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事件発生から逮捕までの流れを教えて下さい
警察が刑事事件と認識して捜査を始めるためには
あるトラブルが刑事事件として警察に認識され、捜査が開始するためにはいくつかの経路があります。
まず一つ目が被害届です。「暴行を受けた」「商品を盗まれた」など、被害者が警察に被害届を提出し、それを受理した警察は刑事事件として捜査を始めます。被害届はそれ自体に犯人の処罰を求めない点で、告訴や告発と異なっています。被害届には、被害者の住所氏名、被害に合った場所や被害の模様、犯人の住所氏名や特徴などを記載します。被害届は必ず受理される訳ではありません。事件性の有無や民事不介入を理由に受理されない場合があります。もし不受理となった場合でも、弁護士に提出時に同伴してもらうことで受理となる場合もあります。
二つ目は通報です。被害者または第三者から事件性があると思われる出来事についての情報を警察に伝えることで、事件性があると判断されれば刑事事件としての捜査が始まります。通報を受けて警察官がすぐ現場に駆けつけ、現行犯逮捕となる場合もあります。
三つ目は告訴や告発です。犯罪の事実を申告して犯人への処罰を求めるもので、告訴は被害者自身や法定代理人等によって、告発は第三者からの申告です。
刑事事件における警察の捜査の流れと捜査内容
刑事事件における警察の捜査は、まず事情聴取から行われます。これは被害者や告発者、目撃者に対して行われるもので、事件発生時の日時や状況、犯人の行動などを一つ一つ確認していきます。また事件を裏付ける物的証拠についても提出を求められる場合があります。例えば犯人によって壊された物や詐欺などの場合の商品、事件当時の衣服など様々です。
犯人が特定できている場合や捜査が進んで被疑者が現れた場合、警察は任意同行や任意出頭を求め、事情聴取を行います。そこで事実関係を認めれば逮捕となる場合があります。また必要に応じて家宅捜索が行われます。家宅捜索では、捜索差押許可令状に基づいて、犯行を裏付ける証拠を捜査・押収します。この段階で証拠品によって犯行が裏付けられると、逮捕となる場合があります。
被害者や被疑者の立ち会いで実況見分が行われる場合があります。実況見分は逮捕前または逮捕後に行われ、現場で被害者や被疑者、目撃者などの位置関係や事実関係を確認していきます。実況見分調書は、その後裁判などでも判断基準となる重要な書類です。
逮捕までの流れと目的、備えておきたいこと
逮捕はその目的から大きく二つに分けることができます。一つは証拠品などから被疑者が刑事事件の犯人である可能性が高く逮捕されるべきであると判断された場合です。もう一つは被疑者が逃亡や証拠隠滅を図る可能性がある場合に、その身柄を拘束することを目的とした逮捕です。逮捕は逮捕令状に基づいて行われるのが一般的で、逮捕令状は警察から裁判所に請求し、審議されて発行されます。しかし現行犯逮捕の場合には必要ありません。
逮捕後は48時間以内に検察へ送られ、検察は24時間以内に勾留か起訴するようになります。突然逮捕されると、被疑者自身が逮捕に戸惑いきちんと事実関係を説明できなかったり、その後の手続きに困ったりする場合があるかもしれません。その上、48時間以内は弁護士などの弁護人以外は家族も接見することができません。そのため、できるだけ早い段階で弁護士に相談しておくことをおススメします。弁護士であれば逮捕前の事情聴取や実況見分等に立ち会うことができます。また被害者がいる場合には第三者として弁護士を交えることで冷静に示談交渉を進めていくことができます。突然の逮捕に戸惑うことのないように、対応策を検討しておきましょう。
警察や検察が家宅捜索に入る目的は、刑事事件の犯行の決め手となる証拠を入手するためです。家宅捜索が行われるタイミングは、刑事事件の捜査段階または既に刑事事件で起訴され公判が始まっている段階が考えられます。
警察や検察が家宅捜索を行うためには、「捜索差押許可状」が必要です。これは裁判所によって発行され、その内容には被疑者若しくは被告人の氏名と罪名、捜索すべき場所や物や身体、差し押える(押収する)べきもの、有効期限等が記載されています。当然ながら家宅捜索はこの内容によって行われるため、闇雲に捜索したり差し押えたりすることはありません。捜索や差し押えられるものは、刑事事件の内容によって様々です。差し押えられたものは検証され、犯行を裏付けるための証拠品として裁判が終わるまで返還されない場合もありますが、刑事訴訟法で留置の必要のないものは被告事件の集結を待たないで還付しなければならないとされているため、必要の無くなった時点で返還されます。
家宅捜索について知っておくべきことと注意点
刑事事件の家宅捜索で、まれに事前に予告される場合もありますが、ある日突然やってくる場合が一般的です。これは事前に予告した場合、証拠隠滅や逃亡を図る可能性があるためです。捜索を行うためには、居住者やそれに代わる者の立会いが必要となります。被疑者若しくは被告人が立会いを求められるケースもあり、早朝など在宅の可能性が高い時間帯が多いとされています。まず捜索差押許可状を見せられ、数人の警察や検察が許可状に沿って捜索を始め、数時間程で終わる場合が多いとされています。
家宅捜索は強制捜査のため、拒否することができません。捜索を拒んだり警察や検察に対して抵抗するような行為を行ったりした場合、公務執行妨害となり逮捕される可能性もあります。突然の家宅捜索に困らないためにも、その前段階で弁護士と相談して対策を取るなど、しっかりと備えておく必要があります。
家宅捜索が行なわれる前に検討しておくべき対処法
家宅捜索は刑事事件の捜査がある程度進んだ段階で行われます。そのため家宅捜索以前に警察から任意同行や出頭を求められるなど、何かしらの予兆がある場合が多いでしょう。そこで行われる事情聴取への適切な対応や、犯行を認めている場合は被害者と示談しているかどうかによっても、家宅捜索の有無に影響が出てくるでしょう。前段階の対応次第では防げる可能性があることを知っておきましょう。
警察から任意の同行や出頭を求められた時点で弁護士に相談しておき、一定の条件を満たせば刑事事件の捜査段階での家宅捜索であっても、弁護士が立ち会える場合があります。また公判開始後の家宅捜索の場合は、弁護士には立ち会う権利があります。
家宅捜索の結果次第では現行犯逮捕となる場合もあります。もし刑事事件について自覚がある場合は、捜査が進んでいて決めてが見つかれば逮捕されるかもしれないことを理解しておきましょう。逮捕や裁判、被害者との示談等に向けて、焦らず対応できるように弁護士に相談して対応を考えておくのも一つの方法です。また出頭を考えている場合は、容疑が固まる前に行動する必要があることも意識しておきましょう。