民事介入暴力について

(1)民事介入暴力とは

民事介入暴力とは、民事事件において、暴力団がその当事者もしくは関係者として介入し、相手方(被害者)に対して暴力や集団の威力を背景にして、暴行や脅迫を加えたり、加えるとの暗示をしたりすることによって、事件を有利に解決しようとする行為のことをいいます。

民事介入暴力事件は、「民暴」と呼称されることもあるほどに、その社会的影響が問題となっています。

警察庁は民事介入暴力を「暴力団又はその周辺にある者が、企業の倒産整理、交通事故の示談、債権取立、地上げ等民事取引を仮装しつつ、一般市民の日常生活や経済取引に介入し、暴力団の威力を利用して、不当な利益を得るものをいう」と定義しています。

私達が所属する第一東京弁護士会は、民事介入暴力への対策として「民事介入暴力被害者救済センター」を設立し、民事介入暴力対策委員会に所属する弁護士が中心になって2名以上で共同して事件を受任し活動してきました。
平成4年3月1日には、暴力団による不当な行為の防止を目的として「暴力団対策法」(正式名称は「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」)が施行されています。

(2)民事介入暴力の特徴

民事介入暴力を行使する者は、日常的な金銭の支払いや不動産取引、隣地紛争、ふとした気の緩みで生じた交通事故など、市民の日常生活や一般的な経済取引に介入し、不当な要求や違法行為によって、不当な利益を得ようとしてきます。

右翼団体や右翼運動を装い、或いは、暴力団の威力を背景に、市民や企業等から不当な利益を得ようとすることもあります。

被害者によっては、民事介入暴力を受けた際、自分の生活に隙があったことを後ろめたく思い、隙を見せた自分が悪かったのではないか等と悩んでしまい、なかなか周囲に相談できない方もおられます。
しかし、その場その場で一人で対処していると、かえって被害が広がってしまうことも珍しくありません。
一人で悩まずにまずは弁護士などの専門家に相談してください

民事介入暴力に関する対策

(1)民事介入暴力に関する対策

民事介入暴力事件は、市民の日常生活や企業の経済取引に介入、関与してくる事件であり、本来は民事事件です。民事事件ですから、内容証明郵便で相手方の介入や関与を拒絶する意志を明確にする、裁判所を介した仮処分を申し立て、不当な取立の禁止や面談の禁止の仮処分を求める、債務不存在確認の訴え等の民事裁判を起こして支払い義務のないことを明らかにするという方法等があります。
しかし、介入や関与の態様が悪質である場合や、上記のような方法では相手方が不当な介入を止めない場合は、刑事事件として対応していく必要があります。刑事事件として対応していく場合、警察の協力を得ることが不可欠です。
警察には、刑事事件とは断定できない場合でも、生活安全課等へ相談を持ちかけることができます。相手方の態様が悪質である場合や、組織的な犯罪組織である場合には、暴力団対策課等により、専門的に対応しなければならない場合もあります。場合によっては、警察に対して犯罪被害を受けたことを申告し、犯罪加害者の処罰を求める刑事告訴を行い、より積極的に警察へ訴えていく方法もあります。
民事介入暴力事件の場合、一人で悩み、あるいは企業単独で対応するだけでは、相手方の悪質さや巧妙さにより、事件がより複雑になること場合もあり、解決までかえって時間がかかってしまうこともあります。一時的にまとまった時間を作って相談しなければなりませんが、弁護士などの外部の専門家に早期に相談し、適切な法的処置をとることが、事件解決への近道となります。
企業や個人事業主においては、普段から民事介入暴力行為を行うような組織・勢力に隙を見せないように組織や環境を整え、仮に民事介入暴力事件に巻き込まれてしまったとして、直ちに適切な対応をとれる体制を整えておくことが、重要な被害防止策となります。
民事介入暴力でお悩みの方は、弁護士までご相談下さい。
当事務所では、上記民事介入暴力委員会の委員として何件かの民事介入暴力事件を共同で受任したほか、単独でも民事介入暴力事件を受任して解決し、依頼者の方々からも喜ばれました。
当事務所は、企業のコーポレートガバナンス、コンプライアンス体制の整備やCSRの取り組みのため、さらには不祥事発生を未然に防止するため、何がお役に立てるか、弁護士としてどう対応すべきかなどについて研鑽を重ねております。

民事介入暴力の事案例

(1)民事介入暴力の事案例

1. 交通事故での法外な請求

事故の相手方はごく普通の若い女性で、「たいした事故ではないので、話し合いで済ませましょう」と言われた。相手の女性の対応が丁寧で信用できると思ったため、相手の提案を受け、警察には事故の届出しなかった。ところが、後日、話し合いの場に行くと、相手の女性はきておらず、暴力団員と名乗る男がおり、「怪我の治療費と車の修理代で300万円かかる。出してくれますよね」などと要求された事案。
・ 解決策として
①   交通事故を起こした場合、必ず届出を行う。警察への届出をしていない場合、道路交通法により、交通事故等の報告義務違反としての処罰を受けることがあります。
②   自動車が損傷した場合や怪我をした場合は、損傷や怪我の状態を写真撮影し、記録に残す。
③   相手方の要求を不当だと思えば、即断せず、時間を置いて対応を検討する。即断しなければならない義務はありません。

2. 商品の欠陥に対する因縁

食堂で蕎麦を食べたお客様から「この間注文して食べた蕎麦の中に虫が入っていて、腹痛で仕事を休んだ。1日2万円として、休んでいた間の休業保障を出せ」と因縁を付けられた事案。
・ 解決策として
① 過失と損害の関係が明らかでなかったり、製品の性質や機能からしてありえないトラブルだと考えられたりする場合、はっきりと断ることが重要。
②   商売での信用や外聞などが気になっても、必ず警察に届出をする。
③   応対を接客担当者や部下に任せず、店や会社全体で一丸となって検討し、対応をする。

3. みかじめ料の請求

「みかじめ料」とは、「縄張り内で営業している」というだけで払うお金のことであり、特に飲食店を対象としたものが多い。「自分達の縄張りで営業している」というだけの理由で、不当な金額を請求された事案。
なお,「みかじめ料」は直接的な金銭だけでなく、おしぼり、ミネラルウォーター、絵画、花瓶、植木などの法外なリース料として要求されているケースも数多くあるようです。
※ 暴力団対策法では「縄張(正当な権原がないにもかかわらず自己の権益の対象範囲として設定していると認められる区域をいう。次号及び第十二条の二第三号において同じ。)内で営業を営む者に対し、名目のいかんを問わず、その営業を営むことを容認する対償として金品等の供与を要求すること」(同法9条4項)と記載し、法によってみかじめ料を要求することを禁止しています。
・ 解決策として
①   不当な金額を請求された場合、すぐに警察に相談をする。長い間払い続けていても「断ることができない」と諦めない。
②   暴力団対策法に基づく公安委員会(警察署長)の「中止命令」により、暴力団と縁を切る。

4. 紳士録詐欺商法

「紳士録に登録しているので、掲載料を出してほしい」や「登録を外すのに数十万かかる」といった紳士録掲載名目詐欺の事案。一度支払うことで、他の団体と称して再度金額を要求され、数千万を取られるケースもある。
・ 解決策として
①   警察や弁護士に相談し、法的処置を取る。
②   相手方の要件を明確に聞き、所在地、電話番号、氏名、連絡先を聞く。
③   契約に基づかない不当な要求に対しては、内容証明郵便で拒絶の意志を明確に伝える。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

刑事事件について高い専門性とノウハウを有した6名の弁護士が在籍する法律事務所です。

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