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上告とは
控訴の結果に不満がある場合、まだ上告という手段が残されています。しかしながら、上告理由は、原則として、法令違反、判例違反に限られており、控訴理由よりも限定されています。
控訴と上告には、上訴理由の違いのほか、①審理する裁判所(控訴は高等裁判所が審理し、上告は最高裁判所が審理します。)、②弁論の有無・頻度(控訴審では少なくとも1回は弁論が開かれ、被告人が出廷し、被告人質問を行うこともできますが、法律審である上告審では書面審理で完結することがほとんどであり、弁論が開かれることはめったにありません。)に大きな違いがあります。
上告の申立
刑事事件の上告は、憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤があること、又は最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと(判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。)という理由が必要です。
このように上告理由は極めて限定されているため、上告は棄却されることが多くなっています。
ただし、上告裁判所は、「判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。」「刑の量定が甚しく不当であること。」「判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。」「再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。」「判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。」にも原判決を破棄することができます。これらは、最高裁判所が判断の必要性があるとしたときに判断されることになります(職権破棄事由と呼ばれることがあります。)。
上告の棄却と棄却されなかった場合の流れ
上告が棄却された場合は、原判決が確定します。
他方で、上告を棄却しないときは、最高裁判所は原判決を破棄し、原裁判所へ差し戻して再び審理させます(自ら判決を言渡す場合もあります。)。
差し戻し審での判決に不服がある場合には、再度上訴することができます。
このため、差し戻しが何度も繰り返されることもあります。
上告裁判所が判決を言い渡すか、上訴がされなかったときに、判決が確定し、刑事裁判が終わることになります。
上告で弁護士のできること
上告審では、弁論が開かれることは極めて稀であり、書面審理で完結することがほとんどです。したがって、どれほど充実した内容の上告趣意書を提出できるかどうかが、上告審の判決内容を大きく左右します。
弁護士は、第一審及び控訴審の刑事記録を丹念に読み込み、上告理由を探し、上告趣意書を作成します。
また、上告審であっても、事実認定に関して疎明資料があれば、追加提出することができます。必要に応じて、学者の意見書や専門家の鑑定書を入手し、追加提出することも考えられます。
弁護士は、疎明資料の追加提出の要否等も総合的に検討し、充実した内容の上告趣意書の作成・提出を目指します。
刑事事件で上告をお考えの方は、当事務所までお気軽にご相談ください。