教師が逮捕されたら懲戒免職?公務員の刑事事件に詳しい弁護士が解説

教師が逮捕された場合の弁護活動

逮捕されてしまったからといって当然に免職となるわけではありません。しかし、刑事処分で禁錮以上の刑(執行猶予の場合を含む)が確定すると、教師として働いている方は免職を失うといった大きな不利益を被ることがあります。
刑事処分の結果のよっては、職を失う可能性のある方の弁護活動では、早期の段階から少しでも軽い処分を目指す必要があります。逮捕直後から弁護士に依頼することで、弁護活動の選択肢が広がります。

なぜ免職になってしまうのか?

①欠格事由にあたる

学校教育法では「禁錮以上の刑に処された者は教員になることができない」と定めています。教員職員免許法では「禁錮以上の刑に処された者には教員免許を授与しない」と定めています。
つまり、禁錮以上の刑が確定すると、公立校であっても私立校であっても免職となり、教員免許も失うということになります。

②懲戒処分で免職になる

不起訴や罰金刑の場合は、教員免許の欠格事由には該当しませんが、教育委員会の判断による懲戒処分を受ける可能性があります。
公立学校の教員が罪を犯した場合、都道府県の教育委員会が懲戒処分を審査することになります。その審査で懲戒免職の処分を受けた場合には、職を失うことになります。懲戒処分については教育委員会で基準が定められており、学校教育の信頼を失わせる行為にあたるとされる体罰やわいせつ行為等に関しては特に厳正に処分することが示されています。
私立学校の教員の懲戒処分は、学校法人が個別に定める就業規則の懲戒規程によって判断されます。その結果懲戒免職の処分を受けた場合、公立学校の教員と同様、職を失うことになります。

刑事処分を軽くすること以外で弁護士のできること

懲戒処分の審査でも継続したサポートができる

罰金刑や不起訴処分となった場合でも、それぞれの資格の審査機関において懲戒処分が審議される場合があります。懲戒処分の審査においても弁護士が付添人などとして選任されることが認められている場合があります。適切な主張ができるよう事案をよく理解している弁護士が継続してサポートすることが効果的です。
刑事裁判での判決の内容が懲戒処分の判断に影響を与えます。刑事裁判で少しでも軽い判決を取ることができれば、懲戒処分も軽くなる可能性が高まりますので、刑事事件の段階から弁護士に依頼をすることが重要です。
処分に不服がある場合、異議の申立や、裁判所に取消訴訟を提起するなどの方法があります。そのような場合にも、弁護士がサポートすることが可能です。

実名報道のリスク回避ができる可能性がある

実名報道について明確な基準があるわけではありませんが、教師など社会的な関心の高い職業についている者が起こした事件については、実名で報道がされることが多くなります。弁護士は要望書などを通して警察・検察、報道機関などに対し、実名報道をしないよう求める働きかけをすることができます。
また、多くの場合で事件が報道されるのは逮捕の段階であるため、その後不起訴となったとしてもインターネット上に逮捕の事実が残ってしまうことが考えられます。そのような場合でもインターネット上に残っている記事に対し、削除請求をすることができます。

解決事例

【事案】

地方公務員のAさん(公立学校の教師)が自動車の運転中、歩行者優先道路の一時停止の標識がある場所で徐行しており、一時停止せず、道路に入ったところ、自転車に乗った女性と衝突してしまいました。この事故で、女性は脳挫傷、複雑骨折を負い、最初の診断書では全治3ヶ月、最終的には全治約5ヶ月の重症と診断されました。
この件に関し、検察庁は公判請求を行いました。Jさんはこのまま行けば、懲役、禁錮刑になってしまう可能性があります。Jさんは公判請求された段階で当事務所へご相談されました。

【解決方法】

当初、警察からは罰金で済むという見通しを伝えられておりJさん本人も安心をしていました。しかし、急遽、都道府県警察本庁が取り扱う事件になり、当初罰金で済むと伝えられていたものが禁錮刑になる見通しとなりました(本庁は比較的重大事件を取り扱うことが多いです)。その理由としては、下記の2点がありました。
・事故被害者の怪我が重かったこと。
・一時停止を無視していたこと
そこで、Jさんから弁護の依頼を受けた当事務所は、以下の点を念頭に置いて弁護を行いました。
①果たして、「禁錮刑になることで、職場復帰ができなくなる」ことに値する事件なのか、という点。
②結果は大きいものの本人の過失自体は小さいという点。
③全治期間が当初よりも延び、事故被害者の診断結果がおかしいという点。
そして、改めて③について調べたところ、事故被害者に医療ミスがあり、病院を変えて2度手術を受けていたことが分かりました。
当事務所は、保険会社の調査員と協力し、レントゲン写真の提出、報告書の作成、また証人として、著名な整形外科の医者に証人になってもらうなどの弁護をいたしました。
こうして、最終的に、Jさんは罰金刑で済み、失職を免れました。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

刑事事件について高い専門性とノウハウを有した6名の弁護士が在籍する法律事務所です。

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