任意同行・職務質問は断れる?刑事事件に詳しい弁護士が解説

任意同行と職務質問

任意同行とは捜査機関が被疑者の所在する場所に赴き、警察署等に同行することを求めることをいいます。
職務質問とは、警察官が、現実に罪を犯したか、もしくは罪を犯そうとしている者と疑われる者などに対して、停止させて質問をすることです(警察官職務執行法2条1項)。また、その場合に、呼び止められた者に不利益であり、または交通の妨害になるような場合には、近くの警察署などへ同行することを求めることができます(同条2項)。
これらは、警察官の職務のひとつであり、捜査の端緒となったり、事件関係者からの供述が得られたりするきっかけとなるなど、捜査の手法として大きな部分を占めています。

任意同行は「任意」である

任意同行は警察官の職務ではありますが、あくまでも警察官が質問することができたり、同行を求めたりすることができるだけであって、呼び止められた者が応じる義務は定められていません。いわゆる任意であって、強制力はありません。
強制的にできるとの定めがない以上、任意であることは当たり前なのですが、法律は念のために、職務質問及び任意同行について、「刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。」(警察官職務執行法2条3項)と明言しています。
以上のとおり、任意同行に応じるかどうかは、各人の判断次第です。

「任意」であることの意味

応じるか応じないかは自由とは言っても、家にやって来た警察官からの任意同行を拒否するのは簡単ではありません。警察官も、断られたからと言って直ぐに引き下がることもありません。
また、被疑者が任意同行に応じないことを理由に、捜査機関が裁判官の発する逮捕状を取り、強制捜査に切り替わることもあります。
つまり「任意」であることの意味は、対応が完全に自由ということではなく、強制捜査ではない(未だ強制捜査には至っていない)ということなのです。

どうしても同意ができない場合には弁護士の力を

それでも協力したくない場合には、断固として拒否すべきですし、拒否することができます。警察官が、強引に任意同行を求めたりする場合などは、録音や録画をするなどして、対抗することも必要です。
周りを囲まれて動けないようにされることもありますが、完全に動けない状態であれば、実質的に逮捕したことになりますので、警察官としてもそれはできません。録画がされていると、どれだけの間、完全に動けないようにされていたかが記録が具体的に残せます。
また、ときには、弁護士に連絡をして、意見を求めることも手段の一つになります。しかし、弁護士としても直ぐに対応できるとは限りませんから、例えば顧問弁護士がいる場合などは、日頃から対応を話し合っておくと良いでしょう。

任意同行を拒否した場合は?

任意である以上、応じる義務はなく、また、立ち去ることができます。しかし、立ち去った後を警察官が追いかけてくる場合があります。特に、薬物の使用が疑われるような場合には、職務質問や任意同行と並行して強制採尿令状の請求手続きが行われることもあり、そのような場合には、警察官は令状執行のため、本人を見失わないように付いてくることになります。
令状が出された場合には、任意捜査から強制捜査へ移行しますので、強制的に令状が執行されることになります。

任意同行に応じる場合

不利な証拠を作らせない

取調べでは、警察や検察は被疑者に事件に関する供述を求め、被疑者の話した内容を調書にまとめます。この調書は、捜査において重要性の高い証拠となります。
供述調書の原案を作成するのは被疑者ではなく警察や検察であるため、供述調書の内容に本人の認識とは異なる内容が記載されてしまうこともあります。また、厳しい取調べや精神的ストレスから、やっていないことについても罪を認めてしまい、自白調書がつくられてしまうこともあります。
供述調書は署名押印をすると訂正をすることができません。訂正を申し入れても、訂正前の供述調書は証拠として残ってしまいます。そのため、署名押印をする前に内容をしっかりと確認し、内容に相違がないか確認することが大切です。場合によっては、署名押印を拒否したり、弁護士に相談したりするなどの対応を取ることも必要です。

任意同行に関する事例

当事務所では、被疑者が任意同行を求められている局面で弁護士が事件に介入し、被疑者に取調べ等のアドバイスをしている事例が数多くあります。
事件の類型を問わず、被疑者として捜査対象となっている場合、弁護士に相談することが有効なことが多くありますので、当事務所に刑事弁護のご相談をお寄せいただければ幸いです。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

刑事事件について高い専門性とノウハウを有した6名の弁護士が在籍する法律事務所です。

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