接見禁止がついたら家族と会えないの?一部解除の方法について弁護士が解説

接見禁止一部解除とは

通常、ご家族や友人は、警察官の立会のもとで定められた時間内に限りご本人と面会することができます。しかし、ご本人が犯罪事実を否定している場合や、組織的犯罪が疑われる場合、ほかに共犯者がいる場合などでは、証拠隠滅が指示されるおそれがあるため、接見禁止とされる傾向があります。
そのような場合に、特定の人物との接見禁止を解き、面会を可能にするためにできることが、接見禁止一部解除という手続きです。

 

接見禁止に対する弁護活動

接見等禁止の決定を行った裁判官に対し、接見禁止一部解除の申立てを行うことができます。一般的に弁護士が申し立てる場合が多いですが、家族、恋人、友人、会社の上司など誰でも申し立てることができます。
もちろん接見等禁止の全部について取り消しを求める準抗告をすることも可能ですが、親族など一部の人に限って取消を求める場合も多いです。

 

接見禁止決定に対する申立て

接見禁止の決定は、「逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」がある場合に限り接見等を禁止できると定めています。被疑者は勾留されているので、「逃亡」という事情は考えにくく、多くは「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」があることを理由に接見を禁止しています。
準抗告や申立ての際は、この「相当な理由」が存在しないことについて、具体的な主張をしていくことが必要です。

 

解決事例

【事例】せめて、妻とだけでも…。妻との間で接見禁止一部解除が認められた事案

山本さん(仮名)は、持続化給付金不正受給にかかわったとして、逮捕されました。ヴィクトワール法律事務所の弁護士は、山本さんの奥さんから依頼を受け、山本さんが逮捕された当日から弁護活動を開始しました。
初回の接見時、ヴィクトワール法律事務所の弁護士は山本さんから、「私は妻と高齢の母の3人で暮らしています。妻は働いているので、私が母の面倒を主に看てきました。母の服用する薬のことや、毎週の通院のことなど、自分の口から妻に説明したいです。弁護士の先生にお話し、妻に伝えてもらうことも考えましたが、妻と直接話した方が話が早いし…。明日、妻と会えますか?」と言われました。
翌日、山本さんは検察庁での弁解録取が控えており、翌々日は裁判所での勾留質問が予定されているため、仮に10日の勾留が決まってしまい、接見等禁止決定がつかなければ、早くて3日後に奥さんとの面会が認められると説明しました。

 

【解決方法】

■ 勾留決定阻止の弁護活動と並行した、接見等禁止決定回避の弁護活動
ヴィクトワール法律事務所の弁護士は初回接見後、すぐさま、翌日、検察官に対して「勾留請求をしないことを求める」意見書の作成に取り掛かりました。山本さんは自身の罪を認めていましたが、山本さんが関与した不正受給は、数十件にも及んだため、意見書を提出しても、検察官が裁判所に対して勾留請求をすることは9割方避けられないという状況でした。
しかし、私たち弁護士は、勾留請求をしないこと、仮に勾留請求をする場合であっても、接見等禁止の請求をしないこと、せめて妻との接見や書類の授受等は認められるよう、配慮して欲しい旨を意見書に記載し、意見書を提出しました。
しかし、予想どおり、検察官は勾留請求をしました。この時点で、検察官が裁判所に対して、接見等禁止決定も求めたのかは明かしてくれなかったので、私たち弁護士は裁判所に対し、「検察官の勾留請求を却下することを求める」意見書を提出しました。事件の性質上、裁判所が10日間の勾留を決定する可能性が高いと想定していましたが、ここでもせめて妻との面会が叶うよう、接見等禁止決定を出さないことを求める旨も、しっかり記載しました。
ところが、裁判所は、10日間の勾留決定を出したに留まらず、妻との面会も認めない、接見等禁止決定を出してしまいました。面会に来た家族・友人を通じて、山本さんが証拠隠滅を図るのではないかと危惧したようです。
これでは、山本さんは、少なくとも10日間、弁護士以外の誰とも面会をすることができません。それだけでなく、弁護士以外の誰とも手紙のやりとりをすることすら許されません。

