チケット転売は犯罪?逮捕される?チケット不正転売禁止法を弁護士が解説

チケット転売とは

一般に、チケット転売とは、入手が難しいアイドルグループのコンサートや、野球の試合などの入場チケットを、興行主が定めた販売価格より高い値段で売却することを指します。
このような転売が問題となり、チケットの不正販売を禁止する法律(正式名「特定興業入場券の不正転売の禁止等による興業入場券の適正な流通の確保に関する法律」。以下「チケット不正転売禁止法」といいます。)が令和元年6月から施行されました。

チケット不正転売禁止法とは

この法律で規制されているのは、特定興行入場券の不正転売と、不正転売目的での特定興行入場券の譲受けです。
この法律における「不正転売」とは、興行主の同意なしに、業として行う特定興行入場券の有償譲渡であって、その販売価格が興行主の販売価格を超えるものを指します。

特定興行入場券とは

①提示することにより、映画、演劇、演芸、音楽、舞踊その他の芸術及び芸能又はスポーツを不特定又は多数の者に見せ、又は聴かせる場所に入場できるものであって、不特定又は多数人の者に販売されているもの
②興行主等が、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示しており、それを、券面に表示又は通信端末機器の映像面に当該興行入場券に係る情報と併せて表示させたもの
③興行日時及び場所並びに入場資格者又は座席が指定されていること
④入場資格者あるいは購入者の氏名及び電話番号、電子メールアドレス、その他の連絡先を確認する措置を講じ、かつ、その旨を券面に表示し、又は通信端末機器の映像面に表示させていること

これらのいずれも満たすものを指します。

ロックバンドAのライブチケットを例に説明します。
まず、ロックバンドAのライブチケットは、「提示することにより」、「音楽」を「聴かせる場所に入場できるもの」であり、「不特定」かつ「多数人」に販売されているものですから、①を満たします。
ロックバンドAのライブチケットには、「営利目的転売禁止」と書かれており、これは「興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示」し、それを「券面に表示」したものといえますから、②を満たします。
ロックバンドAのチケットには、「20△△年×月×日 〇時開場 〇時開演 ☆☆ドーム 1階A列15番」と書かれており、「興行日時」、「場所」、「座席」が指定されているので、③を満たします。
ロックバンドAのチケットには、「このチケットは、購入者の氏名及び連絡先を確認した上で販売されたものです。」と書かれており、「購入者の氏名及び電話番号、電子メールアドレス、その他の連絡先を確認する措置を講じ、かつ、その旨を券面に表示」したものに当たりますから、④を満たします。

仮に、ロックバンドAのライブの興行主がこのチケットを7000円で販売しているのに、繰り返し転売を行う意図をもって、10000円で転売した場合には、チケット不正転売禁止法に違反することになります。

逆に、特定興行入場券でないのならば、チケット不正転売禁止法の規制対象にはなりません。
例えば、アミューズメントパークの入場券や温泉施設への入場券を高額で転売してしまった場合は、この法律でいう「不正転売」には当たらず、刑事責任は負わないことになります。
しかし、施設によっては、「不正転売によるチケットであることが確認された場合は、当該チケットを無効とする」、「不正転売で無効化されたチケットを入手してしまった場合であっても、一切返金等の対応をしない」などと独自のルールを設けている場合もあります。
刑事責任を負わない場合であっても、何かしらのペナルティを負う場合があり、注意が必要です。

業として行うとは

「反復継続して行うこと」を意味します。実際に1回のみの転売であっても、反復、即ち複数回転売する意思があれば、「反復継続性」が認定されます。

刑事的責任

チケット不正転売禁止法に違反し、不正転売を行った場合には、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又はこれを併科するということが定められています。
さらに、チケットの不正転売に加え、ライブ会場入場時に提示を求められた身分証の偽造も行っていたという事案で、別途、有印私文書偽造及び同行使罪も適用された事案もあります。
また、本当は所持していないチケットを所持していると偽って販売し金銭を受け取ったり、1枚しか所持していないチケットを複数人に販売するような行為は詐欺罪に問われる可能性があります。

予想される刑罰

刑罰は、犯行動機や経緯、行為態様、生じた結果の大小等に左右されます。
年単位で、何十回、何百回と不正転売を繰り返してしまったり、不正転売で多額の利益を得てしまったりした場合、罰金刑だけでなく、懲役刑も併科されることがあります。
一方、不正転売の回数が少なく、得た利益の額も少なく、初犯でこれまでにチケット不正転売禁止法を始め、前科・前歴がないという方でしたら、罰金刑が選択されることが多いでしょう。

逮捕を防ぐには?弁護士のできること

罪の意識のないまま犯罪に加担してしまった方もいるのではないでしょうか。
チケット転売は社会的注目度の高い事件ですので悪質な場合では実名報道などの可能性もあります。
逮捕された場合には、家宅捜索、長期にわたる勾留や、起訴されて前科がついてしまう恐れがあります。そのような状況になれば、現在の社会生活に大きな影響を与えることは避けられません。
自首をしているか、転売で得た利益を何らかの適切な方法で返還しているかなど被疑者それぞれの状況によって、警察や検察の判断も異なってきます。
逮捕や、長期の勾留、前科がつくことを防ぐためには、早期に弁護士に相談することが重要です。

チケット不正転売禁止法は、令和元年6月から施行された新しい法律です。
そのようななかで、当事務所では、「チケットを不正に転売してしまった…。どうしよう…。」という方から、多数ご相談をいただいております。
また、弁護人として、チケット不正転売禁止法の被疑者の方の弁護活動を行った実績もございます。チケットを不正転売してしまった…とお悩みの方は、ぜひ一度、当事務所までご相談ください。

解決事例

有名アイドルグループのコンサートチケット2枚を定価の8~9倍の値段で販売したとして逮捕されてしまったAさんの弁護活動を行いました。
当事務所の弁護士は、速やかにAさんの家族と連絡を取り、帰住環境を整えるなどし、その成果を意見書にまとめて裁判所に提出しました。すると、勾留請求は却下され、Aさんは、逮捕からわずか数日で自宅に帰ることができました。

その後、興行主との示談交渉や不正転売チケットの購入者に対するチケット代金の返還などを行いました。
その結果、Aさんは、無事に不起訴処分となりました。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

刑事事件について高い専門性とノウハウを有した6名の弁護士が在籍する法律事務所です。

毎年500件以上のご相談が寄せられており、高い実績にもとづいた最良のサービスを提供いたします。

豊富な実績を元に刑事事件に関するコラムを掲載しております。

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