SNS・アプリを使った現代型犯罪の特徴は?弁護士が解説!!

SNS・アプリを使った犯罪にはどのようなものがある?

近年、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やスマホのアプリを使った犯罪が報道されることが増えてきました。子ども、未成年者を含む若年層の方々が広く利用するツイッター、インスタグラム、TikTok〔ティック・トック〕、フェイスブック、ひま部、Tinder〔ティンダー〕、Pairs〔ペアーズ〕等が、ごく一部の利用者により犯罪に悪用されている状況にあります。

これらのSNS・アプリは、正しく使えば楽しく、人間関係や社会生活を一層豊かにする可能性のあるものです。一方で、名誉毀損・侮辱、性的犯罪、業務妨害、詐欺等の刑事事件の温床となっているとの指摘もあります。正しい知識を持って使えないと、誰でも、これらの刑事事件の加害者・被害者になってしまうリスクがあります。このページでは、SNS・アプリ(以下「SNS等」といいます。)を使った犯罪や、犯罪を行ってしまったとき、犯罪に巻き込まれてしまったときに取るべき対応について解説します。

 

SNS等での名誉毀損・侮辱

どんな責任を問われる?

SNS等での犯罪として代表的なものが名誉毀損・侮辱です。過去には、有名なテレビ番組に出演していた女性が、インターネット上における誹謗中傷で自ら命を絶ってしまうという悲しい事件がありました。この事件では、加害者が「侮辱」の容疑で書類送検されており、事件が立件(刑事事件化)されています。

この刑事事件に限らず、一般に他人に関する誹謗中傷を行うことは、インターネット上、SNS上でも許されることではなく、名誉毀損・侮辱等の罪に問われるおそれがあります。名誉毀損罪は3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金(刑法230条1項)、侮辱罪は2022年7月7日施行の改正刑法では、「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」と定められています(刑法231条)。それまでの侮辱罪の法定刑は「30日未満の拘留」か「1万円未満の科料」という比較的軽いものでしたが、その上限を引き上げて「1年以下の懲役・禁錮」と「30万円以下の罰金」が新たに加えられたのです(侮辱罪の厳罰化)。さらに、刑事罰を受ければそれで済むという話ではなく、加害者は民事上の損害賠償責任を問われるおそれもあります。民事上の損害賠償においては、民事訴訟等を提起され、慰謝料等に加え、弁護士費用、場合により被害者が発信者情報特定に要した費用の賠償を求められ、賠償額が高額に上ることもあります。

 

名誉毀損と侮辱の違い

名誉毀損・侮辱は広く使用されている言葉ですが、それらの違いについて説明します。簡単に違いを挙げれば、具体的事実を挙げて誹謗中傷を行うことが名誉毀損で(例:「Aさんは、Bさんらと組織的に振り込め詐欺をしている人物である。」「Cさんは前科何犯の犯罪者である。」)、具体的事実を挙げずに誹謗中傷を行うのが侮辱です(例:「Dさんはクズ野郎だ。」)。そのため、事実を挙げていないから犯罪とならないと簡単に考えるのは誤りで、名誉毀損にはならなくても侮辱にはなると判断される場合は多くあります。また、侮辱罪は比較的軽いから、などと考えるべきではありません。刑事事件となれば、通常どんな事件であっても、警察・検察といった捜査機関において長時間にわたる取調べを受けることになります。

 

SNS等でのわいせつ画像等のやり取り

他にSNS等での犯罪として多いのが、わいせつ画像等のやり取りです。この種の犯罪は、特に若年層の男女が手を染めたり、巻き込まれたりすることが多い犯罪類型です。刑事事件になることも非常に多いものです。

具体的には、男性・女性問わず、自分の裸や陰部を撮影したわいせつ画像をSNS上で公開すれば、不特定多数の人に頒布〔はんぷ〕したものとして、わいせつ物頒布等罪(2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金もしくは科料)に問われるおそれがあります。SNS上では公開せず、DM(ダイレクト・メッセージ)だけでやり取りした場合はどうでしょうか。この場合でも、DMの相手方に対して公開を指示したと捜査機関に判断されれば、わいせつ物頒布等罪の共犯となるおそれがあります。また、単にわいせつ画像等をスマホ等で持っていただけの場合でも、画像の内容や作成状況次第では、児童ポルノ禁止法違反(児童ポルノの所持・製造等)に問われるおそれがあります。児童ポルノに関する刑事事件の取扱いも非常に増えてきています。

以上のとおり、わいせつ画像等をスマホ等の端末で取り扱うこと自体が、刑事事件化の大きなリスクをはらんでいるといえます。スマホ等の端末から流出するリスクもあります。友人間であっても、面白半分でわいせつ画像等を取り扱うことは絶対にやめた方がいいといえます。

 

