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不起訴とは
警察及び検察が捜査した刑事事件について、検察官が起訴するかしないかを判断します。警察には起訴・不起訴の権限がないので、捜査したすべての事件を検察官に送致(送検)し、検察官に処分を委ねることになります。検察官が起訴すれば、裁判にかけられ、起訴をしないという判断をした場合には裁判にかけられることを免れます。後者のことを、不起訴処分がされたといいます。事件が不起訴となった場合は、前科はつきません。日本の刑事事件では、起訴されると99.9%が有罪になるとも言われていますので、起訴されるとほぼ確実に前科が付いてしまうことになります。
検察官は、事案の軽重、被害の程度、被害弁償の有無、被害者の処罰感情、本人の反省など事件の全ての事情を考慮して、起訴するか不起訴にするかを判断します(刑事訴訟法第248条)。
不起訴処分の種類
不起訴処分(最終処分)の中にも以下のとおり、いくつか種類があります。
①罪とならず…事件自体が罪とならない場合(例:行為が刑法その他いずれの処罰規定にも該当しない場合)
②心身喪失…鑑定等の結果、心神喪失で責任無能力と判断された場合
③嫌疑なし…嫌疑自体が失われた場合(例:真犯人が見つかった場合)
④嫌疑不十分…証拠が不十分で起訴できない場合
⑤親告罪の告訴の欠如、取り消し…名誉棄損罪など告訴があって初めて起訴が可能となる犯罪について、捜査をしたが、被害者の告訴が得られず、又は起訴前に告訴の取り消しがなされた場合⑥起訴猶予…証拠が十分あって、起訴することも可能であるが、検察官が敢えて起訴しない場合 (例:軽微な犯罪で、示談が成立していて被害者が許している場合など)
※最終処分前の中間的処分として、捜査機関が捜査を尽くした結果、現段階で証拠が不十分であることを理由に、一旦身柄を解放する場合があります。その場合を処分保留の釈放といいます。この場合は、捜査が継続され、おって起訴、不起訴の最終処分がなされます。
不起訴処分に向けた弁護士の活動
罰金処分でも前科となる以上、捜査段階で受任した弁護士は、その事件を不起訴処分とすべく全力で活動することとなります。受任事件が上記の①ないし⑥のいずれに該当するかを早期に見極め、検察官と連絡を取り、意見書や資料を提出して、被疑者にとって有利な事情を捜査機関(検察及び警察)と共有します。
否認する場合・犯罪が成立しない場合
例えば、犯罪が成立していない場合には、なぜ犯罪が成立していないといえるのか、逆に捜査機関はなぜ犯罪が成立していると勘違いしたのかを証拠をもって説明していくことになります。嫌疑が無い場合や嫌疑が不十分な場合には、アリバイ証拠や弁護人が提出する証拠・資料を捜査結果と突き合わせて検討すれば、起訴しても到底有罪判決を得ることが困難である事情を検察官に示し、積極的に説明し、納得させていきます。このような証拠資料は、一般の方では、なかなか収集できないことが多く、また証拠価値の評価を適切に行うことが困難でありますので、弁護士の知見に頼らざるを得ない場合が多いのです。
罪を認める場合
また、被疑者において、犯行を行ってしまっている場合には、起訴猶予を目指すことになります。起訴猶予は、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況」により判断されるのですが、いわば事件の全ての事情を考慮して総合的に判断されます。
そのために、被害者のいる犯罪では被害者と示談をしたり、被害者のいない犯罪では贖罪寄付をしたりして、被疑者にとって良い事情を積み重ねます。
当事務所の弁護士に依頼する意義
時間とともに証拠は散逸します(例えば、防犯カメラの映像は短期間で消去されます。)また、時間とともに被害者の気持ちは硬化することが多いです(加えて、被害者の方は加害者の方と直接会うのを嫌がることが多いです。)。
弁護士が早期に動くことにより、不起訴を獲得できる可能性が飛躍的に高くなります!当事務所は、多々の刑事事件で不起訴を獲得してきたフットワーク自慢の弁護士が、適切な判断で不起訴に向け、全力で活動いたします。初回相談は30分まで無料(逮捕された方のご家族からの相談の場合は初回相談すべて無料)ですので、お気軽にご相談ください。
