児童ポルノの嫌疑がかかったら?逮捕されちゃうの?

児童ポルノとは

児童ポルノとは、児童が関わる性的な行為等を視覚的に描写した画像のことを言います。児童(18歳未満)のわいせつな画像や動画を販売目的で所持したり、インターネット上にデータをアップし、ホームページやブログなどに掲載すること、また児童自身に写真を撮らせたり、送らせることです。

児童ポルノが発覚するケース

普通に暮らしていれば警察に携帯やパソコンの中を調べられる機会などないように思いますが、児童ポルノが捜査機関に発覚する例として以下のようなケースが挙げられます。
1 補導された児童が、警察官に促されてスマートフォンを見せたところ、その児童がSNS上で自身のわいせつ画像を送信していることが露見し、わいせつ画像受信者が特定されてしまった場合
 別の刑事事件で家宅捜索を受け、押収されたパソコンやスマートフォン内に児童のわいせつ画像が保管されていることが露見した場合

 児童ポルノの刑罰

児童ポルノ規制法では特定の個人に児童ポルノを提供すると、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に問われますし、不特定多数に提供すると、5年以下の懲役または500万円以下の罰金に問われます。

児童ポルノで逮捕されたら

逮捕された場合、検察官による最終処分(起訴・不起訴を決める処分)まで最大23日間、身柄拘束されることがあります。その流れは以下のとおりです。

 

逮捕から身柄送致   最大48時間 
身柄送致から勾留請求 最大24時間 
勾留         10日~20日間
起訴後勾留      期限の定めなし(最長判決が出るまで)

逮捕から勾留請求まで

逮捕された警察署で取り調べを受けることになります。逮捕から48時間以内に事件と身柄が検察庁に送致されます。検察官の取り調べで、さらなる身柄拘束の必要があると判断した場合は、裁判官に被疑者を勾留するように請求します。

また、逮捕から勾留が確定するまでの間(最大で72時間)は、弁護士以外の面会は認められない場合がほとんどです。

勾留

勾留とは逮捕に引き続き身柄を拘束する処分のことを言います。
勾留するには、「罪を犯したことを疑うに足る相当な理由があること」に加え、以下の3点のうち、ひとつ以上該当することが必要となります。
・決まった住所がないこと
・証拠を隠滅すると疑うに足る相当の理由があること
・被疑者が逃亡すると疑うに足る相当の理由があること
検察官の勾留請求が裁判所に認められた勾留決定が出された場合には、最大で10日間の身体拘束を受けることになります。さらに、捜査が必要と検察官が判断した場合にはさらに10日間勾留が延長されることがあり、最大で20日間勾留される可能性があります。

検察官による最終処分

検察官はこの勾留期間に取り調べの内容や証拠を審査し、起訴か不起訴かを判断します。公然わいせつ事件においては、起訴につき、公判請求(正式裁判の請求)か略式請求(裁判所に書類だけ送付しての罰金刑の請求)の2種があります。
略式請求の場合を含め、一旦、起訴されれば、ほぼ確実に刑事罰を受けることになります。
不起訴となれば前科がつくことはありません。もし、被疑者が犯行を認めていたしても、犯行を立証するに足る証拠がない、情状(被疑者の性格・年齢・境遇・行為の動機や目的など)を鑑みて処罰の必要がないなどの理由から検察官が不起訴の判断する場合があります。

児童ポルノの弁護

示談交渉

児童ポルノは、自己の意思に基づく所持ではなかった(例:一括ダウンロードをしたところ、たまたま児童ポルノもダウンロードしてしまった)ことや、18歳未満であることを知らなかった(例:学生証をチェックしたところ、18歳以上だった)ということを、弁護士を通じて検察官に主張し、認められれば、不起訴処分となることもあり得ます。また、被害児童との示談ができれば不起訴処分を獲得する可能性が拡がります。

環境整備

不起訴処分が獲得できなくても、弁護士のアドバイスに基づき、生活環境を改善することや、性犯罪再犯防止のクリニックに通院したり、寄付したり、家族の監督等反省と再犯防止の意欲を検察官・裁判官に伝えることで、執行猶予付きの判決が獲得できる可能性もあります。

自首

また、まだ逮捕されていなくても、「後悔している」「夜も眠れない」「逮捕されたらと考えると不安で不安でしかたない」という方は自首をするのもひとつの方法です。自首は自分一人で行っても警察が取り合ってくれない場合もありますので、弁護士と一緒に自首することが確実でしょう。自首が認めらえた場合、捜査機関で自首調書を作成しますが、そちらに対するアドバイスもさせていただきます。

当事務所では、それぞれの事案に即して、自首、示談交渉、早期の身柄の解放や勤務先への対応など必要な弁護活動を行います。まずは弁護士に相談してください。

児童ポルノに関する実際にあった質問集

質問① Q.別件で逮捕・補導などをされた際に携帯を調べられ、児童ポルノについて事件化されてしまう可能性はあるのでしょうか?

