ネット上の誹謗中傷について

インターネットの誹謗中傷

本当は匿名ではないのですが,インターネットの匿名性を利用した特定の個人や会社に対する誹謗中傷が,近年社会問題となっています。誹謗中傷には,他人の悪口を言うだけではなく,根拠のない事実を言いふらすという意味も含まれています。

2021年には,SNS上での誹謗中傷により芸能人の女性が自殺した事件もきっかけとなり,刑事罰の厳罰化や,発信者情報の特定をより容易にするための法改正が進められています。

一方で,表現の自由は憲法で保障されており,個人や会社にとって不利益な情報や批判のすべてが誹謗中傷となるわけではありません。このような表現に対する厳罰化が,表現の自由を脅かすのではないかという指摘もあり,その境界は明確ではありません。

どのような書き込みが誹謗中傷にあたるかは,刑法に定められている要件が基準となり,刑事告訴や民事訴訟の場で個別に判断されることになります。行為の連続性や,投稿の内容の悪質性といったさまざまな要因によって刑罰や慰謝料の額は変わってきます。もちろん誹謗中傷の対象となっている人物の名前が伏せられているような場合でも,表現内容だけでなく前後の文脈から誹謗中傷にあたるか判断されます。

誹謗中傷の刑事罰

誹謗中傷が認められると以下のような刑罰に問われる可能性があります。

・名誉毀損罪

公然と事実を適示し,人の社会的評価を低下させるような書き込みをした場合に適用されます。刑罰は,「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と定められています。

・侮辱罪

事実を摘示しなくても,公然と人を侮辱する書き込みがなされた場合に適用されます。刑罰は,「拘留又は科料に処する」と定められています。

2022年現在,侮辱罪を厳罰化する改正案が議論されています。改正案では,「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」が追加,公訴時効が1年から3年に延長され,誹謗中傷の抑止効果が期待されています。改正法の対象となるのは,改正法施行後に書き込まれたものです。

名誉毀損罪と侮辱罪の違いは「事実の適示」があるか否かです。

例えば,「Aさんは浮気をしている。」という書き込みをした場合,浮気という事実の適示があるため名誉毀損が成立します。この事実の適示は,真実であっても根拠のない嘘であってもかまいません。

また,「Aさんはバカだ。」という書き込みをした場合には,具体的な事実の適示が無いので侮辱罪にあたることになります。

・脅迫罪

相手の生命・身体・自由・名誉・財産などに害を与えることを告げる書き込みがなされた場合に適用されます。刑罰は「2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処する」と定められています。

例えば,「〇〇市に住んでいるAを殺してほしい。」などと個人情報を書き込んだ場合です。また,ブログに連続して「死ね」と書き込んだ人物に脅迫罪が認められた判例もあります。

・偽計業務妨害罪

偽計業務妨害は虚偽の風説の流布や偽計を用いて,人の信用を毀損し,その業務を妨害した場合に適用されます。

例えば,「○○食品の商品に虫が入っていた。」などと嘘を書いた場合です。また,いわゆる「バイトテロ」と呼ばれる不適切動画も,偽計業務妨害罪に問われることがあります。

民事上の責任

民事訴訟が適された場合には損害賠償の請求をされることがあります。

名誉毀損による精神的苦痛に対する民事訴訟では,公然性や事実の適示の有無,社会的名誉の低下の度合い等を裁判官が検討し賠償額を決定することになります。

また,自ら誹謗中傷の書き込みをした場合でなくても,書き込みを拡散させる行為(Twitter上のリツイート)をした人物に損害賠償が認められた判例があります。

 誹謗中傷での損害賠償では,事案によっては以下のように100万円を超えるケースもあります。相手方が企業や事業主であれば,さらに高額になることが予想されます。

加害者に不法行為が認められると,慰謝料に情報開示請求の費用や弁護士費用も加算されることになります。

・ブログに差別的記事を投稿した人物に130万の損害賠償が認められた事案。

→名誉毀損にはあたらないとされながらも,ヘイトスピーチにおける差別は違法であるとして,高額の慰謝料が認められました。

・SNS上で被害者になりすまし,第三者や被害者に誹謗中傷を行っていた人物に約130万円の損害賠償が認められた事案。

→なりすまし行為によって名誉権や肖像権が侵害されたとして高額の支払いが命じられました。

逮捕されたら?

インターネット上の誹謗中傷は社会的注目度の高い事件と言えます。

逮捕された場合には,長期にわたる勾留や,家宅捜索,実名報道,起訴され前科がついてしまう恐れがあります。そのような状況になれば,会社や学校など社会生活に大きな影響を与えることは避けられません。

逮捕や,長期の勾留,前科がつくことを防ぐためには,早期に弁護士に相談することが重要です。弁護士は警察や検察へ書面や面談を通じた働きかけや,被害者との示談交渉など被疑者やその家族のために動くことができます。刑事事件について専門の知識や経験を持った弁護士が,被疑者とその家族に寄り添い,勾留や起訴を回避するために尽力します。

被害者の弁護

当事務所では,誹謗中傷の被害を受けている方の代理人活動も行っています。

刑事告訴や民事訴訟の提起,相手方との示談交渉,ホームページやSNS等の運営会社への削除依頼,発信者情報開示請求など被害者の方の要望に沿った弁護活動を行うことができます。相談や依頼をする際にはスクリーンショット等で,誹謗中傷の証拠を保全しておくことも重要です。

おわりに

どのような書き込みが刑罰や損害賠償請求の対象となってしまうのか一般の方は判断のつかない場合が多いでしょう。過去の投稿が誹謗中傷なのではないかと不安の方,ご家族が逮捕されてしまった方,被害を受けている方のご相談をお待ちしております。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

刑事事件について高い専門性とノウハウを有した6名の弁護士が在籍する法律事務所です。

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