不起訴を獲得した事例
多くの事例がありますが、比較的最近の案件から、3件を紹介します。
1 1件目のご依頼主は、医療関係の職にある方ですが、交差点内で乗用車を運転して右折中、これを右側から追い越そうと後続進行してきた原付と衝突し、同運転手に手首骨折の怪我を負わせた業務上過失致傷事件において、担当検察官から罰金刑相当(起訴相当)の内意を受けた後、当事務所に是非不起訴処分となるよう対応して欲しいとのご依頼をされました。
当事務所の所属弁護士は、保険会社から事故状況を詳細に聞き出し、当初被害者側の過失割合を10分の8とする査定結果を、被害者側の強い要望に沿う形で10分の5に減縮した経緯を明らかにできたほか、道路交通法を検討し、被害者側に種々の違反行為が認められることを把握しました。又、被害者側の事情として、生活保護を受けておられ、示談金を入手すれば、これが地方公共団体に収入とみなされる心配を抱いておられました。弁護士は、ケースワーカーに連絡し、地方公共団体等との調整をお願いし、心配されるようなおそれがないことを確認し、被害者にこれを伝えて、安心感を与え、示談成立に大きく寄与しました。
そして、これら顛末を詳細に上申書に取りまとめ、検察官に提出しました。その結果、検察官は、従前の処分予定を撤回し、不起訴処分へと変更したのです。弁護士の熱意が検察官を動かしました。
2 2件目のご依頼主は、金融機関に勤務される方で、仕事上のストレスから、酔余タバコを吸った際、その吸殻の火を人家塀に貼られたポスター等に押し付け、同ポスターや塀を焦がす行為を行い、検挙されたものです。ご依頼主は、その直後、当事務所に勤務先に知れないよう、適切に対応することのご依頼をされました。
当事務所の所属弁護士は、直ちに所轄警察署を訪れ、刑事課長代理に面談を申し込み、面談した機会に、事件は火を用いたものの、周囲の客観的状況から延焼の危険はなく、放火罪ではなく、器物損壊で立件すべきこと、被害者との示談を早急に成立させるので、検察官への送致はできればそれまで待って欲しい旨の申し入れをしました。又、新聞発表をさけて欲しい旨陳情しました。
その結果、全て了解となり、その後、示談も成立させました。警察は、示談が成立したことで被害者から「親告罪の告訴」を取らなかったことから、結局、本件は、「親告罪の告訴の欠如」という、珍しい形の不起訴処分となりました。本件では、担当弁護士が元検事を務めた者であって、迅速に刑事課長代理という捜査管理者との面談を実現させ、証拠に即した事実関係を基にして、穏当な扱いを勝ち取った案件です。
3 3件目のご依頼主は、同棲中の女性に対するDVによる傷害事件につき、逮捕勾留後、処分保留で釈放され、検察官による継続捜査を受けておられ、当事務所所属弁護士に是非不起訴処分を得たいとのご依頼をされました。勾留中、選任していた弁護士を解任してのご依頼でした。同弁護士は、検察官に面会要請をしても、一度も面談が叶わなかったという事情がありました。
ご依頼を受け、ご依頼主から事情を聴いてみると、被害者という女性は、マゾヒズム(被虐嗜好)があり、本件の「暴行」も、女性側からの希望に基づき行われたもので、いわゆる被害者の承諾があると考えられる事案でした。判例によれば、酷い痕跡を残さない態様の一過性の傷害であれば、被害者の承諾は違法性を阻却すると考えられています。担当検察官は、思い込みで、本件暴行自体はマゾ性向と関連がないDVに基づくものであると決めつけ、弁護人の意見に耳を傾けようとせず、釈放後1年以上にわたり処分未了でした。そこで、当事務所弁護士は、被害女性がマゾ性向を有し、本件もこれに基づき、同女側の希望により行われ、結果、傷害が発生したが、そもそも被害者の承諾があり、しかも酷い痕跡を伴わなかったことなどの事実関係と判例を盛り込み、早期に嫌疑不十分の処分を行うよう求める上申書を作成持参し、検察庁に赴き、検察官に面談を求めました。しかし、予期のとおり、面談を拒絶されましたので、当該検察官の上司である刑事部副部長に面会を求め、穏やかに面会を求めた理由を説明した上、処分を要請し、上申書を手交しました。
その結果、翌日に至り、嫌疑不十分による不起訴処分を得ました。本件では、担当弁護士が元検察幹部を務めた者であって、検察部内の決裁の在り方に通じていたことから、的確な対処が可能となりました。