少年事件で弁護士に依頼するメリットは?早期解決・将来のためにできること

少年事件とは

少年法では、20歳未満の者を少年と呼称しているため、少年が犯した事件については、少年事件や少年犯罪といわれています。少年に対しては、刑罰よりも保護(少年の健全な育成を目指す処分)を行うことが少年法の目的(少年法1条)であるため、成人の刑事裁判とは違ったプロセスで行われます。

少年事件の流れ

少年が逮捕された場合の流れは以下のようになります。

詳しい少年事件の流れについてはこちら

 ①警察による捜査、検察への身柄送致
②検察の勾留、勾留に代わる観護措置決定(例外的)
③家庭裁判所送致・観護措置の審判
④審判

もちろん事件の内容によっては数日で釈放となる場合もありますが、最長の場合には捜査段階で23日間、家庭裁判所送致から審判までさらに4週間身体拘束を受けることになります。観護措置が決定してしまうと、長期に渡る身体拘束を受けることとなり、お子様の学校や会社への影響は避けられません。
弁護士は、刑事事件の早期の身柄解放や環境整備などさまざまな活動をすることができます。本記事では、少年事件で弁護士に依頼するメリットについて解説します。

特定少年とは

令和5年4月1日、改正少年法の施行~「特定少年」という概念の導入

民法で成人年齢が18歳に引き下げられました。これまで少年法は、20歳未満を「少年」として取り扱ってきましたが、18歳、19歳の少年を「特定少年」とする運用に改正されました。そして、少年法は特定少年に対し、17歳以下の少年とは異なる以下の措置を講じるとしています。
⑴ 逆送の拡大化
通常、少年事件は家庭裁判所に送致され、審判を受けます。
しかし、一定の重大犯罪の場合は、検察官に送致され、成人同様に刑事裁判を受けることになります。このように、「逆送」とは家裁に送致された後、原則的に検察官へ送致される事件をいいます。特定少年の場合、原則的に逆送される事件が拡大します。

【従来の逆送事件】

・死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件で、罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるとき
・故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた16歳以上の少年
【改正により,特定少年に拡大する逆送事件】
・罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるとき(対象事件の制限なし)
・故意の犯罪行為によって被害者を死亡させたとき
・死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁固に当たる罪を犯したとき
このように「短期1年以上の懲役もしくは禁固」に当たる罪も原則逆送事件とされたため、その拡大化は広く、厳罰化されたものといえます。

⑵ 実名報道の解禁
従来の少年法は、少年事件の実名報道を禁止しており、逆送事件であっても少年の顔写真や実名を報道されることはありませんでした。
しかし改正少年法は、特定少年が逆送されて正式起訴(略式起訴は含まない)される場合、実名報道規制を解除するとしました。起訴時ではなく、犯罪時に特定少年であれば、起訴された時点で実名や顔写真が報道される可能性があるため、注意が必要です。

⑶ 保護処分に関する変更
「保護処分」とは、保護観察処分や少年院送致などの少年に対する具体的な処遇のことをいいます。家庭裁判所はこれまで、少年の要保護性を重要なポイントとして考慮の上、処分を決定していました。当該犯罪の悪質性が高い場合であっても、当該少年の家庭環境や性格その他の事情により、要保護性が高い場合は厳罰ではなく、保護観察等の軽い処分にするといったこともありました。
しかし、今回の改正では、特定少年に保護処分を下すにあたっては「犯罪の軽重」を考慮すべきとされました。その結果、犯罪行為の内容が重大であれば、たとえ要保護性がどんなに高くても保護観察処分ではなく、少年院送致という重い処分がなされる可能性が高まったといえます。

⑷ 保護処分の期間の明示
改正少年法は、「特定少年」に対する保護処分の際、保護観察は6か月または2年、少年院送致の場合は3年の範囲で期間を明示するとしました。

⑸ 「虞犯少年」の適用がなくなったこと
「虞犯少年」とは、未だ犯罪をしていないものの、家出や夜遅い帰宅が連日連夜続くなど、保護者の監督に服さない少年や、繁華街を出歩いたり、暴力団関係や半グレ組織等犯罪性の高い人と交流を持つなど、非行の度合が高い少年を指します。

少年の非行の度合が高いと、非行が進んで犯罪に至る可能性が高まることから、少年法は「虞犯少年」に対しても、場合によっては少年審判を受けさせる等の早期保護の取り扱いをしています。
しかし、改正少年法では「特定少年」であれば、「虞犯少年」として保護しないとしています。従来の少年法は「国親思想」の下、少年に対する手厚い保護の一環として虞犯少年の取り扱いをしていましたが、これを特定少年に対しては適用せず、成人と同様の責任を問う方向に改正した点で厳罰化したといえます。

