強制わいせつ罪で逮捕されると実刑になる?解決事例を弁護士が解説

強制わいせつ罪とは

暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした者は6月以上10月以上以下の懲役に処する。13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。(刑法第176条)
と定められています。
つまり,①13歳以上の男女に対して暴行・脅迫を用いてわいせつな行為をした場合,②13歳未満の男女に対してわいせつな行為をした場合に、強制わいせつ罪が成立すると定められています。相手が13歳以上の場合は暴行・脅迫を手段としなくても処罰されることになります。

強制わいせつ罪が成立するための暴行又は脅迫とは、相手の抵抗を著しく困難にさせる程度のものとされています。
強制わいせつ罪におけるわいせつな行為とは、性的羞恥心を害する行為のことを指します。例えば、暴行・脅迫によって下着の中に手を入れる、裸の写真を撮る、キスをするといった行為が該当します

強制わいせつ罪で逮捕されると

逮捕されると警察署で身体拘束を受けることになります。身体拘束が予想される期間は下記の通りです。

⇒逮捕されると48時間以内に送検される
⇒検察官は、24時間以内に勾留請求をするかどうか判断する
⇒裁判官の勾留決定がなされると10日間(勾留延長があれば、さらに10日間)
⇒起訴された場合は保釈が許可されるまで身体拘束が継続

もちろん事件の内容によっては数日で釈放となる場合もありますが、最長の場合には捜査段階で最大23日間の身体拘束が予想されます。勾留が決定してしまうと、長期に渡る身体拘束を受けることとなり、職場等への影響は避けられません。

強制わいせつ罪は実刑になる?

実刑になるか執行猶予になるかは、「わいせつ行為の態様がどのようなものであったか」「被害者の年齢・属性」が大きく関係します。
強制わいせつ罪の保護法益は、個人の性的自由です。したがって、わいせつ行為がどの程度被害者の性的自由を侵害するものであったのかが量刑に大きく影響します。例えば、服を着ている被害者の胸や臀部を触ったという事案であれば、相対的に性的自由の侵害度は低いと考えられますが、被害者の陰部を直接触ったり、口唇に何度もキスをしたりした場合には、性的自由の侵害度が高いものとして、実刑が選択される可能性が高くなります。
また、被害者が、性的事柄への判断能力が未熟である若年者であったり、子どもや親戚、生徒など上下関係に乗じて支配できるような関係性であったりすると、犯情が悪質であると判断され、実刑が選択されやすい傾向にあります。

強制わいせつ罪の弁護活動

強制わいせつ罪は、逮捕・勾留されやすい犯罪類型です。犯情によっては、実名報道がなされる可能性もあります。逮捕や実名報道が、被疑者・被告人の社会生活に与える影響は極めて大きいものです。ですので、なるべく早期に弁護士が介入し、速やかに弁護活動を行うことが重要です。
当事務所では、①まずは身柄拘束や実名報道を回避するための活動を行います。②身柄拘束をされた場合には早期に身柄が解放されるよう弁護活動を行います。それと並行して、公判請求を回避するべく、被害者との示談交渉も行います。
③公判請求された場合であっても、実刑判決を回避すべく、様々な弁護活動を行います。

強制わいせつ罪は、被害者の性的自由を保護法益とするものであり、被害者の意思が尊重されます。ですので、被害者との間で示談が成立すれば、身柄拘束の回避や不起訴といった結果を得られる可能性が高くなります。しかし、強制わいせつ罪は、とりわけ被害者の被害感情が強い犯罪類型であり、示談を断られてしまうことが非常に多いです。そこで、被害者の気持ちに配慮しつつ、粘り強く示談交渉を行うことが重要です。
そして、示談交渉と並行して、再犯防止策を講じ、その結果を適切に裁判所等に伝えることも重要です。

解決事例

Aさんは、ボランティアサークルの活動を通して出会った13歳未満であるVさんに好意を抱いていました。VさんもAさんのことを慕っているようで、しきりにAさんの家に遊びに行きたいと言うようになりました。そこでAさんは、とある休日に、Vさんを自宅に招くことにしました。Aさんは、自宅でVさんと遊んでいるうちに、Vさんの性器を舐めたいという気持ちになってしまい、Vさんの下着を脱がせ、その場でVさんの性器を舐めてしまいました。

