賃金業法、出資法、組織犯罪処罰法の違反で弁護士の対応により実刑を免れた刑事事件の事例

貸金業法違反、出資法違反、組織犯罪処罰法違反に関する事件

賃金業法、出資法、組織犯罪処罰法の違反で実刑を免れました。(東京都Hさん)

この事件は、Hさんが無登録で高利の貸金業を営んだことにより、貸金業法、出資法、組織犯罪処罰法の違反に問われ、逮捕後、長期間にわたり勾留された事件です。Hさんと暴力団との関わりはなかったものの、他人名義の振込先を利用し返金させるなど、3年近くに渡り多額の利益を得ていました。

ある時、暴力団から口座を買い受けたところ、その暴力団員が別件で逮捕されたことがきっかけで、この事件が発覚し、Hさんとその従業員が逮捕されました。
Hさんの事案は、計画的、巧妙であり、常習的であると判断されて厳しい判決になることが多いのが現状です。
本件の場合、無登録で高利の貸金業を営むのですから、お金を貸した相手(債務者、利用者)から返済の元金や利息をHさんの指定する預金口座に振り込ませるに当たって、自分名義の口座に振り込ませる訳がありません。結局、事前に口座屋といわれる者をさがしその口座屋から他人名義の口座を買い取ったりするのです。
そして、お金を貸した相手とトラブルが起こったり、そのほか口座の凍結など不審な状況があれば、すぐにその口座の使用を停止し捜査機関の目を逃れたりするようになりますので、計画的で巧妙悪質などといわれるのです。
しかも、貸金業は、一定の場所に連絡先を置き、数か月或いは数年間、自ら或いは従業員を使って営業することになりますので、どうしても反復・継続することになり、常習的犯行といわれ犯情(=量刑)が悪くなります。
また、貸金業法だけではなく、周辺の出資法や組織犯罪処罰法などが改正される都度といえるほど、刑罰が厳しくなって懲役刑のほかに罰金刑も一緒に求刑(併科)され、罰金の求刑額も高額になっています。

このような状況の中で、Hさんを心配されたご家族の方からご相談を受け、当事務所で受任することになりました。
そこで早速、貸金業法違反等に関する判例を、インターネット、弁護士会資料、判例検索システムなどから、膨大なデータを収集し、具体的事件に関する判決の量刑を分析したところ(これら事件の判決内容や情状、量刑等の一覧表を作りました)、予想どおり、特に近年に至り、貸金業法違反やこれに付随する出資法違反、組織犯罪処罰法違反について非常に厳しい判決がなされていることが判明しました。
判決でも、厳しい求刑を容認するかたちで、懲役にかなり高額の罰金も併科されるようになっていたのです。

今回のケースでは、このまま放置すると実刑になってしまう可能性がありました。
そこで当事務所では、Hさんが高利で貸し付けた相手(債務者、利用者)に対し、1件1件謝罪し、高利で受け取った利息を返金するという対応をとりました。
相手の方々の中には、知らない人からの電話を受けようとしない人が多く,なかなか連絡が取れない方も多かったのですが、検察官時代の経験を生かし、また、知恵を絞って何とか起訴された事件の10名前後の相手方全員と連絡をとり、それぞれの相手方に弁償して嘆願書にも署名をいただくことに成功しました。
判決では、Hさんが弁償に努力したことが裁判所からも評価され、執行猶予を得ることができました
ただ、判決で定められた罰金は、その全額を検察庁に納付しないと、せっかく執行猶予の判決が得られても労役場留置となってしまい、執行猶予の恩典の意味が薄まってしまうことを弁論で強調し、求刑より数百万円を減額した判決を得ることができました。
さらに、労役場留置の1日あたりの罰金換算額も通常考えられている1日当たりの額である5000円の4倍にしてもらうことができ、通常どおりの換算期間の4分の1の期間で労役に服せばよいことになりました。

いずれにしても、無登録で高利の貸金業を営んだ場合、厳しい処罰を受けること、特に、初犯のため執行猶予が得られても、併科された高額な罰金を全額納付できない場合は、労役場留置という実刑に服するにひとしい結果になってしまいます。
犯罪によっておいしい生活をしても、その後の結果から考えると絶対に割に合わないことを銘記して欲しいと思います。

賃金業法量刑表はコチラ

 

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

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