⑹ 刑罰の変更

従来の少年法では、逆送により刑罰が言い渡される場合、「不定期刑」となります。
※不定期刑:具体的な刑期が定まらない刑罰。(例)「懲役○年以上○年以下」

改正少年法は、特定少年には不定期刑は適用せず、成人と同様、明確に刑期が言い渡されます。つまり、特定少年が受刑中に更生するなどして、釈放を早める事情ができたとしても、そのことを以て刑期が短縮されることはありません。
また、従来の少年法では、逆送されて刑罰が言い渡される場合、「短期は10年」・「長期は15年」と上限が設けられていましたが、改正少年法は、特定少年にはかかる上限は適用されないとしました。成人同様、最長30年の懲役刑や禁固刑を言い渡される可能性があります。

国選付添人と私選付添人の違い

少年事件の場合でも、成人事件のように国選と私選の付添人を選ぶことができます。国選付添人と私選付添人とではできる業務自体には変わりがありません。
もっとも、両者には、以下の違いがあります。

① 自ら選任できるか

国選付添人は国選付添人名簿に登録している弁護士からランダムに選任されますが、私選付添人は自らが選任できます。
私選付添人であれば、相性が良さそうな弁護士や、刑事事件や少年事件の経験が豊富な弁護士を選ぶことができます。

② すべての少年審判事件に国選付添人が選任されるわけではない

成人で起訴された場合に弁護人がいない場合は、原則、国が国選弁護人を付することとなります。
少年審判においても、国選付添人が付される範囲が拡大しましたが、少年事件のすべてで付添人が付されるわけではありません。そのため、少年の更生にとってふさわしい処分を家庭裁判所に出してもらうことをお考えなら、事件が家庭裁判所に送られた段階(捜査段階であればなお弁護士の活動範囲が広がります)で、弁護士を付添人として選任することをお勧めします。

少年事件で弁護士に依頼するメリット

お子様が逮捕されたからといって、必ずしも長期の身体拘束が決定したというわけではありません。弁護士は専門的知識や経験をもとに弁護活動を行い、少しでも早く社会生活へ復帰できるよう尽力します。

逮捕直後の接見で今後の見通しを立てることができる

弁護士は逮捕されている少年と、時間等の制限なく接見をすることができます。特に、逮捕直後は弁護士以外の接見は認められていないため、詳しい状況を把握するためには、弁護士に接見を依頼することが必要です。
当事務所では、基本的に弁護士は依頼を受けたその日のうちに接見へ向かい、少年の現在置かれている状況の確認や、取調べへのアドバイスなどを行います。

取調べのアドバイスをすることができる

取調べでは、警察や検察は被疑者に事件に関する供述を求め、被疑者の話した内容を調書にまとめます。この調書は、捜査において重要性の高い証拠となります。
少年は、成人に比べ法的知識が少ない事などから、取調べ時に取調官に迎合しやすい傾向があります。もっとも、一旦、作成した調書の内容を覆すのは、簡単ではありません。そのため、成人の場合と比較して、より一層弁護士と取調べへの対応について慎重に話し合い、適切な対応をしていく必要があります。
また、脅迫や誘導などの手段による不当な取調べが行われた場合には、弁護士が警察や検察、裁判所に抗議をすることもできます。

早期の身柄解放を目指すことができる

早期の身柄解放ができる可能性が高いのは、事件が家庭裁判所に送致され観護措置決定がなされるまでです。この段階では、弁護士は意見書の提出や面談などを行い、検察官や裁判官に勾留の必要性がないことの説明や、身柄解放の交渉を行います。

裁判官、調査官、鑑別技官へ少年に有利な証拠を示すことができる

弁護士は、より良い処分獲得のため、裁判官、調査官、鑑別技官に面談をしたり、少年に有利な事情を示す意見書を提出したりします。
最終処分を決める審判では、家庭裁判所調査官の作成した調査票が重要な判断材料とされます。弁護士は調査官と連絡を取り合い、調査票の内容が少年にとって不利なものにならないよう働きかけます。

被害者との示談交渉ができる

少年が、被害者に対し怪我や損害を与えてしまった事件の場合、相手方と示談が成立すれば、少年が被害者と起こした罪に対して十分に向き合う環境ができているということを示すことができ、最終処分が軽くなる可能性が高まります。
しかし、被害者は少年本人やその家族に会いたがらないときが多く、また少年の身柄が拘束されていれば被害者と会うことが物理的にできませんので、通常は、弁護士が間に入って交渉することになります。弁護士が、被害者の立場にも理解・共感を示しつつ、丁寧な事情説明等により被害者のストレスを軽減し、結果として示談が成立する可能性が高まります。

少年の置かれている環境を整備することができる

①ご家庭とのお話合い
仮に非行事実を認める場合、何が問題であったのか、今後どうすれば、非行を起こさないかをご家族と弁護士が一緒に考えていくこととなります。

②学校への対策
逮捕された学生を退学処分にするかどうかは、学校側の裁量によります。
基本的に警察から学校へ逮捕の連絡が行くことはありませんが、少年事件では少年の置かれている環境について調査が行われるため、調査の連絡が入り逮捕の事実が明らかになる場合もあります。
そのような場合においても、弁護士が事情を話し、できるだけ穏便な対応をお願いする、学校に事件を知られることが無いように捜査機関などに交渉するといった活動も行うことができます。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

刑事事件について高い専門性とノウハウを有した6名の弁護士が在籍する法律事務所です。

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