どのような場合に文書偽造罪に問われる?刑事事件に詳しい弁護士が解説

なぜ文書偽造罪は存在するか

文書は、社会生活の基盤として重要な機能を有しています。勝手に文書が作成された場合は、文書そのものの社会的信頼が揺るぎます。
文書においては、「その文書に何が書いてあるか」も重要ですが、「その文書を誰が書いたと読み取れるか」が、より重要になります。なぜならば、「誰が書いたか」ということこそが、文書の信用性そのものに影響を与えるからです(市長が発した公文書と電柱に貼ってあるチラシとの信用性の違いは明らかなはずです)。この「その文書を書いたと読み取れる主体」を名義人といいます。
そこで、刑法は、名義人の主体によって、公文書と私文書に分け、処罰規定を措いています。勿論、公文書の方が、社会的信用が高いので、刑罰も重くなります。また、公文書の場合、信用性が高いので、公務員が内容虚偽の公文書を作成した場合も処罰対象になります。

 

公文書偽造罪

公文書偽造とは、国や地方公共団体の作成する公文書を偽造・変造する行為です。
公文書偽造は被害の主体が公務所および公務員です。
犯罪の事実を知った時には告訴・告発を義務付けられているため、公文書偽造が明るみになると、刑事事件化は避けられません。

「公文書」とは

公文書とは国や地方公共団体、公務員などによって作成する文書です。印鑑が押してあるものについては有印公文書となります。
例:公証人が作成した契約書・遺言
  運転免許証
  国民健康保険証
  住民票・戸籍謄本・印鑑証明書

公文書の「偽造」とは

「偽造」とは、作成権限を持たない者が、作成権限を持つ者の名義を利用して文書を作成することです。
例えば、偽物の運転免許証を作成する場合などがこれにあたります。

公文書の「変造」とは

「変造」とは、もともと存在している文書について内容を改変することです。
例えば、交付された免許証の有効期限を書き換えるなどの行為がこれにあたります。

公文書偽造罪の刑罰

行使する目的で公務員の印章や署名を偽造した場合(有印公文書)

法定刑は1年以上10年以下の拘禁刑です。罰金刑はありません。
同じ公文書でも、公務所や公務員の署名や印章を偽造して公文書を作成した場合罪が重くなります。

また、偽造された有印公文書を行使した場合も同じ刑罰の重さになります。
「行使」とは、他に交付したり、見せたりすることです。

公務員が作成すべき文書を偽造した場合(無印公文書)

公文書でも、公務所や公務員の署名・印象の偽造を行なっていなければ3年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金となります。
※これに対し、公務員が内容虚偽の公文書を作成した場合、虚偽公文書作成罪となります。

 

私文書偽造罪

私文書偽造罪は、公的な立場にない人間が作成した文書を偽造・変造する行為です。

「私文書」とは

公的な立場にない一般の私人が作成した書類で、権利、義務または事実証明に関する文書または図画をいいます。法人が作成する文書も私文書に含まれます。
遺言書・履歴書・契約書・証明書・大学の卒業証明証などはすべて私文書です。

私文書偽造罪の刑罰

行使する目的で印章や署名を偽造した場合(有印私文書)

法定刑は3か月以上5年以下の拘禁刑です。罰金刑はありません。
署名や印章を偽造して私文書を作成した場合罪が重くなります。

文書を偽造した場合(無印私文書)

署名・印象の偽造を行なっていない場合は1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金となります。

 

逮捕された場合の流れ

逮捕された場合、検察官による最終処分(起訴・不起訴を決める処分)まで最大23日間、身柄拘束されることがあります。その流れは以下のとおりです。

逮捕から身柄送致   最大48時間 
身柄送致から勾留請求 最大24時間 
勾留         10日~20日間
起訴後勾留      期限の定めなし(最長判決が出るまで)

逮捕から勾留請求まで

基本的には逮捕された警察署で取り調べを受けることになります。逮捕から48時間以内に事件と身柄が検察庁に送致されます。検察官の取り調べで、さらなる身柄拘束の必要があると判断した場合は、検察官は、裁判官に被疑者を勾留するように請求します(勾留請求)。
また、逮捕から勾留が確定するまでの間(最大で72時間)は、弁護士以外の面会は認められない場合がほとんどです。

勾留

勾留とは、逮捕に引き続き身柄を拘束する処分のことを言います。
勾留するには、「罪を犯したことを疑うに足る相当な理由があること」に加え、以下の3点のうち、ひとつ以上該当することが必要となります。

・決まった住所がないこと
・証拠を隠滅すると疑うに足る相当の理由があること
・被疑者が逃亡すると疑うに足る相当の理由があること

検察官の勾留請求が裁判所に認められ勾留決定が出された場合には、最大で10日間の身体拘束を受けることになります。さらに、捜査が必要と検察官が判断した場合にはさらに10日間勾留が延長されることがあり、最大で20日間勾留される可能性があります。

検察官による最終処分

検察官はこの勾留期間に取り調べの内容や証拠を審査し、起訴か不起訴かを判断します。公然わいせつ事件においては、起訴につき、公判請求(正式裁判の請求)か略式請求(裁判所に書類だけ送付しての罰金刑の請求)の2種があります。
略式請求の場合を含め、一旦、起訴されれば、ほぼ確実に刑事罰を受けることになります。
不起訴となれば前科がつくことはありません。もし、被疑者が犯行を認めていたしても、犯行を立証するに足る証拠がない、情状(被疑者の性格・年齢・境遇・行為の動機や目的など)を鑑みて処罰の必要がないなどの理由から検察官が不起訴の判断をする場合があります。

 

文書偽造罪の弁護方針

有印私文書偽造罪や同行使罪だけで罪になることはあまり多くなく、詐欺罪などより重い犯罪とセットで調べられることが多いです。
まずは、本罪(上の例で言えば詐欺罪)が何かを見極め、示談が必要であるのであれば、示談に動くなど、そのケースにふさわしい弁護対応が必要となります。

 

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

刑事事件について高い専門性とノウハウを有した6名の弁護士が在籍する法律事務所です。

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