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大麻の流行
近年、特に若者を中心に大麻による検挙者が急増しています。
インターネットなどでは「大麻は他の薬物より安全、害がない」、「大麻は依存にならない、いつでもやめられる」、「海外では大麻が合法化されているから安全」という情報が出回っています。しかし、そのような情報が出回っていることにより、大麻使用への抵抗感が低下しているという現状があります。
大麻使用のきっかけは「誘われて」、「興味本位で」という理由が圧倒的に多いです。平成30年調査によると、初めて大麻を使用したきっかけは、「誘われて」と回答したのは、20歳未満では86.1%、20歳代では77.9%となっています。
初めて使用した年齢が若ければ若いほど、誘われて使用する比率が高いことがわかります。判断能力が成熟していない若者が「ノリ」や「うわべのカッコよさ」で安易に使ってしまう状況があります。
大麻とは?
大麻はアサ科の一年草です。大麻には「THC」(テトラヒドロカンナビノール)という、脳に作用する成分が含まれており、乾燥させた葉などをあぶってその煙を吸うと酩酊感、陶酔感、幻覚作用などがもたらされるとされています。
一定の条件の下で、大麻所持を合法化している国家や州も少なくありません。しかし、日本は大麻取締法によって、大麻の所持・譲渡・譲受・栽培が原則禁止となっています。
大麻に関する罰則は?
大麻取締法によって、大麻の所持・譲渡等は以下のとおり禁じられています。
・ 所持・譲渡・譲受
…5年以下の懲役(営利目的の場合:7年以下の懲役+200万円以下の罰金)
・ 栽培・輸入・輸出
…7年以下の懲役(営利目的の場合:10年以下の懲役+300万円以下の罰金)
大麻使用罪
覚せい剤取締法などと異なり、大麻の「使用」に対する刑罰は定められていません。
しかし、若者などが乱用するのを防ぐため、政府は、大麻の使用を規制する「使用罪」を新設することなどを盛り込んだ法律の改正案が2023年11月14日に参議院で可決となりました。2024年には大麻の使用罪が新設される可能性があります。
もっとも、大麻使用罪が新設されなかったとしても、大麻使用者は、大麻を所持していることが通常ですので、今後も現状どおり、大麻所持で罰せられることとなります。
大麻グミ事件
大阪のある会社が製造したグミを食べた人が体調不良を訴えるケースが東京や大阪で多数報告され、グミには「HHCH」(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)という大麻に近い成分が含まれているということが判明しました。
「HHCH」は大麻に近い成分が含まれており、これまで法律では規制されていませんでしたが、この度「HHCH」は厚生労働省によって「指定薬物」に指定され、令和5年12月2日から「HHCH」の所持・使用・流通が禁止となりました。今後、「HHCH」と類似成分を有する薬物も、規制の対象になる可能性があるとの報道もあります。
大麻所持が発覚するのはどのような場合?
職務質問で見つかるケース
街中で挙動不審な行動をとっている人に対し、警察官が薬物犯罪の可能性を感じて職務質問と所持品検査を行った結果、薬物が出てきた場合に、簡易鑑定にて当該薬物が大麻であると判断されるという経緯で大麻が見つかることが多いです。この場合、現行犯逮捕される可能性が非常に高いといえます。
その他、一見、薬物犯罪とは無関係な犯罪、例えば喧嘩をして、通報された場合等であっても、臨場した警察官に職務質問や所持品検査をされた結果、大麻等の違法薬物が見つかることもあります。
乾燥大麻であれば、簡易鑑定により、その場で大麻と判断されることが多いですが、大麻リキッドの場合は簡易鑑定にて即時に大麻であるか否かの判断がなされないこともあります。その場合、現行犯逮捕はされませんが、時間をかけて鑑定がなされた結果、大麻であると判断された場合は、後日、逮捕状による通常逮捕がなされる可能性が高いといえます。
売人が摘発されて発覚するケース
大麻の売人が逮捕されるなどした場合、売人が有している買主リストから手繰られて、警察官が個々の買主に対して捜査を行うケースもよくあります。
隣人知人からの通報で発覚するケース
2023年、有名私立大学のアメリカンフットボール部在籍の学生が大麻と覚醒剤を所持していたとして逮捕され、一部の学生については既に刑事裁判も進んでいます。同大学の学生による薬物事犯についてはこれからも捜査や裁判が進んでいく事と思われますが、同大学に子供を通学させる保護者・父兄からの情報提供もあったという一部報道もあります。
このように身近な第三者からの通報により、捜査機関が内偵捜査をすることもあります。
大麻取締法違反で逮捕されたら?
