薬物犯罪とは

薬物犯罪とは

薬物犯罪の刑罰には、主に、覚せい剤取締法、大麻取締法、麻薬及び向精神薬取締法があります。

覚醒剤取締法

覚醒剤取締法では、覚醒剤の輸入・輸出・製造、所持、使用・譲渡し・譲受けといった行為に対し刑罰が定められています。
個人での所持、使用・譲渡し・譲受けの場合は、10年以下の懲役刑となり、営利目的の場合には、1年以上の有期懲役刑、情状により500万円以下の罰金の併科となります。

大麻取締法

大麻取締法では、大麻の輸出・輸入・栽培、所持、譲渡し・譲受けといった行為に対し刑罰が定められています。
覚醒剤取締法と異なり、大麻の「使用」に対する刑罰は定められていません。大麻の用途は多岐に渡り合法的な使用と違法の使用との区別がつきづらいことなどが、その理由と上げられます。もっとも、2021年現在、若者を中心とする大麻の乱用が深刻化している背景から、大麻の「使用罪」を創設し、罰則を定める法改正が議論されています。
個人での所持、譲渡し・譲受けの場合は、5年以下の懲役となり、営利目的の場合には、7年以下の懲役又は情状により200万円以下の罰金の併科となります。

麻薬及び向精神薬取締法

麻薬及び向精神薬取締法では、麻薬及び向精神薬の輸入・輸出、使用・所持、譲渡し・譲受けといった行為に対し刑罰が定められています。
対象となる麻薬や向精神薬については、法律の別表に示されています。よくニュースなどで耳にするモルヒネ、コカイン、MDMAなどは麻薬に分類されます。物質の麻薬指定は、厚生労働省が、麻薬と同種の乱用のおそれがあること、麻薬と同種の有害作用をもつことなどを調査した上で随時行われており、2021年現在の麻薬の総数は221物質になります。
個人での所持、使用・譲渡し・譲受けの場合は、10年以下の懲役刑となり、営利目的の場合には、1年以上の有期懲役刑、情状により500万円以下の罰金の併科となります。

脱法ドラッグ、危険ドラッグなど

脱法ドラッグや危険ドラッグは、麻薬や覚醒剤の化学構造を少しだけ変えた物質により作られており、体への影響は麻薬や覚醒剤と変わらないとされています。法の網をくぐり抜けるためにバスソルトやお香、ハーブ、芳香剤などに形を偽装して販売されています。覚醒剤や麻薬と比べると安価ということもあり、薬物に手を染めるきっかけになる「ゲートウェイドラッグ」として危険視されています。
このようなドラッグには、個別に法規制が定められていませんが、刑罰が存在しないわけではありません。医薬品・医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)では、中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高く、かつ、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物を指定薬物として定めています。この指定薬物も随時追加されており、これに該当する場合、個人での所持、使用、譲渡し・譲受けの場合は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金又はこれらが併科となり、営利目的の場合には、5年以下の懲役又は情状により500万円以下の罰金の併科となります。

逮捕されるとどうなる?

薬物事件では多くの場合で、逮捕・勾留されることが予想されます。
逮捕された場合、検察官による最終処分(起訴・不起訴を決める処分)まで最大23日間、身柄拘束されることがあります。その流れは以下のとおりです。

逮捕から身柄送致   最大48時間
身柄送致から勾留請求 最大24時間
勾留         10日~20日間
起訴後勾留      期限の定めなし

逮捕から身柄送致

逮捕された被疑者は、警察署で取調を受けることになります。逮捕から48時間以内に事件と身柄が検察庁に送致されます。そこで、検察官が被疑者を取り調べ、留置の必要があると判断した場合は、裁判官に被疑者を勾留するように請求します。
逮捕から勾留が確定するまでの間(最大で72時間)は、弁護士以外の面会は認められていません。もちろん家族でも面会はできません。

勾留

勾留とは被疑者を引き続き拘束する処分のことを言います。勾留の基準は、「罪を犯したことを疑うに足る相当な理由がある」ことに加えに以下のように法律に定められています。
・決まった住所がないこと
・証拠を隠滅すると疑うに足る相当の理由があること
・被疑者が逃亡すると疑うに足る相当の理由があること
検察官の勾留請求が裁判所に認められた場合には、最大で10日間の身体拘束を受けることになります。さらに、捜査が必要と検察官が判断した場合にはさらに10日間勾留が延長されることがあり、最大で20日間勾留される可能性があります。
勾留請求されなかった場合には在宅事件として、自宅で最終処分を待ちます。警察や検察からの呼び出しにさえ応じれば、通学や出勤など通常の生活を送ることができます。

検察官による最終処分

検察官はこの勾留期間に取り調べの内容や証拠を審査し、起訴か不起訴かを判断します。
刑事裁判の有罪率は99.9%といわれているように、起訴になれば、ほぼ確実に刑事罰を受けることとになります。
不起訴となれば前科がつくことはありません。もし、被疑者が犯行を認めていたしても、犯行を立証するに足る証拠がない、情状(被疑者の性格・年齢・境遇・行為の動機や目的など)を鑑みて処罰の必要がないなどの理由から検察官が不起訴の判断する場合があります。

弁護士のできること

自由に接見ができる

薬物犯罪で逮捕されると長期の身柄拘束が予想されます。接見で弁護士は被疑者の置かれている状況を確認し、起訴の可能性はあるか、拘束がどれくらい続くかなどの今後の見通しを立てることができます。
弁護士が警察官の取調べに立ち会うことは認められていません。そのため、弁護士は早期の接見で被疑者から事実関係を確認し、黙秘権の行使などを検討し、取調べへのアドバイスを行います。

身柄解放や不起訴を目指すことができる

勾留決定を受けると、10日ないしは20日間の長期に渡って身柄拘束を受けることになり、社会生活への大きな不利益が予想されます。
弁護士は早期釈放や不起訴処分、起訴された場合には執行猶予判決を目指し弁護活動をしていきます。
勾留決定や起訴、不起訴の判断は検察官によって下されます。弁護士は、検察官へ意見書などの書面を提出や、面談をすることによって勾留却下を求めたり、不起訴(場合によっては略式起訴)とすべき事情があることを主張したりすることができます。

再犯防止の働きかけができる

薬物事件では、家族や医療機関と連携し再犯を防止するための環境つくりを行い、示すことが大切です。薬物事件は約60%と再犯の危険性が高い事件です。過去に薬物事件で逮捕や執行猶予判決を受けた人が、再度薬物に関する犯罪に手を染めてしまった場合には、実刑判決を受ける可能性が高くなります。
根本的解決には、まずご本人の「更生したい」「やり直したい」という確たる思いが重要です。そのうえで、覚せい剤に関わる友人関係を絶ち、自分の生き方を見つめなおすといったことが必要です。
また、ストレスや不安といった心的要因から、人生の目的を見失い、苦しいこと、つらいことの逃げ道として薬物に依存してしまう場合もあります。
弁護士はご本人とご家族に寄り添い、専門の医療機関等を紹介するなど再犯を防ぐための根本的な治療についてもサポートを行います。

まとめ

薬物事件は、初犯でも起訴されてしまう可能性が高い重い犯罪です。
専門的知識と経験を持つ弁護士は、被疑者とご家族それぞれに寄り添い、根本的問題の解決に尽力します。なるべく早い段階で弁護士に相談していただくことで、少しでも早く社会生活へ戻るための選択肢も広がります。
薬物事件で逮捕されそうな方、ご家族が逮捕され困っている方の相談を是非お待ちしております。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

刑事事件について高い専門性とノウハウを有した6名の弁護士が在籍する法律事務所です。

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