目次
児童ポルノとは
児童ポルノとは、児童(18歳未満)のわいせつな画像を販売目的で所持したり、インターネット上にデータをアップし、ホームページやブログなどに掲載すること、また児童自身に写真を撮らせたり、送らせることです。
児童ポルノが発覚するケース
普通に暮らしていれば警察に携帯やパソコンの中を調べられる機会などないように思いますが、児童ポルノが捜査機関に発覚する例として以下のようなケースが挙げられます。
1 補導された児童が、警察官に促されてスマートフォンを見せたところ、その児童がSNS上で自身のわいせつ画像を送信していることが露見し、わいせつ画像受信者が特定されてしまった場合
2 別の刑事事件で家宅捜索を受け、押収されたパソコンやスマートフォン内に児童のわいせつ画像が保管されていることが露見した場合
児童ポルノの刑罰
児童ポルノ規制法では特定の個人に児童ポルノを提供すると、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に問われますし、不特定多数に提供すると、5年以下の懲役または500万円以下の罰金に問われます。
児童ポルノの弁護
児童ポルノは、自己の意思に基づく所持ではなかったことや、18歳未満であることを知らなかったということを弁護士を通じて検察官に主張し、認められれば、不起訴処分となることもあり得ます。また、被害児童との示談ができれば不起訴処分を獲得する可能性が拡がります。
不起訴処分が獲得できなくても、弁護士のアドバイスに基づき、生活環境を改善することや、性犯罪再犯防止のクリニックに通院したり、寄付したり、家族の監督等反省と再犯防止の意欲を検察官・裁判官に伝えることで、執行猶予付きの判決が獲得できる可能性もあります。
また、まだ逮捕されていなくても、「後悔している」「夜も眠れない」「逮捕されたらと考えると不安で不安でしかたない」という方は自首をするのもひとつの方法です。自首は自分一人で行っても警察が取り合ってくれない場合もありますので、弁護士と一緒に自首することが確実でしょう。
当事務所では、それぞれの事案に即して、自首、示談交渉、早期の身柄の解放や勤務先への対応など必要な弁護活動を行います。まずは弁護士に相談してください。
児童ポルノに関する実際にあった質問集
質問① Q.別件で逮捕・補導などをされた際に携帯を調べられ、児童ポルノについて事件化されてしまう可能性はあるのでしょうか?
よく未成年の女の子と売春行為などをして、その女の子が補導などされて売春相手の男が逮捕されるということがありますが、警察は補導ではいったいどの程度まで携帯をしらべますか?携帯のメールなどわざわざ復元したりしますか?
もし、しないのならば警察はいったいどの程度の事件だと携帯を復元しますか?
A.警察に統一した基準があるかはわかりませんが、その児童の補導の原因が児童買春等であった場合には、警察が携帯を解析したとしても、珍しい対応であるとの印象はありません。
携帯電話の解析は、その児童の素行や交友関係を把握することにもつながり児童に対する処分の判断材料になりますし、警察において、児童買春を行っている者を一挙に把握することにも繋がります。
質問② Q.刑確定前に余罪が発覚した場合、再逮捕されることはありますか?
以前育成条例違反で逮捕歴があり、その後刑確定前の同罪の余罪が発覚した場合、立件逮捕に至るものでしょうか?ちなみに罰金刑でした。
A.青少年保護育成条例における犯罪については、包括一罪(複数の行為を一つの罪と見る)とされる判例があります。この場合、既に刑が確定していることから、その包括一罪全体について刑事処分が終わっていることになります。
この考え方では、余罪についても処分が終わっていますので、再度逮捕されることはありません。
しかし、包括一罪とされるかどうかは、個々の事案により判断され、また、裁判において他の考え方もないとはいえないので、必ず包括一罪になるとはいえません。
質問③ Q.取調べ中に罪名が変更されることはあるのでしょうか?
先日、警察から青少年健全育成条例で取り調べを受けました。5回ほど取り調べを受け、2ヶ月ほど経ってから再度警察から呼び出しがありました。内容は、青少年健全育成条例ではなく、児童買春児童ポルノ違反に罪名が変わるといった内容でした。
一度は青少年健全育成条例違反で取り調べが終わったにも関わらず、罪名が変わるようなことはよくあることなんですか?
また、青少年健全育成条例違反から児童買春児童ポルノ違反に変わったことで、どのように刑罰に影響しますか?