■ 準抗告の申立て
これを受けて、ヴィクトワール法律事務所の弁護士は、接見等禁止の全面解除を求め、予備的に奥さんとの面会・手紙の授受だけは認めてほしい旨、東京地方裁判所の刑事部に準抗告を申し立てました。
勾留決定阻止のために提出した意見書同様、改めて、山本さんが自身の罪を素直に認めていることや、捜査機関に証拠物件を押収されていること、関係者に対する事情聴取や調書の作成が終わっていると考えられることなどを丁寧に論じ、山本さんが面会に来た人を通じて、偽証を働き掛けたり、証拠を捏造するおそれは皆無であることをアピールしました。

また、山本さんは、奥さんと知り合って3か月でスピード結婚をしていらっしゃいました。山本さんが最後にかかわった持続化給付金不正受給事件の後に、奥さんと知り合い、結婚したことを記載し、奥さんが一連の事件と無関係であることを強調しました。山本さんと奥さんそれぞれから、面会時に事件の話をしないことや、第三者に伝言を頼んだり、第三者からの伝言を伝えることは一切しないことについて、誓約書をいただき、これを準抗告申立書の添付資料としました。

■ 裁判所との電話面談
ヴィクトワール法律事務所の事務所は、準抗告申立書を提出する際、「裁判官との面談もしくは電話面談を希望する」と、裁判所の職員に伝えました。
(裁判所) もしもし。電話面談希望と聞いていますが、準抗告申立書に記載された事項以外に何か、お話されたいことはありますか。
(弁護士) はい。実は、山本さんには高齢の母親がいるのですが、山本さんの事件を受け、倒れてしまいました。奥さんが看病を続けていますが、そのことで至急、山本さんと話し合いをしたいと奥さんは困っています。山本さんと奥さん、それぞれの誓約書にあるとおり、双方、事件については話さず、専ら家族のことや家庭生活に関する会話しかしないことを固く誓約しています。このような事情も考慮して、判断してください。
(裁判所) わかりました。

■ 「妻との接見等を禁止した部分を取り消す。」~妻との接見等一部解除の実現
裁判所との電話面談から3時間後、裁判所より、妻との接見と手紙の授受に関してのみ、解除する旨の連絡がありました。翌日、早速奥さんは山本さんと面会し、1回15分と短いながらも、山本さんのお母さんの転院先について相談をすることができました。
その日の夜、ヴィクトワール法律事務所に弁護士が山本さんと接見したところ、山本さんから、「今日、逮捕から1週間ぶりに妻と会うことができました。母のことを相談できたのも良かったけど、妻の顔を見ることができて、本当に良かったよ。妻のためにも、本当のことをきちんと話して、これから頑張ろうと思います。」と言っていただけました。

 

さいごに

突然逮捕され、勾留され、何日もの間、家族とも友達とも一切会えない・・・。
「電気代の引き落としが3日後に迫っているけど、銀行口座にお金を補充してくれたかな。」「1週間後、会社でプレゼンを控えているから、部下に色々と細かい点を指示したいな。」
等々、いきなり、周囲との連絡が隔絶されることは大変なことです。
また、今後どうなるかわからないという不安を抱えて、拘置所や警察署の留置施設で過ごすことを余儀なくされた中、家族や親友などの顔を見て、会話ができることで、どれほど勇気づけられることでしょうか。
接見等禁止決定がついてしまった場合、面会はもちろんのこと、手紙のやり取りすら認められません。
幼いお子さんが突如逮捕されてしまったお父さん・お母さんに対して、日々の出来事を報告するために書いたお手紙や、遠方に住んでいるご両親が身柄拘束されている息子さん・娘さんを励ますために書いたお手紙も、ご本人の元に届けることができなくなってしまうのです。
接見等禁止決定がついてしまってお困りの方や、接見等禁止決定がつかないための早期の弁護活動をご希望の方など、ヴィクトワール法律事務所までご相談ください。

 

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

刑事事件について高い専門性とノウハウを有した6名の弁護士が在籍する法律事務所です。

毎年500件以上のご相談が寄せられており、高い実績にもとづいた最良のサービスを提供いたします。

豊富な実績を元に刑事事件に関するコラムを掲載しております。

お気軽にお問合せ、ご相談ください。03-5299-5881 お気軽にお問合せ、ご相談ください。03-5299-5881 メールでのご相談はこちら