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出入国管理及び難民認定法(入管法)とは?
入管法は、日本に入国したり日本から出国するすべての人の出入国について、公正な管理を図るとともに、難民認定の手続きを整備することを目的とした法律です。
例えば、在留資格がないのに日本に入国した場合は入管法違反に当たります。
日本では在留資格制度により出入国の管理を行っています。在留資格を持たない人は入国ができなかったり、ビザの発給が停止されてしまったりすることがあります。
入管法の刑罰は在留資格の取消しや退去強制と直結しているわけではなく、入管法違反で有罪になった場合でも退去強制にならないケースもあります。
入管法は外国人のみを対象にしていると思われがちですが、在留資格のない外国人を雇ってしまったなどという場合には日本人も入管法違反に問われる可能性があります。
2019年には人手不足解消のため、外国人労働者を受け入れる在留資格の分野が拡大され、労働者として技能実習生を受け入れることが出来るようになりました。
それに伴い、技能実習生と雇い入れた雇用主との間でトラブルが発生することも増えています
入管法違反の具体例
在留資格がないのに日本に入国すること
不法入国や不法上陸を容易にする行為
在留期限が経過後も日本に滞在し続けること
3年以下の懲役もしくは禁錮または300万円以下の罰金またはこれらが併科されます。
在留資格に属する活動以外を行うこと
在留資格に属する活動以外の活動を行った場合には、刑罰が科されます。
1年以下の懲役もしくは禁錮または200万円以下の罰金またはこれらが併科されます。
在留資格のない外国人を雇い入れること(不法就労助長)
3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはこれらが併科されます。
不法就労助長罪
不法就労助長罪とは、外国人を不法に就労させたり、不法就労を助長させた人に対して成立する犯罪です。
不法就労とは、在留資格を持たない外国人が働いたり、在留資格で定められていない仕事をしたりすることなどをいいます。
不法就労助長罪では、不法就労をした外国人ではなく雇い入れるなどした事業主が罪に問われます。そのため入管法の中で日本人が対象になることが多い犯罪と言えます。
不法就労助長罪にあたる行為
平成30年7月、人気ラーメン店において、ベトナム人留学生らを、入管法が定める週28時間を超えて働かせたとして、社長らが書類送検されたという事件がありました。
最近では、令和6年1月、資格外活動許可を受けていない技能実習生を、エステサロンで就労させたとして、エステサロンの経営者と運営者の2人が逮捕されたという事件もありました。
このように、就労制限のある外国人労働者を、制限を超えて働かせたり、当該業務についての就労許可を得ていない外国人労働者を働かせたりした場合に、不法就労助長罪が成立します。
この犯罪の特徴は、「故意」の場合だけでなく、「過失」の場合であっても成立する点です。「技能実習生であることは知らなかった。」などの弁解は通らないことがあります。
外国人労働者の雇い入れを行っている企業では、十分ご注意いただきたいと思います。
逮捕されたら
逮捕された場合、身体拘束が予想される期間は下記の通りです。
⇒逮捕されると48時間以内に検察庁に身柄を送検されます
⇒身柄の引渡しを受けた検察官は、被疑者を取り調べて勾留の必要性があるかどうかを判断し、勾留請求の必要があると判断した場合には、検察官送致から24時間以内に、裁判所に対し勾留請求をします
⇒勾留決定がなされると、勾留請求日を1日目として10日間勾留されます(勾留延長があれば、さらに10日間勾留が継続します)
⇒起訴された場合は保釈が許可されるまで身体拘束が継続します
もちろん事件の内容によっては、数日で釈放となる場合もあり得ますが、それは極めて例外的な場合に限られます。
最長の場合には捜査段階で最大23日間程度の身体拘束が予想されます。勾留が決定してしまうと、長期に渡る身体拘束を受けることとなり、職場等への影響は避けられません。
逮捕から勾留請求まで
逮捕された警察署で取り調べを受けることになります。逮捕から48時間以内に事件と身柄が検察庁に送致されます。検察官は、取り調べで、当該被疑者についてさらなる身柄拘束の必要があると判断した場合は、裁判官に被疑者を勾留するように請求します。
また、逮捕から勾留が確定するまでの間(最大で72時間)は、弁護士以外の面会は認められない場合がほとんどです
勾留
勾留とは逮捕に引き続き身柄を拘束する処分のことを言います。
勾留するには、「罪を犯したことを疑うに足る相当な理由があること」に加え、以下の3点のうち、ひとつ以上該当することが必要となります。
・決まった住所がないこと
・証拠を隠滅すると疑うに足る相当の理由があること
・被疑者が逃亡すると疑うに足る相当の理由があること
検察官の勾留請求が裁判所に認められた勾留決定が出された場合には、最大で10日間の身体拘束を受けることになります。さらに、捜査が必要と検察官が判断した場合にはさらに10日間勾留が延長されることがあり、最大で20日間勾留される可能性があります。
検察官による最終処分
検察官はこの勾留期間に取り調べの内容や証拠を審査し、起訴か不起訴かを判断します。
略式請求の場合を含め、一旦、起訴されれば、ほぼ確実に刑事罰を受けることになります。
不起訴となれば前科がつくことはありません。犯行を立証するに足る証拠がない、情状(被疑者の性格・年齢・境遇・行為の動機や目的など)を鑑みて、今回に限り処罰の必要がないなどの理由から検察官が不起訴の判断をする場合があります。
前者の場合を「嫌疑不十分」、後者の場合を「起訴猶予」と呼ぶことがあります。