Vさんは、すぐにこの事をご両親に相談しました。Vさんのご両親も急いで警察に連絡したため、本件は刑事事件として捜査されることになりました。
Aさんの弁護人となった当事務所のB弁護士は、早速警察署に赴き、捜査を担当する警察官と面談をして、在宅事件として捜査をしてくれるよう申し入れを行いました。しかし、その面談で、警察官から、「Vさんは、Aさんに自分の性器を舐められたとは言っていません。詳しくは言えませんが、この件は、強制わいせつではなく強制性交等罪被疑事件として捜査が進んでいます。」と聞かされたのです。

強制性交等罪と強制わいせつ罪では、法定刑に大きな違いがあります。Aさんの話では、性交等に当たる行為は一切行っていないのであり、強制性交等罪で処罰を受けることは何としても避けなければなりません。B弁護士が弁護方針を練り直そうとした矢先、なんとAさんは、逮捕されてしまいました。すぐに接見に赴いたB弁護士は、Aさんと話合いをし、①AさんはVさんの性器を舐めてしまったけれど、性交等は一切行っていないと話すこと、②公判請求された場合に備え、供述調書は一切署名しないという方針で取調べに臨むことにしました。

B弁護士は、すぐに示談交渉にも着手しました。本件は、Vさんが未成年者であったため、主にVさんのご両親と示談交渉をすることになりますが、Vさんはもちろん、Vさんのご両親もお怒りが強く、全く示談には応じてもらえませんでした。
B弁護士は時間をかけて、Vさんやそのご両親に対し、Aさんの謝罪の気持ちを伝えていくことが必要だと思い、定期的にメールや電話をして、まずは話合いの機会をもらえないかとお願いしてみることにしました。それと同時に、捜査段階で示談が成立しない場合には公判請求されてしまう可能性が高いと考え、保釈請求の準備も進めておきました。

初回の取調べから適切に対応できたこともあり、Aさんは、強制性交等罪ではなく強制わいせつ罪で起訴されることになりました。
B弁護士は速やかに保釈請求を行い、Aさんは起訴後まもなく保釈されました。
保釈されたAさんは、自らの行為を心から反省し、幼いVさんを傷つけてしまったことを悔いていました。Aさんは、二度とこのようなことを起こさないために自分のことを見つめ直したいと考え、すぐに複数の専門医療機関へ通院を開始しました。

本件は、AさんがVさんの兄姉的立場を利用して、性器を直接舐めるという悪質性の強い態様であること、Vさんが若年者であること等から実刑になることも考えられました。
そこで、B弁護士は、自らVさんの両親に手紙を書くなどして、引き続き示談交渉に取り組みました。しかし、やはりVさんと両親の怒りは強く、示談には至りませんでした。B弁護士は、こうした示談交渉の経過をまとめ、報告書のかたちで裁判所に提出しました。
B弁護士は示談交渉と同時に、Aさんの通っている医療機関の心理士と連携し、Aさんの通院治療の結果をまとめた書面なども準備し、Aさんの再犯可能性が低減していることを示す資料として裁判所に提出しました。
また、Aさん本人はもちろん、Aさんの情状証人として出廷してくれることになったAさんの父・Cさんとも何度も裁判のリハーサルをして、裁判当日に備えました。

綿密な準備をして公判に臨んだ結果、Aさんは、無事に執行猶予判決を得ることができました。現在Aさんは、職場復帰を果たして仕事に励む傍ら、欠かさず通院治療を続けています。

 

Aさんの場合、早い段階で弁護士に弁護活動を依頼したことで、初回の取調べから適切な対応ができました。刑事裁判の準備にも時間をかけることができました。
その結果、実刑判決も考えられる事案で、執行猶予判決を得ることができました。
当事務所では、強制わいせつ罪をはじめ、各種性犯罪の弁護を扱った経験のある弁護士が複数在籍しています。
ご不安なことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

刑事事件について高い専門性とノウハウを有した6名の弁護士が在籍する法律事務所です。

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