売春防止法とは?立ちんぼ等の売春行為の罰則について弁護士が解説

売春防止法とは

近年、ホストが売掛金を回収するために、客の女性に対して、脅迫的な言葉を投げかけて無理矢理売春をさせ、売春防止法違反で逮捕されるなど、売春防止法違反の逮捕事例が多数報告されています。
刑法に定められている傷害罪や詐欺罪などと違って、そもそも売春防止法がどのような法律なのか、どのような行為が売春防止法違反として処罰対象になるのかは、あまり知られていないものと思います。

 

売春とは

「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいいます(売春防止法2条)。
売春防止法は、第3条で、「何人も、売春をし、又はその相手方となってはならない。」と定めています。つまり、法律上は、売春をすることも、売春の相手方となること(=買春をすること)も禁止されているのです。
ですが、売春をすること、買春をすることに対する罰則は定められていないので、単に売春をした、買春をしたというだけでは刑事処罰を受けることはありません。

 

売春防止法違反の罰則

前述のように売春・買春をしただけでは逮捕されることはありません。
しかし、以下のようなケースでは罰則が定められているため、逮捕されたり、刑事処罰を受けたりするおそれがあります。

勧誘

第5条 売春をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者は、六月以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
 1号 公衆の目にふれるような方法で、人を売春の相手方となるように勧誘すること。
 2号 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
 3号 公衆の目にふれるような方法で客待ちをし、又は広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。

売春の勧誘とは、売春行為に他人を勧誘した場合などを指します。例えば、立ちんぼ行為や、SNSで不特定の相手方に対し売春行為の相手を募集した場合などが処罰される可能性があります。

周旋等

第6条
 1項 売春の周旋をした者は、二年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
 2項 売春の周旋をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者の処罰も、前項と同様とする。
  1号 人を売春の相手方となるように勧誘すること。
  2号 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
  3号 広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。

売春の周旋とは、売春の仲介をした場合などに成立する犯罪です。実際に売春行為があったかどうかは問われず、売春を斡旋する行為があった時点で犯罪として成立することになります。

困惑等による売春

第7条 人を欺き、若しくは困惑させてこれに売春をさせ、又は親族関係による影響力を利用して人に売春をさせた者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
 2項 人を脅迫し、又は人に暴行を加えてこれに売春をさせた者は、三年以下の懲役又は三年以下の懲役及び十万円以下の罰金に処する。
 3項 前二項の未遂罪は、罰する。

ホストが、売掛金の支払いを抱えた女性に対し、「預かっている私物を返してほしければ、売春をしろ。」、「借金のことを親や会社にばらされたくなければ、身体を売って金を稼いでこい。」などと言って、女性に売春をさせた場合、売春防止法7条の困惑等による売春にあたる可能性があります。
未遂も処罰対象となる点で、上記に記載した第5条や第6条とは異なっています。

 

逮捕されたら

逮捕された場合、検察官による最終処分(起訴・不起訴を決める処分。終局処分と呼ぶことがあります。)まで最大23日間、身柄拘束されることがあります。その流れは以下のとおりです。

逮捕から身柄送致   最大48時間 
身柄送致から勾留請求 最大24時間 
勾留         10日~20日間
起訴後勾留      期限の定めなし(最長判決が出るまで)

逮捕から勾留請求まで

基本的には逮捕された警察署で取り調べを受けることになります。逮捕から48時間以内に事件と身柄が検察庁に送致されます。検察官の取り調べで、さらなる身柄拘束の必要があると判断した場合は、検察官は、裁判官に被疑者を勾留するように請求します(勾留請求)。
また、逮捕から勾留が確定するまでの間(最大で72時間)は、弁護士以外の面会は認められない場合がほとんどです。

勾留

勾留とは、逮捕に引き続き身柄を拘束する処分のことを言います。
勾留するには、「罪を犯したことを疑うに足る相当な理由があること」に加え、以下の3点のうち、ひとつ以上該当することが必要となります。

・決まった住所がないこと
・証拠を隠滅すると疑うに足る相当の理由があること
・被疑者が逃亡すると疑うに足る相当の理由があること

検察官の勾留請求が裁判所に認められ勾留決定が出された場合には、最大で10日間の身体拘束を受けることになります。さらに、捜査が必要と検察官が判断した場合にはさらに10日間勾留が延長されることがあり、最大で20日間勾留される可能性があります。

検察官による最終処分

検察官はこの勾留期間に取り調べの内容や証拠を審査し、起訴か不起訴かを判断します。起訴には、公判請求(正式裁判を請求すること)か略式請求(裁判所に書類だけを送付して罰金刑を請求すること)の2種があります。
略式請求の場合を含め、一旦、起訴されれば、ほぼ確実に刑事罰を受けることになります。
不起訴となれば前科がつくことはありません。もし、被疑者が犯行を認めていたしても、犯行を立証するに足る証拠がない、情状(被疑者の性格・年齢・境遇・行為の動機や目的など)を鑑みて処罰の必要がないなどの理由から検察官が不起訴(嫌疑不十分・起訴猶予)の判断をする場合があります。

 

売春防止法違反の弁護活動

女性の場合、立ちんぼ行為をした際に、巡回していた私服警察官に対し、有償での性行為を持ちかけてしまい、現行犯逮捕されるという事例が多数報告されています。
男性の場合、売春をする女性を紹介するインターネットサイトや掲示板を運営して、買春を希望する男性を募った事例、金を貸した女性に対し、「売春をしてすぐにでも借金を返済しろ。」などと述べて売春をさせた事例などで、(通常)逮捕される事例が報告されています。

いずれの場合であっても、逮捕された場合には、すぐに弁護士を呼び、捜査機関の取調べに対する防御方針を検討することが必要です。

弁護士は、警察署にある留置施設で身柄を拘束されている被疑者の方に会いに行き(接見といいます。)、逮捕の経緯や事件の真相等について、詳しく話を聴きます。
その後、弁護士は、被疑者の方から聴いた話や新しく収集した情報を元に、検察庁や裁判所に対し勾留をしないよう意見書を提出したり、勾留の裁判に対する不服申立てをしたり(準抗告といいます。)、早期に身柄が解放されるよう力を尽くします。

売春防止法に違反する行為をしてしまったとお悩みの方、売春防止法違反で逮捕されてしまった方のご家族様など、売春防止法に関するご不安を抱えていらっしゃる方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

 

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

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