SNS等での業務妨害

2022年1月、大学入試センター試験の会場で、受験者が世界史の試験問題をアプリで外部に流出させ、外部にいる大学生に回答を求めるという驚くべき事件が発生しました。この事件では、受験者は、大学入試センターに隠れてその業務を妨害したと判断され、偽計業務妨害の罪(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)に問われる可能性があります。偽計業務妨害は、「偽計」といわれるように、人を騙してその業務を妨害する犯罪です。そのため、妨害当時に管理者に発覚したかどうかは問題となりません。なお、威力業務妨害という犯罪もあります。

この刑事事件からわかるように、他人の業務に関し、外部に流出させることが禁じられている情報や画像を、SNS等で外部に流出させることは、幅広に、業務妨害の罪に問われるおそれがあるのです。先に述べた名誉毀損・侮辱やわいせつ画像等に当たらないからといって油断してはいけません。ここにも刑事事件化のリスクが潜んでいます。

 

弁護士への依頼と弁護士の対応

犯罪を行ってしまった場合

万一、SNS等での犯罪を行ってしまった場合には、早期に弁護士に相談されることをお勧めします。

周知のとおり、SNS等ではアクセスログや契約者情報等がサーバーに保存されており、警察の捜査を経れば誰の仕業か、さらにはどのような投稿等が行われたのかが発覚することが多いです。もっとも、弁護士に相談する前に、発覚をおそれて投稿や画像等の証拠を消去してしまう方が多いのも現実です。そうなれば、相手方や捜査機関には証拠が保全されているのに、こちらには証拠がなく、適切な対策がまったく立てられないという事態になってしまいます。発覚をおそれて投稿や画像等を消去した行為が、後々、証拠隠滅〔いんめつ〕を行ったと判断され、逮捕や勾留〔こうりゅう〕の理由になってしまうこともあります。そのため、SNS等での犯罪を行ってしまった場合、証拠は消去せずに、早期に弁護士に相談されることをお勧めします。

ご相談・ご依頼を受けた場合、弁護士は、依頼者から詳しい事情をうかがい、関係証拠を収集・保全し、刑事事件化のリスクの有無・程度、逮捕・勾留のリスクの有無、民事上の損害賠償責任の有無等について判断します。その上で、依頼者にとって最適な解決策を提案し、実行することができます。

 

犯罪の被害に遭ってしまった場合

他方、不幸にしてSNS等での犯罪の被害に遭ってしまった場合は、上記と逆のことがいえます。つまり、投稿や画像等の証拠を、日時や時刻、URL等がわかる形で、スクリーンショット等で保全し、早期に弁護士に相談することが肝要です。その際、弁護士にメールで証拠を送信しても良いでしょう。そうすることで、その後の手続がスムーズに進み、被害者として望む結果が得られやすくなります。

ご相談・ご依頼を受けた場合、弁護士は、上記と同様、詳しい事情をうかがい、関係証拠を収集・保全します。その上で、依頼者の意向を尊重しながら、発信者情報特定に関する手続、投稿記事等の削除に関する手続、相手方への損害賠償請求、刑事告訴、相手方との任意の交渉等、一切の必要な手続を提案し、実行していきます。

 

解決事例

ツイッター、ブログでの名誉毀損に関する刑事弁護の事例

当事務所は、インターネット上の名誉毀損について、加害者側の依頼を受け、刑事弁護を行った実績を多数有しております。

加害者がツイッター、ブログ等で特定個人に対し反復継続的に名誉毀損を行ってしまっていた事例では、刑事弁護を行い、余罪で数回逮捕・勾留が繰り返される過程はありましたが、最終的には被害者に対する被害弁償、削除等の事後措置の誓約等を行い、加害者は不起訴処分となりました。

 

TikTok、ひま部に関する刑事弁護の事例

当事務所は、TikTok、ひま部等を用いた性犯罪、わいせつ物頒布罪等についても刑事弁護を行った実績を多数有しております。

加害者がこれらのSNSで出会った未成年と淫行等に及んでしまった青少年健全育成条例違反の事例では、刑事弁護を行い、最終的には実質的被害者に対する被害弁償や贖罪寄付等を行い、加害者は不起訴処分となりました。

 

その他の事例

上記各事例のほか、当事務所は、SNS上の犯罪についての刑事告訴、発信者情報開示請求、削除請求、民事訴訟の提起等、被害者側の立場での代理人活動も幅広く行っています。SNS上の犯罪の被害に遭ってしまわれた方、そのおそれがある方は、ぜひ早期に当事務所にご相談いただけますと幸いです。

 

さいごに

以上のとおり、近年のSNS・アプリでの犯罪は、非常に多岐にわたるもので、誰しもが加害者・被害者になってしまうリスクがあります。弁護士は、通常、犯罪類型ごとの対応方法やSNS等特有の対応方法も熟知しています。実際に刑事事件や民事事件となり、事件が大きくなる前であっても、早期にご相談いただくことで、法的問題がないものとして不安の解消につながることも多くあります。SNS等を使った犯罪については、できる限り早期に、弁護士に相談されることをお勧めします。

 

 

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

刑事事件について高い専門性とノウハウを有した6名の弁護士が在籍する法律事務所です。

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