危険運転致傷(赤色信号無視)の罪名で起訴されたが,弁護の結果,自動車運転 過失傷害に変更され,執行猶予を獲得した事例

ひき逃げの事案

危険運転致傷(赤色信号無視)の罪名で起訴されたが,弁護の結果,

自動車運転過失傷害に変更され,執行猶予を獲得した事例

【事案の概要】

依頼者が,普通乗用自動車で交差点を直進進行中,折から右折してきた普通乗用自動車と衝突し,相手が全治2週間程度の怪我を負い,また依頼者は,警察や救急車を呼ぶことなく,現場から立ち去ってしまった事案。

依頼者は,捜査機関に「交差点に進入する際に最後の見た信号の色は赤だった(赤色信号を無視した)」旨の意に沿わない自白調書や実況見分調書を作成され,事故から1年以上経過し,「危険運転致傷(赤色信号無視),道路交通法違反(ひき逃げ)」の罪名で起訴された段階で,当事務所にご来所されました。

相手方の怪我の程度は大きくないものの,道路交通法違反(ひき逃げ)も付いているので,危険運転致傷について,そのまま自白事件としてしまっては,相当程度,実刑になる可能性もある事案でした。

【経過・結果】…執行猶予処分

弁護士らが,改めて依頼者に信号の色について記憶を確認すると,「交差点に進入する際に最後に見た信号の色はあくまで『黄色』であった」という回答でした。そこで,赤色信号無視を前提とした示談交渉や嘆願書取得などにはあえて動かず,まず,検察官から訴訟記録の開示を待ち,客観的な事実を確認してから弁護方針を決定することとしました。

弁護士らが開示された記録を精査すると,相手車両の同乗者が,「右折レーンで右折待ちをしていて,信号が黄色に変わり対向車線の車が交差点から離れていたので,運転者に右折するよう指示を出した。」と述べていることに気付きました。弁護士らとしては,少なくとも上記同乗者が右折矢印の表示を確認してから右折を始めた旨を述べていないことから,依頼者が最後に見た信号の色は「黄色」であり,赤色信号を無視していない可能性が高いと考えました。

そこで,弁護士らが依頼者を伴って事故現場に行き,改めて依頼者の主張とおりに見分,現場を録画し,弁護士らが事務所に戻って現場で得たデータを基に計算をしたところ,相手車両の同乗者の言い分を前提とすれば,依頼者が最後の見た信号が「黄色」であった可能性が極めてという結果を得ました。これにより,弁護士らは,依頼者と相談の上,公判では,危険運転致傷(赤色信号無視)部分を争うという弁護方針を決定しました。

弁護士らは,第1回公判期日で危険運転致傷罪の成立を争う旨を述べ,その後,相手方車両の運転手の証人尋問をすることとなりましたが,同運転手が,証人尋問期日の直前に,「捜査段階で話したことが記憶とおりであるか自信がない。」と述べ始め,急遽,検察官は,危険運転致傷(赤色信号無視)で裁判を続けることを諦め,自動車運転過失傷害(ただの交通事故)として裁判が続行することとなりました(訴因変更手続といいます。)。

その後,依頼者のお兄様にも情状証人として出廷していただいたこともあり,依頼者は無事に執行猶予を獲得しました。

【コメント】

捜査段階で,自白の調書を取られていたので,危険運転致傷を争うのは簡単ではない事案でしたが,依頼者からの丁寧な聞き取り,記録の精査,現場への訪問など「当り前のことを当たり前にした」ことが道を開いたのではないかと考えます。

当事務所では,手間を惜しむことなく,弁護人として「当り前のことを当たり前に」行います。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

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