大麻で逮捕されるのはどのような場合?
2023年、有名芸能人が自宅で大麻を所持していた容疑で逮捕、勾留をされました。
もっとも、有名人でなくても大麻所持の容疑がかかれば一般的に逮捕されやすいといえます。後ほど詳しくご案内いたしますが、逮捕状は、証拠隠滅のおそれや逃亡のおそれ等が認められるときに裁判所が出す令状です。大麻所持の容疑者は、所持している大麻を廃棄する可能性や、大麻の売人に自身が警察から疑われていることを告げるなどの証拠隠滅をするおそれが高いといえることから、逮捕される可能性が比較的高いといえます。
逮捕された場合の流れ
逮捕された場合、身体拘束が予想される期間は下記の通りです。
⇒逮捕されると48時間
⇒勾留決定がなされると10日間(勾留延長があれば、さらに10日間)
⇒起訴された場合は保釈が許可されるまで身体拘束が継続
もちろん事件の内容によっては、極めて例外的な場合、数日で釈放となる場合もあり得ますが、最長の場合には捜査段階で最大23日間程度の身体拘束が予想されます。勾留が決定してしまうと、長期に渡る身体拘束を受けることとなり、職場等への影響は避けられません。
逮捕から勾留請求まで
逮捕された警察署で取り調べを受けることになります。逮捕から48時間以内に事件と身柄が検察庁に送致されます。検察官の取り調べで、さらなる身柄拘束の必要があると判断した場合は、裁判官に被疑者を勾留するように請求します。
また、逮捕から勾留が確定するまでの間(最大で72時間)は、弁護士以外の面会は認められない場合がほとんどです。
勾留
勾留とは逮捕に引き続き身柄を拘束する処分のことを言います。
勾留するには、「罪を犯したことを疑うに足る相当な理由があること」に加え、以下の3点のうち、ひとつ以上該当することが必要となります。
・決まった住所がないこと
・証拠を隠滅すると疑うに足る相当の理由があること
・被疑者が逃亡すると疑うに足る相当の理由があること
検察官の勾留請求が裁判所に認められた勾留決定が出された場合には、最大で10日間の身体拘束を受けることになります。さらに、捜査が必要と検察官が判断した場合にはさらに10日間勾留が延長されることがあり、最大で20日間勾留される可能性があります。
大麻取締法違反では勾留されるケースがほとんどです。
検察官による最終処分
検察官はこの勾留期間に取り調べの内容や証拠を審査し、起訴か不起訴かを判断します。大麻取締法違反被疑事件においては、罰金刑が設けられていないため、起訴につき、公判請求(正式裁判の請求)の一択となります。
一旦、起訴されれば、無罪判決を勝ち取らない限り、ほぼ確実に刑事罰を受けることになります。
不起訴となれば前科がつくことはありません。もし、被疑者が犯行を認めていたしても、犯行を立証するに足る証拠がない、情状(被疑者の性格・年齢・境遇・行為の動機や目的など)を鑑みて処罰の必要がないなどの理由から検察官が不起訴の判断する場合があります。
最初が肝心。弁護士がお力添えできる場面は?
