目次
ファスト映画とは
ファスト映画を投稿した男女3人が著作権法違反で逮捕されました。
ファスト映画とは映画の本編を10分前後に編集し、ストーリーを紹介する動画のことをいいます。短時間で映画のストーリーを知ることのできる手軽さが人気を博していた反面、映画のネタバレを無断で流していること等が問題となっていました。
ファスト映画の違法性
ファスト映画は、原作映画を利用した動画の「作成」、自らのコンテンツとして動画サイト等で「公開」するという点において、著作権上の問題があります。
*同一性保持権
同一性保持権とは、著作物やそのタイトルについて、著作者の意に反する改変を行われない権利です。原著作物である映画を勝手に編集し短縮したり、字幕をつけたりする行為は、同一性保持権の侵害となることがあります。
*翻案権
著作者は、著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化する権利を専有します。
翻案権とは、原著作物に依拠し、翻訳・翻案などして二次的著作物を創作する権利です。具体的には、小説を映画化する行為、楽曲を編曲する行為などがこれにあたります。
映画の著作権者以外が翻案をすることは認められていないため、編集を伴うファスト映画の製作は映画の著作権者の翻案権を侵害することがあります。
*公衆送信権
著作者は、その著作物について公衆送信を行う権利を専有します。
テレビラジオ等の有線放送、インターネット上で利用者のアクセスに応じ公開する自動公衆送信も公衆送信となります。
無許可で著作物をインターネット上にアップロードする行為は、映画の著作権者の公衆送信権を侵害することがあります。
*複製権
著作者はその著作物を複製する権利を専有します。
複製権は、著作物を有形的に再製する権利であり、具体的には、ポスターをコピー機でコピーする行為も複製に該当します。個人または家庭内で著作物を複製する行為は私的複製として、著作権を侵害しないとされています。
無許可で映画を複製し、インターネット上にアップロードする行為は、私的複製にはあたらないため映画の著作権者の複製権を侵害することがあります。
引用
著作権法では、一定の要件を満たした「引用」は著作権を侵害しないとしています。具体的には、「公正な慣行に合致すること」、「報道,批評,研究などの引用の目的上正当な範囲内であること」といった要件です。
ストーリーの解説やネタバレのために映画を利用し、自らのコンテンツとして公開する行為は、引用の「公正な慣行に合致」せず、「正当な範囲内」を逸脱し引用にあたらない場合があります。
著作権法違反の責任
著作権法に違反し著作権を侵害した場合、刑事と民事の両方で責任を問われることがあります。
著作権法違反の場合には、刑罰では「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金,またはその両方」が課されることが定められています。著作権法は、非親告罪であるため、実際に著作権の侵害の被害を受けている被害者が警察に告発することが無くても、罪に問われることがあります。
著作権者から損害賠償を求める民事訴訟を提起される場合もあります。民事訴訟において求められる損害賠償の額は、ファスト映画を公開したことで得た利益の額となります。
逮捕を防ぐには?
今回ファスト映画の製作者が逮捕され、大々的に報道されたことの背景には、ファスト映画の被害額が約950億円とも推定され、社会的影響が大きいこともあると考えられます。
今後、著作権者側の告発が積極的に行われることや、警察の捜査が活発に行われることも予想されます。
逮捕された場合には、長期にわたる勾留や、実名報道、起訴され前科がついてしまう恐れがあります。そのような状況になれば、社会生活に大きな影響を与えることは避けられません。
逮捕や、長期の勾留、前科がつくことを防ぐためには、早期に弁護士に相談することが重要です。弁護士は警察や検察へ書面や面談を通じた働きかけや、被害者との示談交渉など被疑者やその家族のために動くことができます。
専門の知識を持った弁護士は,被疑者とその家族に寄り添い,勾留や起訴を回避するために尽力します。
著作権違反をしてしまった方、ご家族が逮捕されてしまった方、被害を受けている方のご相談をお待ちしております。