4.覚せい剤等の所持、使用の捜査と裁判

4.覚せい剤等の所持、使用の捜査と裁判

(1)
一般の人たちが覚せい剤に関与し、これが発覚し逮捕されたりする場合は、
通常、覚せい剤の所持か使用の事犯、又はその両方です。
警察がある情報を得て捜索差押令状によって被疑者の自宅や所持品などを捜索し、
覚せい剤らしき結晶が発見された場合でも直ちに逮捕されることは原則としてありません。
それは、透明または透明に近い結晶が発見されたからといって覚せい剤だと判断できないからです。
ときには本当の覚せい剤とは全く無関係の結晶であったり、または覚せい剤の増量剤
(覚せい剤ではありません。密売人が高く売りつけるために混入するハイポ(結晶チオ硫酸ソーダ)など)が
検出されたりする場合があるからです。
そのため、覚せい剤捜査を担当する捜査官(麻薬取締官を含む)は、
覚せい剤鑑定用の試薬を携帯している場合が多く、試薬によって覚せい剤だと判明すれば所持の
現行犯人として逮捕します。
ときには、試薬を用意していない捜査官もおり、一旦警察署に任意同行してもらって、
そこで試薬によって検査する場合もあります。
 
 
(2)
ただ、この覚せい剤試薬はあくまでも簡易な鑑定のためのものであって、
正式なものではなく起訴時点までにガスクロマトグラフィー(Gas Chromatography、GC)などによって
正確な鑑定がなされなければなりません。
その鑑定は結晶だけではなく、尿中に含まれる覚せい剤も尿を濾過することによって鑑定をすることが
できます。
さらに、酒井法子のときに利用された毛髪鑑定は、尿中の覚せい剤より検出がなかなか困難で時間も
かかりますが、より精度の高い設備や器具等を使用して毛髪から覚せい剤を検出することができます。
なお、通常又は初心者の覚せい剤使用量は1回あたり0.02グラムとも言われておりますが、
常習者になると1回あたり0.1グラムくらい使用しているようです。
通常の使用量よりずっと下の0.0031グラムの所持については微量であるため、
また覚せい剤として十分な効能が得られないとして無罪とされた事例もあります。
(東京高等裁判所判決・昭和48年6月6日、「一般に0.0031グラムの塩酸フエニルメチルアミノプロパンを
含有する粉末は覚せい剤常用者にとつては覚せい剤としての効用が全くなく、非常用者にとつてもその粉末が
純粋なものでない限りその効用がないこと、ところが原判示粉末は純粋でなく、
カフエインや塩酸エフエドリンが混入されていて、その含有する塩酸フエニルメチルアミノプロパンは極めて
微量であつたことが認められる。したがつて、原判示粉末は覚せい剤常用者たると非常用者たるとを間わず、
何人に対しても覚せい剤としての効用を有しないものということができる。」)
覚せい剤の使用は通常、覚せい剤の結晶適量を水に溶かし、それを腕などに注射している場合が
多く見受けられます。
しかし、覚せい剤使用を同じところに続けて注射すると、そこに注射痕ができて赤く膨れ上がったり、
かさぶたができるので、捜査官であればすぐに気付きます。
このようなことを嫌って、酒井法子の件で報道されたように覚せい剤をアルミ箔にのせて下からライターであぶり、
気化させてストローで吸引するというような方法が用いられています。
覚せい剤を使用したり、また使用のために所持したりしていた場合、仮に初犯であっても起訴猶予にされる
例はほとんどありません。
単なる1回の使用や0.02グラム程度の所持であってもほとんど全員が起訴されています。
 
 
(3)
かつては覚せい剤取締法に罰金刑が設けられていて、初犯で軽微な事件の場合には罰金刑が
適用された場合もありましたが、覚せい剤が蔓延している状況などにかんがみ罰金刑は廃止されました。
現在、覚せい剤を使用し又は所持し、さらには譲り渡したり譲り受けた者については10年以下の懲役に
処せられることになります。
初犯であれば単純な覚せい剤の所持や使用程度ですと、判決は懲役1年6月、3年間執行猶予という例が多いようですが、使用の動機や使用の方法、覚せい剤の入手または譲渡先などに
よってこれ以上の刑が科せられたり、またこれ以下の刑に処せられる場合もあるはずです。
もちろん、同種の覚せい剤事件の前科がある場合、その前科が数年前の事件で執行猶予期間が
終了していても、ほとんどの場合は実刑に処せられます。
つまり、仏の顔は一度だけなのです。
なお、大麻事件の場合は、覚せい剤に比較して大麻の害悪性が低いことから、大麻のみの少量
(2グラムくらいが基準か?)の所持(使用に罰則はありません。)で初犯の場合、
懲役6月3年間執行猶予程度の判決が多く見受けられます。
しかし、2回目は厳しく、約13年前に同種事件で執行猶予3年の判決を受けた被告人が
今度は実刑に処せられている事案もあります。
また、麻薬事件の場合、その害悪性に開きがあり、MDMAやコカインの場合は覚せい剤事件と
ほぼ同じような判決が下されています。
しかし、ヘロインの場合は、覚せい剤以上の大きな害悪性と悪影響に注目したのだと思いますが、
覚せい剤事件に近い少量・初犯でも懲役3年4年間執行猶予と厳しく、2回目は覚せい剤事件以上に
厳しく再度の執行猶予はないと思われます。
 
 
 

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執筆者

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