既に述べたとおり、現在、大麻は誘われて若年層を中心に気軽に使用されている状況があります。ただ大麻はゲートウェイ・ドラックと言われているように、そのほかの危険な薬物や犯罪行為に繋がりかねません。
親族や周囲の人間が大麻所持等で逮捕されたといった事情があった場合には、最初が肝心です。薬物事犯の再犯率は60パーセント以上とも言われています。
まずは早期に弁護士に相談することが重要です。
◆早期釈放へ向けた働きかけ
薬物犯罪で逮捕された場合、勾留・起訴の可能性が高くなります。
逮捕から2.3日は弁護士を通じてでなければ外部と連絡を取ることはできませんし、勾留が決定すると最大で23日間の身体拘束となります。起訴されるとほぼ確実に有罪判決に至るといえ、その結果、前科が付いてしまうことになります。
弁護士は、前科や身体拘束によって生じる社会的不利益を回避するために、早期釈放や不起訴処分、起訴された場合には執行猶予判決を目指し弁護活動をしていきます。
勾留請求や起訴、不起訴の判断は検察官によって下されます。勾留決定は裁判官が行います。弁護士は、段階に応じて検察官や裁判官へ意見書などの書面を提出や、面談をすることによって、釈放すべき事情や不起訴とすべき事情があることを主張します。
◆取調べ対応
罪を認める場合でも否認する場合でも、取調べで捜査官に誘導されるなどして不利な調書を作成されることの無いように、弁護士に取調べへの助言を求めることが大切です。
共同所持では、薬物の存在の認識と処分管理性が争点となります。また、「共犯者の●●は、あなたが大麻であることを知って、所持していたと言っていたよ。」などと、共犯者がさも、すべて供述したかのようなことを言い向けて、取調べを行う警察官も決して皆無とはいえません。一度作成された調書の内容を覆すことは難しいため、早期に弁護士と事実関係についてしっかりと協議し、取調べに臨む必要があります。
◆環境づくりのサポート
罪を認める場合は、家族や医療機関と連携し再犯を防止するための環境づくりを行い、示すことが大切です。
薬物事件は再犯の危険性が高い事件です。過去に薬物事件で逮捕や執行猶予判決を受けた人が、再度薬物に関する犯罪に手を染めてしまった場合には、実刑判決を受ける可能性が高くなります。当事務所は「再犯させない弁護」をモットーとしています。弁護士はご本人とご家族に寄り添い、専門の医療機関等を紹介する、更生計画を一緒に立案するなど再犯を防ぐための根本的な治療についてもサポートを行います。
当事務所では、大麻を含め薬物から離れられるよう、ご本人と向き合い、如何に薬物を使用することが自らの人生を無駄遣いしているか理解していただき、また必要に応じて医療機関など関係機関と連携を採るなど、可能な限り再犯を防止いたします。
解決事例 大麻取締法違反で不起訴処分を獲得したケース
■事案の概要
谷川さん(仮名、25歳・男性)は、友達数人とバーベキューで楽しんでいたところ、警察官から職務質問されると共に所持品検査を受けました。その際、谷川さんが所持していた、いわゆる「パケ」と呼ばれる小分け用の袋より、0.007グラムの乾燥大麻の粉末が出てきてしまいました。
谷川さんはその場で現行犯逮捕されてしまいました。
■弁護士による刑事弁護活動
弁護士は、谷川さんのお母さんから依頼を受け、谷川さんの逮捕後から刑事弁護活動を開始しました。
谷川さんは20日間、勾留されてしまいました。
しかし、谷川さんに今後二度と違法薬物を所持・使用しないよう誓約をしていただくと共に、お母さんが監督する旨の身元引受をしていただき、更には、当時勤務していたアルバイトも解雇されなかったことなどを検察官に報告した結果、本件大麻所持が自己使用目的であったことやごく微量であったという事情も相まって、不起訴処分となりました。
大麻取締法違反の件でお悩みの方は、当事務所までご相談ください。