していく形になります。

  裁判官は最終的な処分を決めるにあたって、「非行事実の重さ」と「要保護性」という2つの観点から検討をします。

非行事実の重さはイメージしやすいと思います。本件であれば、何点の商品を盗んでしまったのか、被害額はいくらかといったことです。

  他方、「要保護性」という言葉はあまりなじみがないのではないでしょうか。これは簡単に言うと、少年の性格や置かれている状況等に照らすと将来再び同じような非行をしてしまう危険性があるかどうかということです。「万引きやっただけだから。」と軽い気持ちでいると、少年の思慮が浅い、ご両親の監督が不十分であると評価されてしまうかもしれません。

  少年事件では、特にこの要保護性が重視されます。したがって、万引きであっても、少年自身に内省が見られなかったり、家庭環境に問題があるようであれば、少年院送致処分となってしまう可能性も決して否定できません。

 

【Q審判期日まではただ待っているだけで大丈夫?…④】

 審判期日までは、ただ待っているだけではいけません。先ほどご説明した2つの観点のうち、特に「要保護性」について、少年とご家族が連携して、しっかりと準備をしておく必要があります。その準備のために、経験豊富な弁護士が法的な観点からより効果的な形でお力添えをさせていただける場面は多いです。「もっと早く弁護士に相談していれば。」「あのとき弁護士に頼んでおけばよかった。」と後悔される方もいらっしゃいます。もし窃盗に関する少年事件でお悩みの場合は、まずはお気軽にご相談いただければと思います。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

刑事事件について高い専門性とノウハウを有した6名の弁護士が在籍する法律事務所です。

毎年500件以上のご相談が寄せられており、高い実績にもとづいた最良のサービスを提供いたします。

豊富な実績を元に刑事事件に関するコラムを掲載しております。

お気軽にお問合せ、ご相談ください。03-5299-5881 お気軽にお問合せ、ご相談ください。03-5299-5881 メールでのご相談はこちら