目次
少年事件の流れ
少年が逮捕された場合の流れは、以下のようになります。
本記事では④審判について紹介します。①逮捕から③観護措置についてはこちら。
①警察による捜査、検察への身柄送致
②検察の勾留、勾留に代わる観護措置決定(例外的)
③家庭裁判所送致・観護措置の審判
④審判
④少年審判
家庭裁判所による審判開始決定があれば、少年審判という手続きによって少年の処分を決定します。観護措置がとられている事件であれば、家庭裁判所送致から通常4週間以内、観護措置がとられていない事件であれば、審判までの期間は、特に定めはありません。
少年審判は、裁判官が主導して話を進めていき(成人の裁判では、弁護人と検察官主導で進んでいくので、対照的です。)、その間、①非行事実の審理、②要保護性の審理がされ、最終的に処分が決定されます。
非行事実に争いがない場合、通常は1回で処分がくだることが多いです。審判期日は、大抵、1時間以内で終了します。
審理の内容
・非行事実の審理
少年が実際に行った事実に争いがないか確認するための審理です。
非行事実に争いがある場合は、成人の刑事事件と同様、証人尋問が行われることがあります。
・要保護性の審理
「要保護性」とは、少年による再非行の危険性があり、少年に対しふさわしい保護処分(「保護処分」については後ほど、ご説明します。)を行うことにより再非行の防止をする必要のことをいいます。
「要保護性」は、ⅰ少年の性格、環境等から判断して、再び非行をする危険性があるか、ⅱ保護処分により矯正教育を施すことで再び非行をする危険性を取り除くことができるか、ⅲ保護処分による保護が少年の健全な育成にとって最もふさわしいかの3要素で判断されることが多いです。
仮に、少年が非行事実を認めていた場合は、本人の反省(特に、具体的に誰にどのような迷惑をかけて、その点についてどのように反省しているか、今後どのようにして償うつもりであるかということを様々な角度から確認されることが多いです。)、本人のための更生の環境が整備されているか、両親の今後の監督の意向はあるか等で判断されます。
要保護性の審理では、裁判官は、ご両親に事件前の監督状況、今後の監督体制等について質問をします。弁護士はご両親と共に回答の綿密な準備をしていきます。
※「特定少年」(犯行時18歳・19歳の少年)には、保護処分に関し、異なる運用をする少年法改正がなされました。
家庭裁判所はこれまで、少年の要保護性を重要なポイントとして考慮の上、処分を決定していました。当該犯罪の悪質性が高い場合であっても、当該少年の家庭環境や性格その他の事情により、要保護性が高い場合は厳罰ではなく、保護観察等の軽い処分にするといったこともありました。
しかし、今回の改正では、特定少年に保護処分を下すにあたっては「犯罪の軽重」を考慮すべきとされました。その結果、犯罪行為の内容が重大であれば、たとえ要保護性がどんなに高くても保護観察処分ではなく、少年院送致という重い処分がなされる可能性が従来より高まったといえます。
少年審判の処分
少年審判の処分については、軽い順から、①不処分(処分をしない)、②保護観察、③少年院送致があります。②、③を合わせて、保護処分といいます。
①「不処分」は、文字通り、今回限り処分をしないという判断です。
少年に前歴や非行歴がなく、事案が軽微で、相手方と示談ができ、かつ本人も反省が十分といった事案では、要保護性は解消され、不処分という判断がされることがあります。
②「保護観察」は、一定期間、保護観察官及び保護司の監督(通常は月1回程度の面談)を受けるという処分です。保護観察官や保護司の指導・監督を受けながら社会内で更生できると判断された場合に、付される処分です。施設に収容されることなく、社会で生活しながら、保護観察官や保護司と月に数回の面会を行い、生活や交友関係などについて指導を受けていきます。
③「少年院送致」は、再非行のおそれが強く、社会内での更生が難しいと判断された場合に付される処分です。少年院では、再び非行に走ることのないように、少年に反省を深めさせるとともに、社会に復帰した後規律ある生活を送ることができるように、生活習慣、教科教育、職業指導をするなど、矯正指導を行います。
少年院の収容期間は、審判時に処遇期間に勧告がない場合、平均的には約1年と言われております。勧告がある場合の目途としては、以下のとおりです。
ⅰ 特修短期処遇:4ヶ月以内で仮退院を目指す処遇
ⅱ 一般短期処遇:6ヶ月以内程度での仮退院を処遇
ⅲ 長期処遇:原則2年以内の処遇
当然、付添人としては、少しでも軽い処分を目指すこととなります。そのために、裁判官や調査官に面談をして、少年の良いところを知ってもらったり、更生のための環境が整備できていることを知らせたりします。
なお、少年審判では、「試験観察」といって、一時的に最終処分をくださず、少年に職務経験やボランティア等を経験してもらい、その様子を見て、最終判断をするという中間的な処分がなされることもあります。
解決事例
~逮捕直後のご依頼により、早期の身柄解放及び不処分を得た事例
=結果として大学を退学はおろか休学せずに復帰できた事例~
【事案】
依頼者の大学1年生(未成年)Aさんを含む複数名グループがサークルの新人歓迎コンパで飲酒しすぎ、店退出後に、外で出会った3名のグループと喧嘩になり、一方的に相手方複数名に重症(歯が複数本折れる、顔面挫傷等)を負わせてしまったという事案です。
【解決方法】
◇身柄の釈放について
逮捕直後にAさんのお父様からご依頼いただいたことから、極めてスムーズに動くことができました。
お父様が立場ある方であったので、詳細な記載をした嘆願書兼身柄引受書をいただきました。また、Aさんの通っている大学のシラバスを調べると、必修の授業を2回以上欠席すると、大学2年次以降希望する学科に進めなくなる可能性が高いことが判明いたしましたので、弁護人は、その点についての資料を丁寧に作成し、勾留をするしないを判断する裁判官に対し意見書や本人の反省文とともに提出し、面談しました。そこにおいては、今後の監督態勢は十分であること、長期の勾留が如何にAさんの今後の生育にあたり悪影響を与えるか(希望の学科に進めなければ、その大学に入学した意味も半減してしまうことなど)につき熱心に説明をいたしました。
その結果、裁判官からは勾留請求却下(勾留しない)という判断をいただき、Aさんは逮捕から2日で釈放され、無事に学業に復帰することができました。弁護人が釈放されるAさんを警察で出迎えたときに涙を浮かべながら、「ありがとうございました。」と感謝の言葉をいただいたことは、弁護人冥利に尽きました。
◇処分について
Aさんの身柄が釈放されても、当然ながら、事件自体は続きます。
その後、一緒に暴力を振るってしまった学生と共同で、被害者の方々3名と示談を成立させました。相手方も弁護士を付けましたので、示談交渉は若干難航いたしましたが、丁寧にAさんの立場(当日の経緯、その後の反省の状況等)を説明した結果、被害者の方々3名全員との間で示談が成立いたしました。
事件が家庭裁判所に移っても、当初提出したものよりもさらに内省を深めた少年の反省文等を家庭裁判所に提出をし、付添人(事件が家庭裁判所に移ると「弁護人」は「付添人」として活動します。)が調査官や裁判官とも面談し、少年本人の反省ぶり、家庭の監督状況や示談状況をお伝えしました。
その結果、家庭裁判所の裁判においては、不処分(今回の事件については処分しない)という望外の結果を得ることができました。本件は少年、少年のご両親、弁護人・付添人が密な連携をとり固い信頼関係に結ばれていたからこそ得られた結果だと思い、大変、嬉しく思います。