A.罪名が捜査途中で変わることはあります。
条例違反及び児童ポルノ法違反は、事実が大きく重なり得ますので、罪名が変わってもおかしくはありません。罪責として、児童ポルノ法違反の方が法定刑は重いです。ただ、罪名は事実に対する評価の結果です。問題は具体的事実の内容です。既に調書が作成されているようですが、調書の内容については十分に注意してください。
今後は、検察官から連絡があると思われます。
児童ポルノの解決事例
故意がなかったことを立証して起訴を免れたケース
【事案】児童ポルノの単純所持
大学4年生のAさんは、別の刑事事件で警察署にスマートフォンを押収され、中身のデータを抜かれたところ、後日、スマートフォン内に児童ポルノ動画が数本保管されていたことが発覚してしまいました。
【解決方法】
■Aさんの認識
児童ポルノ画像の保管をした覚えがないAさん。警察官から児童ポルノ画像の保管を指摘され、驚愕しました。
警察より、任意の事情聴取をしたいと言われてしまったAさん。スマートフォンのどのフォルダに、いつ、どのような児童ポルノ画像が保存されていたのか、まったく事情が分からない以上、供述のしようがありません。
そこで私たち弁護人は、Aさんに対し、①質問内容をよく聞くこと、➁警察官から指摘を受けた児童ポルノ画像について、保管は勿論のこと、視聴すらしたことがなければ、その旨をはっきり供述すること、③回答の仕方がわからない質問には、決して答えてはいけないこと。「弁護人と相談して、後日回答します。」、「よく思い出してから後日、回答します。」、「黙秘します。」と答えるようにアドバイスしました。
初回の事情聴取を終えたAさん。警察官の質問から、過去にAさんが合法のアダルト動画を数十本、まとめてダウンロードした際に、どうやら児童ポルノ画像が混ざっていたらしいということがわかりました。
Aさんは、成人女性のアダルト画像が見たくて、データをダウンロードしたのであり、児童ポルノを見る目的は一切ありませんでした。
■2回目の事情聴取
児童ポルノの単純所持が成立するためには、
⑴ 児童ポルノを所持していたこと
⑵ 自己の性的好奇心を満たす目的があったこと
⑶ 自己の意思に基づいて児童ポルノを所持したこと
⑷ 児童ポルノを所持していたことの認識(故意)が認められること
が必要となります。Aさんはあくまで合法のアダルト動画を見る目的しかなく、実際に合法のアダルト動画しか見ていませんでしたので、⑵⑶⑷はいずれも該当しません。
そこで、私たち弁護人は、Aさんにこれらのことを事情聴取で丁寧に説明を重ねることをアドバイスしました。
■不立件
2回目の事情聴取を終えてから1カ月ほど経ったある日、警察署から「Aさんの児童ポルノ単純所持の件は不立件にする。」との連絡がありました。
ここにいう不立件とは、事件を検察庁に送ることなく、警察署限りで事件を終了とするという意味です。
Aさんは2回目の事情聴取を受けた時、既に大学を卒業されて、社会人として仕事をバリバリとこなされていました。児童ポルノの単純所持で罰金や執行猶予がついてしまった場合、ビザの関係で海外出張等ができなくなりかねず、不立件の連絡が入るまでとても不安な思いを抱えていらっしゃいました。
別件の刑事事件は、その刑事事件に応じた弁護人活動により不起訴を獲得できたこともあり、最後にAさんから「これで何の心配もなく、仕事に打ち込めます。ありがとうございました。」とお言葉をいただき、私たち弁護人も胸をなでおろすことができました。
【事案】 児童ポルノの製造
山田さん(仮名、35歳)は、17歳のA子さんと繁華街を歩いていたところ、突然、警察員から声掛けを受け、そのまま任意の事情聴取をされ、携帯電話を任意提出しました。
山田さんは、A子さんが18歳であると思っていましたが、警察官からの話で、実年齢が17歳であると知りました。A子さんの両親が、A子さんが年齢の離れた山田さんと交際していることに気付き、警察に相談していたことも発覚しました。
山田さんは警察官から白い紙を手渡され、A子さんとどのような交際をしていたか、記載するよう求められたので、①18歳だと思っていたこと、②A子さんと性交渉はしたことがない、の2点を記載して、提出しました。
【解決方法】
弁護士は、山田さんから詳しく話を伺いました。
弁護士 山田さんは本当にA子さんが18歳だと思っていたのですか?
山田さん はい。SNSで知り合ったのですが、A子さんは自分のことを18歳と書き込んでいました。また、実際に会ってから、口頭で年齢を確認しましたが、「今、18歳で今年19歳になる。」と言っていました。高校は今年の3月に卒業したとのことで、私と会うときはいつも私服で、制服を着てきたこともないので、18歳であると信じていました。」
弁護士 山田さんは本当に、A子さんと性交渉をしたことはないのですか?
山田さん …。実は3回ほどしました。怖くて、警察には嘘を言ってしまいました。
弁護士 そうでしたか。その他に気になることはありますか?
山田さん 実は、携帯電話を任意提出したのですが、A子さんとの性行為時に撮影した動画が入っています。
弁護士 A子さんと性行為をする際、金品を供与したことはありますか?
山田さん それはありません。
山田さんには、青少年であるA子さんと性交渉をしたことについて、①東京都青少年保護育成条例違反が、また、A子さんとの性交渉を撮影した行為について、②児童ポルノ製造が成立する可能性を説明しました。
山田さん A子さんの同意があるのに、児童ポルノ製造になってしまうんですか!?
弁護士 はい。同意の有無は犯罪の成立に無関係なのです。
そして、恐らく、警察は山田さんの携帯電話内のデータを解析する中で、A子さんとの性交渉の動画を見つけてしまうと思います。
弁護士は、即時に警察官に面談を申入れ、A子さんがSNSで「私は18歳」と上げていた自己紹介画像のスクリーンショットなどを提出し、山田さんがA子さんの実年齢を知らなかったことについて、説明を尽くしました。
また、警察が動画データを見つけることは時間の問題であると考え、警察から指摘を受ける前に、動画撮影の事実を伝えました。
その後、当事務所の弁護士は、A子さんの両親と示談交渉を成立させました。
また、山田さんのご了解の元、山田さんに本件のことを奥さんに打ち明けていただき、奥さんから山田さんの身元引受書をいただき、「今後、夫の行動について、妻として監督する」旨等の誓約をしていただきました。
結果、山田さんは、①東京都青少年保護育成条例違反事件、➁児童ポルノ製造、の両方とも、不起訴処分となりました。