私人逮捕は罪に問われる?逮捕・監禁罪について弁護士が解説

逮捕・監禁罪とは

逮捕・監禁罪(刑法220条)は不法に人を逮捕または監禁した場合に成立します。
逮捕・監禁罪は、移動の自由を侵害することに対する罪です。

逮捕とは、ロープで手足を縛るなど、人を一時的に拘束することを指します。
監禁とは、部屋に外から鍵をかけて閉じ込める場合など、ある程度継続的に一定の場所から移動できないようにすることを指します。

移動可能である人すべてが本罪の客体になり、幼児であっても動くことが出来れば本罪の対象になります。生まれたばかりの嬰児については、移動の意思を持たないので略取・誘拐罪の対象になります。

 

逮捕監禁罪の刑罰

逮捕・監禁罪の法定刑は「3月以上7年以下の拘禁刑」です。
また、逮捕・監禁をして、人を死傷させた場合には逮捕・監禁致死傷罪に問われます。
逮捕・監禁致傷罪の法定刑は「3月以上15年以下の拘禁刑」、逮捕・監禁致死罪の法定刑は「3年以上の有期拘禁刑」です。

 

逮捕監禁罪が成立するケース

虐待

子どもを部屋に閉じ込めたり、手足を拘束するなどした場合には、逮捕監禁罪に問われる可能性があります。
また、児童虐待の防止等に関する法律違反や、暴行罪・傷害罪に該当する可能性もあります。

私人逮捕

最近では、私人逮捕系Youtuberなどと呼ばれる配信者が行う過激な現行犯逮捕が社会的問題にもなっています。
現行犯逮捕の要件を満たさない私人による逮捕行為が逮捕罪に当たる可能性があります。

警察官等ではない私人は、逮捕をすることができる?
実は、「現行犯人」であれば、何人でも、逮捕状なくして逮捕することができると、法律上規定されています。
では、「現行犯人」とは何でしょうか。刑事訴訟法212条によれば、現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者を現行犯人とするとあります。

具体的には、以下の場合に「現行犯人」とみなされます。
 ・犯人として追呼されているとき
 ・盗んだ物や明らかに犯罪に用いた凶器等を所持しているとき
 ・身体や服に犯罪の顕著な証拠があるとき
 ・呼ばれて逃走しようとするとき

このような要件を満たしていない人を逮捕しても、「現行犯人を逮捕した」とはいえないので、注意が必要です。
また、逮捕・監禁罪だけではなく、真犯人ではない人を犯人であるかのように捕らえた映像を放送・配信する行為が名誉毀損罪に当たる可能性や、相手を捕まえる際に、怪我などをさせてしまった場合には傷害罪に当たる可能性もあります。その他、目撃した犯罪を通報しない代わりに金品を要求した場合は恐喝罪に該当する可能性もあります。

 

逮捕されたら?

(捜査機関によって)逮捕された場合、身体拘束が予想される期間は下記の通りです。
⇒逮捕されると48時間
⇒勾留決定がなされると10日間(勾留延長があれば、さらに10日間)
⇒起訴された場合は保釈が許可されるまで身体拘束が継続

もちろん事件の内容によっては、極めて例外的な場合、数日で釈放となる場合もあり得ますが、最長の場合には捜査段階で最大23日間程度の身体拘束が予想されます。勾留が決定してしまうと、長期に渡る身体拘束を受けることとなり、職場等への影響は避けられません。

逮捕から勾留請求まで

逮捕された警察署で取り調べを受けることになります。逮捕から48時間以内に事件と身柄が検察庁に送致されます。検察官の取り調べで、さらなる身柄拘束の必要があると判断した場合は、裁判官に被疑者を勾留するように請求します。
また、逮捕から勾留が確定するまでの間(最大で72時間)は、弁護士以外の面会は認められない場合がほとんどです。

勾留

勾留とは逮捕に引き続き身柄を拘束する処分のことを言います。
勾留するには、「罪を犯したことを疑うに足る相当な理由があること」に加え、以下の3点のうち、ひとつ以上該当することが必要となります。
・決まった住所がないこと
・証拠を隠滅すると疑うに足る相当の理由があること
・被疑者が逃亡すると疑うに足る相当の理由があること
検察官の勾留請求が裁判所に認められた勾留決定が出された場合には、最大で10日間の身体拘束を受けることになります。さらに、捜査が必要と検察官が判断した場合にはさらに10日間勾留が延長されることがあり、最大で20日間勾留される可能性があります。

検察官による最終処分

検察官はこの勾留期間に取り調べの内容や証拠を審査し、起訴か不起訴かを判断します。
逮捕監禁罪の場合は、示談が成立していない限り起訴の可能性は高いでしょう。
一旦、起訴されれば、無罪判決を勝ち取らない限り、ほぼ確実に刑事罰を受けることになります。
不起訴となれば前科がつくことはありません。もし、被疑者が犯行を認めていたしても、犯行を立証するに足る証拠がない、情状(被疑者の性格・年齢・境遇・行為の動機や目的など)を鑑みて処罰の必要がないなどの理由から検察官が不起訴の判断する場合があります。

 

弁護士ができること

被害者との示談交渉

逮捕・監禁罪の事件で少しでも軽い処分を得るためには、被害者と示談をすることが重要です。被疑者・被告人が身体拘束されている場合、ご本人が示談交渉に動くことは物理的に不可能ですから、弁護士が代理人として示談交渉に動かざるを得ません。この場合の弁護士の必要性は明らかです。
他方、被疑者・被告人が身体拘束されていない場合や身体拘束から途中で解放された場合であっても、加害者と直接のかかわりを持つことを嫌悪する被害者の方が多いため、弁護士が示談交渉に臨むことには大きな意義があります。
そこで、刑事事件の経験が豊富な弁護士に依頼することをおすすめします。

 

事例(私人逮捕系YouTuber)

令和5年9月、東京・葛飾区内にて、男性を不法に拘束した疑いで、私人逮捕系ユーチューバーの男性が逮捕罪により逮捕された事件が、報道されました。
なお、東京地検は、令和6年1月17日付でこの私人逮捕系ユーチューバーの男性を不起訴処分としましたが、不起訴処分とした理由については明らかにされていません。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

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