どのような場合に不同意性交等罪に問われる?刑法改正のポイントを解説

不同意性交等罪とは

不同意性交等罪とは、被害者が「同意しない意思を形成し、表明し若しくは、全うする」ことが困難な状態で性交等を行うことです。2023年6月16日、不同意性交等罪の新設を含む刑法改正案が成立、同年7月13日に施行されました。
従前は「強制性交等罪・準強制性交等罪」が定められていましたが、それらが一体化し、不同意性交等罪となりました。また、「強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪」も同様に、不同意わいせつ罪として新しい犯罪として統合されます。

また、改正法の施行以前に行われた行為については、従前の強制性交等罪で処罰されることになります。

不同意性交等罪の刑罰

不同意性交等罪の法定刑は「5年以上の有期拘禁刑」です。
強制性交等罪では「5年以上の有期懲役」であるため刑の上限は同じですが、刑の種類が異なっています。
拘禁刑とは、刑務所での刑務作業が義務付けられていない禁錮刑と義務付けられている懲役刑を一本化したものです。不同意性交等罪の施行は2023年7月ですが、拘禁刑についての改正刑法は2025年に施行予定のため、それまでの刑罰は懲役刑ということになります。

強制性交等罪からの主な変更点

要件の拡大

不同意性交等罪の成立の要件は、被害者が「同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態」で性交等を行うことです。
従来の強制性交等罪の場合、暴行・脅迫によって、性交等をすることが要件であり、また従来の準強制性交等罪は、被害者が抗拒不能に陥ったこと(酩酊等)により正常な判断ができない状態を利用して性交等をすることなどが要件でした。
今回の法改正の結果、犯罪が成立する範囲がより広くなったと言えるでしょう。

性交同意年齢の引き下げ

性交の同意年齢が13歳から16歳に引き上げられました。
これにより16歳未満のこどもは、性交に同意する能力を持たないとみなされ、16歳未満との性交等については同意の有無にかかわらず処罰されることになります。
もっとも、同世代間の行為は罪に問わず、13歳から15歳の場合は5歳以上の年齢差がある相手を処罰対象とすることにしています。

公訴時効の延長

公訴時効が10年から15年に延長されました。
さらに犯罪時に被害者が18歳未満の場合には、犯罪が終わってから18歳になるまでの期間が公訴時効に加わります。例えば、被害を受けた時の年齢が15歳の場合には、18歳になるまでの3年間が加わり、被害者が18歳から15年後の33歳の時に時効となります。

不同意性交等罪に問われる行為

強制性交等罪・準強制性交罪に問われる要件として定められていた、暴行・脅迫、抗拒不能などに加え、以下の8つの類型が要件として明示されました。
下記の原因により、被害者が「同意しない意思を形成し、表明し若しくは、全うする」ことが困難にさせること、相手がそのような状態にあることに乗じる場合に罪に問われることになります。

・暴行・脅迫
・心身の傷害
・アルコール・薬物などの影響
・睡眠、そのほか意識が不明瞭
・拒絶するいとまを与えない
・予想と異なる事態に直面に起因する恐怖・驚愕
・虐待に起因する心理的反応
・経済的・社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させた場合
…上司と部下、教師と生徒のように、一方が影響力を持っている関係性において、断ることで生じる可能性のある不利益を恐れて抵抗できない場合など。

また、前述のように性的行為に関して自ら判断できる「性交同意年齢」は16歳へ引き上げられたため、下記の場合でも罪に問われることになります。
・相手が13歳未満の子供
・相手が13歳以上16歳未満の子供で、行為者が5歳以上年長である場合

予想される問題点

強制性交等や準強制性交等の行為は、よく「被害者の魂の殺人」と表現されることがあります。かかる性被害を減らすためにも、今回の法改正は評価されるべきではあります。しかし他方で、新法の条文には不明確な箇所もあり、いかなる場合に犯罪が成立するのか、曖昧といえることも否定できません。例えば、第8号の「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。」にいう「憂慮」とは何かという問題点があります。一律に判断できない主観的要件を含んでおり、事案によっては不同意性交等の有無について、裁判で検察側と弁護側との間で真っ向から対立する事態も容易に想定されます。

強制性交等罪の成立には暴行・脅迫の要件が不可欠でしたが、不同意性交等罪ではその要件は必ずしも必要ではなくなりました。不同意性交等罪では、被害者が抵抗できる状態であったか否かを基準に判断されることになります。

ただ、性交等の同意の有無について明確な証拠が存するケースは少ないことから、相手方に性交の同意があったと誤信してしまった場合や、後から相手方より性交の同意をしていなかったと言われてしまった場合などにおいても罪に問われる可能性があります。

弁護士は事案の場合に応じて適切な主張を行い、弁護活動を行います。

不同意性交等罪の弁護活動

1 捜査段階(起訴前)

不同意性交等罪で捕まった場合は、法定刑が重いのと証拠隠滅の可能性が認められやすく、基本的に勾留される可能性が高いです。
勾留された場合、少なくとも10日間(延長された場合は20日間)は警察の留置所から出られない状態になってしまいます。この間、会社を無断欠勤することになり、解雇されてしまう可能性もでてきます。ただし、弁護士を通して、被害者との示談交渉を行い、示談が成立し、被害届や告訴状を取り下げてもらえれば、留置所を出ることができる場合があります。早期に釈放されれば、勤務先などに逮捕されたことがばれずに、職場に復帰できるでしょう。
また、合意をして性交等をしたのに、相手が「合意していなかった」と言い出すことがあります。そのような場合でも相手の言い分を争い、両者合意のもとで行為が行われたことを主張し、不起訴処分を目指します。

2 公判段階(起訴後)

起訴されてしまった場合は、罪を犯してしまっているときは執行猶予付きの判決が得られるように弁護をします。不同意性交等罪で執行猶予付きの判決を得るためには、被害者の方に示談書や嘆願書を書いてもらったり、生活環境を改善することや、性犯罪再犯防止のクリニックに通院したり、贖罪寄付したり、家族の監督等反省と再犯防止の意欲を裁判官に伝え、反省の意思をしっかりと示し、情状酌量をしてもらう必要があります。
罪を犯していないときは、無罪が得られるように、無実を裏付ける証拠(メールやSNSのやり取り、直前・直後の防犯カメラの様子等)を提出する必要があります。被害者の証人尋問も行われることになりますので、無罪判決に向けて全力をつくすことになります。

相手方から不同意性交等罪・不同意わいせつ罪の主張を受けておられる方は、早期に弁護士との協議が必要といえます。不同意性交等罪・不同意わいせつ罪でお悩みの方は、弊所までご相談ください。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

刑事事件について高い専門性とノウハウを有した6名の弁護士が在籍する法律事務所です。

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