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保護責任者遺棄罪とは
保護責任者遺棄罪は、老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する者が、遺棄し(場所的転移の移置又は置き去りの両方の行為を含む。)、又は生存に必要な保護をしなかったこと(不作為)について罪に問われます。
保護責任者遺棄罪の刑罰
保護責任者遺棄罪
前記の保護責任を有する者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処する。(刑法218条)
保護責任者遺棄致死罪
前2条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。(刑法219条)
○「保護責任を有する者」とは
遺棄罪の客体は、老年・幼年・身体障害者・精神障害者などであり、主体はそれらの人を保護すべき責任のある者です。
具体的には幼年の子の親権者は保護責任者に該当します。医師も同様に患者に対し治療をする義務があるので保護責任者に該当します。また、判例では、ホテルで同宿人に覚せい剤などの薬物を注射した結果、同宿人の容体が激変し、そのまま放置すれば死に至ることが予見されたのに、置き去りにする行為、交通事故を起こし、相手に瀕死のけがを負わせたのに、人目に付かない場所などに運ぶ行為についても、保護責任者遺棄罪が成立するとされています。これら事案は、状況如何では殺人罪に問われる可能性もあります。
○「遺棄し、又は生存に必要な保護をしなかった」とは
遺棄は、①要保護者を危険な場所に連れていく行為(場所的転移の移置)と、②要保護者を危険な場所に置いたまま立ち去る行為、要保護者が危険な場所に行くのを放置する行為、要保護者が保護者に接近するのを積極的に妨げる行為(いずれも置き去り)、③要保護者に対し、生存に必要な保護をしなかった行為(不保護)を言います。
ただし、これらの行為について生命・身体の安全にとって実害発生の具体的な危険がない場合には犯罪は成立しないとされています。
保護責任者遺棄致死罪と殺人罪の区別
母親が出産直後の子を放置して死亡させた事例(殺人罪が成立)
猛暑の中、幼い子どもを冷房が効かない車内に放置し、パチンコ店に長時間滞在した結果、子を熱中症等で死亡させた事例(保護責任者遺棄致死罪が成立)
逮捕の可能性
保護責任者遺棄致死罪が問われる事案においては、ほぼ間違いなく、逮捕勾留による強制捜査が行われることが予想されます。殺人罪の成否が問題となる事案においては、捜査の機微に関わることから、弁護人の選任が必要となります。
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