目次
暴行罪について
暴行罪の「暴行」とは
暴行罪における「暴行」とは,「人の身体に対する不法な有形力の行使」と定義されています。
ここには,①暴行の典型的な場合のみならず,②傷害の未遂といえない程度の物理的な力の行使でも,直接人の身体に加えられた場合や③物理的な力が身体に直接加えられなくとも,傷害の結果発生の具体的危険を生じさせた場合,を含みます。
【暴行の具体例】
①暴行の典型的な場合
・殴る,蹴る
・手で他人の肩を押して土間に転落させる行為(判例)
②傷害の未遂といえない程度の物理的な力の行使でも,直接人の身体に加えられた場合
・相手に唾を吐く行為
・相手に食塩をふりかける行為(裁判例)
③物理的な力が身体に直接加えられなくとも,傷害の結果発生の具体的危険を生じさせた場合
・相手に石を投げ,命中しなかった場合(裁判例)
・狭い四畳半の部屋で相手を脅かすため日本刀の抜き身を振り回す行為(判例)
暴行罪の法定刑
暴行罪で起訴された場合は,以下のとおり,最高で2年以下の懲役刑に科される可能性があります。
参考:刑法第208条
「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは,二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」
暴行罪の関連犯罪
・人の身体に対する不法な有形力を行使した結果,相手が怪我をした場合は傷害罪が成立します。
・人と共同して暴行罪を犯した場合は,暴力行為等処罰に関する法律違反で処罰(3年以下の懲役または30万円以下の罰金)される可能性があります。
・職務を執行している公務員に暴行をした場合(職務質問を受けて暴力を振るった場合等)は,公務執行妨害罪で処罰(3年以下の懲役もしくは禁錮又は50万円以下の罰金)されます。
捜査機関による暴行罪の処理状況
暴行罪の法定刑は,最高で2年以下の懲役なので,逮捕・勾留されたとしても被疑者段階(起訴される前の段階)では,国選弁護人はつきません。(注:被疑者段階の国選弁護人は,「死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件について被疑者に対して勾留状が発せられている場合」でなければ付きません。)
もっとも,暴行罪が国選弁護人の付かないような犯罪であるからといって,逮捕・勾留されない軽微な犯罪,起訴されない軽微な犯罪というわけではありません。
例えば,平成25年の統計(出展:平成25年度検察統計)によれば,刑事事件として捜査が開始された暴行罪が全国で14578件あり,そのうち逮捕されたのが4731件(逮捕率約32.4パーセント),その上勾留されたのが3739件(逮捕率約25.6パーセント)です。また,最終的に起訴(略式命令を含む。)された確率は約26パーセントほどです。
このとおり,暴行罪は,国選弁護人が付かないとしても,逮捕や勾留される確率は決して低くない犯罪です。それは,事件発生当初は,捜査機関(警察)としては,犯人に逃亡や証拠隠滅をさせないために,被害者の言い分が正しいことを前提に動くことが多いからです。
暴行罪の弁護方針
暴行罪の弁護方針は,逮捕された場合とされない場合で,優先順位が異なります。
1 逮捕された場合
社会人の方や学生の方の身柄拘束の期間が長期化すると,解雇や留年等社会的に甚大な被害が生じることが見込まれますので,まずは早期の身柄の釈放に努めることが先決となります。
そのためには,逮捕に引き続いて,勾留をされないように,検察官や裁判所と掛け合う必要があります。
詳しい手続きは,弁護士にお問い合わせください。
2 逮捕されない場合(暴行罪の一般的弁護方針)
(1) 自白事件(暴行をしたことを認める)の場合
暴行罪の場合,被害者のいる犯罪ですので,捜査機関を通じて被害者の方と連絡を取り,被害者の方が望まれるのであれば,謝罪文の受け渡しや,示談金のお支払いをして,その証拠を捜査機関に示し,少しでも最終的な処分が軽くなるように努めます。
暴行の被害者の方は,加害者が直接連絡することを通常望みませんし,時間との勝負の面も否定できないので,被害者の方と交渉したい場合は,弁護士を付けることをお勧めします。
(2) 否認事件(暴行をしたことを認めない)の場合
暴行をしたことを認めないといっても,間違って体が当たってしまった場合(過失で暴行した場合には暴行罪は成立しません。),相手が先に攻撃してきた場合やそもそも人違いの場合など様々な理由が考えられます。
この場合,証拠を集め,意見書を作成して捜査機関に提出するなどして,そのような事情を捜査機関(特に検察官)に理解してもらうことが重要です。
料金表
当事務所に弁護を依頼してくださる場合の料金はこちらになります。
ご相談の予約
ご相談の予約は電話・メールともに受け付けております。初回30分は無料(逮捕されている方のご家族は,初回1時間無料)ですので,お気軽にご相談ください。