よく未成年の女の子と売春行為などをして、その女の子が補導などされて売春相手の男が逮捕されるということがありますが、警察は補導ではいったいどの程度まで携帯をしらべますか?携帯のメールなどわざわざ復元したりしますか?
もし、しないのならば警察はいったいどの程度の事件であれば携帯を復元しますか?

A.警察に統一した基準があるかはわかりませんが、その児童の補導の原因が児童買春等であった場合には、警察が携帯を解析したとしても、珍しい対応であるとの印象はありません。
最近は、警察の児童ポルノへの対応が厳しいという印象があります。
携帯電話の解析は、その児童の素行や交友関係を把握することにもつながり児童に対する処分の判断材料になりますし、警察において、児童買春を行っている者を一挙に把握することにも繋がります。

質問② Q.刑確定前に余罪が発覚した場合、再逮捕されることはありますか?


以前育成条例違反で逮捕歴があり、その後刑確定前の同罪の余罪が発覚した場合、立件逮捕に至るものでしょうか?ちなみに罰金刑でした。

A.青少年保護育成条例における犯罪については、相手方が同じ場合、包括一罪(複数の行為を一つの罪と見る)とされる裁判例があります。この場合、既に刑が確定していることから、その包括一罪全体について刑事処分が終わっていることになります。
この考え方では、余罪についても処分が終わっていますので、再度逮捕されることはありません。しかし、包括一罪とされるかどうかは、個々の事案により判断されるので留意が必要です。

児童ポルノの解決事例

故意がなかったことを立証して起訴を免れたケース

【事案】児童ポルノの単純所持

大学4年生のAさんは、別の刑事事件で警察署にスマートフォンを押収され、中身のデータを抜かれたところ、後日、スマートフォン内に児童ポルノ動画が数本保管されていたことが発覚してしまいました。

【解決方法】

■Aさんの認識

児童ポルノ画像の保管をした覚えがないAさん。警察官から児童ポルノ画像の保管を指摘され、驚愕しました。
警察より、任意の事情聴取をしたいと言われてしまったAさん。スマートフォンのどのフォルダに、いつ、どのような児童ポルノ画像が保存されていたのか、まったく事情が分からない以上、供述のしようがありません。
そこで私たち弁護人は、Aさんに対し、①質問内容をよく聞くこと、➁警察官から指摘を受けた児童ポルノ画像について、保管は勿論のこと、視聴すらしたことがなければ、その旨をはっきり供述すること、③回答の仕方がわからない質問には、決して答えてはいけないこと。「弁護人と相談して、後日回答します。」、「よく思い出してから後日、回答します。」、「黙秘します。」と答えるようにアドバイスしました。
初回の事情聴取を終えたAさん。警察官の質問から、過去にAさんが合法のアダルト動画を数十本、まとめてダウンロードした際に、どうやら児童ポルノ画像が混ざっていたらしいということがわかりました。
Aさんは、成人女性のアダルト画像が見たくて、データをダウンロードしたのであり、児童ポルノを見る目的は一切ありませんでした。

■2回目の事情聴取
児童ポルノの単純所持が成立するためには、
 ⑴ 児童ポルノを所持していたこと
    ⑵ 自己の性的好奇心を満たす目的があったこと
    ⑶ 自己の意思に基づいて児童ポルノを所持したこと
    ⑷ 児童ポルノを所持していたことの認識(故意)が認められること
が必要となります。Aさんはあくまで合法のアダルト動画を見る目的しかなく、実際に合法のアダルト動画しか見ていませんでしたので、⑵⑶⑷はいずれも該当しません。
そこで、私たち弁護人は、Aさんにこれらのことを事情聴取で丁寧に説明を重ねることをアドバイスしました。

■不立件
2回目の事情聴取を終えてから1カ月ほど経ったある日、警察署から「Aさんの児童ポルノ単純所持の件は不立件にする。」との連絡がありました。
ここにいう不立件とは、事件を検察庁に送ることなく、警察署限りで事件を終了とするという意味です。
Aさんは2回目の事情聴取を受けた時、既に大学を卒業されて、社会人として仕事をバリバリとこなされていました。児童ポルノの単純所持で罰金や執行猶予がついてしまった場合、ビザの関係で海外出張等ができなくなりかねず、不立件の連絡が入るまでとても不安な思いを抱えていらっしゃいました。
別件の刑事事件は、その刑事事件に応じた弁護人活動により不起訴を獲得できたこともあり、最後にAさんから「これで何の心配もなく、仕事に打ち込めます。ありがとうございました。」とお言葉をいただき、私たち弁護人も胸をなでおろすことができました。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

刑事事件について高い専門性とノウハウを有した6名の弁護士が在籍する法律事務所です。

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