覚醒剤の他人使用(再犯)で執行猶予判決を得られたケース

1 事案の概要

 30代の息子さん(仮名・田宮さん)を持つ両親からのご相談でした。
 田宮さんは、いわゆるデリバリーヘルスの女性を自宅に呼び、その女性に覚醒剤を塗布するという、覚醒剤を他人使用する方法で覚醒剤取締法違反事件を起こしてしまいました。また、自宅から大麻が発見されたため、覚醒剤取締法違反で逮捕された後、大麻取締法違反でも再逮捕をされ,両罪で起訴されてしまいました。なお田宮さんは十数年前にも覚醒剤取締法違反(自己使用)で逮捕され、執行猶予判決を受けていました。

2 弁護活動の経過・結果

(1)裁判の延期申請

 この件では、既に国選弁護人がついていましたが、田宮さんが起訴され、第1回公判日が決まった後で当事務所にご依頼いただきました。
 認めの事件では、第1回公判にて結審し、第2回公判で判決が言い渡されることが通常です。しかし、田宮さんの反省をできる限り、裁判所に示したいことから、弁護活動の準備時間を確保するために、被告人質問などの弁護側立証はすべて第2回公判で行いたい旨を裁判所に伝え、認められました。

 

(2)示談

 時間的に若干余裕ができた状態を利用し、すぐにデリバリーヘルスの女性に連絡をして示談を行いました。相手方にも代理人がつき、時間はかかりましたが、腰を据えた交渉をすることで宥恕(許す)文言付きの示談が成立しました。

 

(3)内省,被告人質問の準備

 本件を起こしてしまった理由について、薬物乱用者の手記を読んでいただくと同時に、弁護人とともに反省文を数度書き直していく過程で田宮さんは自己分析を進め、薬物を使用したくなる際の自らの傾向等内省を深めていきました。さらに、でき上がった反省文をベースに田宮さんの薬物と決別する決意が伝わる被告人質問にしたいと考え、接見を重ねて、田宮さんと入念な打ち合わせを行いました。

 田宮さんの反省の意思が裁判官に伝わったこともあり、第2回公判後に保釈請求が認められ、更には第3回公判にて、執行猶予判決をいただきました

 

(4)コメント

 覚醒剤自己使用の案件では、初犯であれば執行猶予判決を得られる可能性が高いものの、本件は、①覚醒剤の他人使用で、かつ大麻取締法違反でも起訴されていたこと、②十数年前に覚醒剤取締法違反で執行猶予判決を受けていた(及び数年前に不起訴になったとはいえ覚醒剤取締法違反の前歴があった)ことから実刑判決を受けてもおかしくない状況でした。

 当初からの獲得目標であった執行猶予判決を得るために、相手方と示談交渉を進めるとともに、再犯防止を徹底的に意識し、受任当初の段階から田宮さんに内省を深めていただくことで、遂に至った田宮さんの薬物との決別の決意を裁判官に如実に伝えるという弁護活動を行うことで結果を残すことができました。田宮さんと一緒に得ることができたこの判決を誇りに思っています。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

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