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悪質ホスト問題
現在、国会でも取り上げられるなど巷を騒がしている悪質ホスト問題。勿論、すべてのホストが「悪質」ではないですが、「悪質ホスト問題」の本質は、到底払えない金額を客に使わせ、売掛金として担当ホストに回収を委ねていることにあります。
売掛金とは
ホストクラブでは、ホストが女性客に高額な飲食代などを請求して借金を負わせ、後払いにして、期日までに支払ってもらうという「売掛金」制度がとられている店舗があります。また、「青伝票」といって、何も明細が示すことなく、請求額だけ示されることがあります。
そして、売掛金が支払えない場合には、売春等、いわゆる「夜の商売」をそそのかすケースが問題となっています。
この制度では、客が期日までに振り込みができなかった場合にはホストがその売掛金を負担しなければいけないケースが多いです。そのため、ホストがあの手この手(場合によっては疑似恋愛感情を使って)で、客から回収しようとしていることが現状です。
客が売掛金を払わないとどうなる?
売掛金を支払わなかった場合には、刑事罰を受けたり民事で請求を受ける可能性があります。
詐欺罪
詐欺罪が成立するためには、人を欺いて、錯誤に陥れ、財物を交付させ、もしくは財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させる行為が必要となります。
売掛金について、はじめから払うつもりがなく代金を踏み倒してしまった場合には、詐欺罪に問われる可能性があります。
もっとも、支払うつもりであったのに、資金が足りないなどの理由で支払えなくなってしまった場合は詐欺罪にはあたりません。
民事請求
売掛金を支払わない場合には、民事訴訟や支払督促などで請求をされる可能性があります。
売掛金に加え、支払いが遅れた期間の遅延損害金や訴訟費用なども請求される場合もあります。
請求が認められ、それでも支払わない場合は強制執行により財産が差押えられてしまいます。
売掛金を払わなくても良いケース
違法金利
店が極めて高い金利を課しているようなケースでは、出資法違反に当たるとして売掛金を無効にできる場合があります。
利息が年利109.5%(1日あたり0.3%、1ヶ月あたり9.125%)を越えている場合は出資法違反となり契約は無効となります。
また、利息が年利109.5%を越えていなくても、以下の利率を越えている場合は、越えた部分の利息の支払いは不要となります。
元本の額が10万円未満の場合は年20%
元本の額が10万円以上100万円未満の場合は年18%
元本の額が100万円以上の場合は年15%
未成年
ホストクラブは通常、未成年者(18歳未満)の入店が禁止されていますが、客が未成年者の場合、保護者など法定代理人の同意のない契約は取り消すことが出来ます。
ただ未成年者が成年者と偽って契約を結んだ場合には、契約を取り消すことが出来ません。偽の身分証などで成年と偽って入店したケースでは取消が認められない場合も考えられます。
詐欺・脅迫
ホストから詐欺や脅迫を受けて、飲食物を注文した場合、契約を取り消すことができます。
消費者契約法
先日、国会でも取り上げられましたが、いわゆるデート商法(支払わなければ関係を解消するなど述べるなどして支払わせること)であれば、消費者契約法上契約を無効にできます。
ただ、これを主張するには、証拠が明確に残っている必要があります。
【参考条文】(消費者契約法4条3項6号)
消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
六 当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、当該消費者契約の締結について勧誘を行う者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該勧誘を行う者も当該消費者に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、当該消費者契約を締結しなければ当該勧誘を行う者との関係が破綻することになる旨を告げること。
暴利行為
1回で使った費用があまりに高額である場合、暴利行為として契約を無効にすることも可能ですが、無効になった判例(特に回収業者からの請求(東京簡易裁判所平成24年10月24日判決)や暴力的回収があった事例(東京地方裁判所平成24年7月5日判決))と無効にならなかった事例とそれぞれあります。
一般には、契約自由の原則があるので、「ただ高い」ことを理由に無効になることは少ないようです。
消滅時効
消滅時効とは、一定期間権利行使がされない場合に権利を消滅させるというものです。
時効は「債権者が権利を行使できることを知ったときから5年」とされているので、原則として5年で消滅時効が完成することになります。
弁護士ができること
現在、捜査機関もやっと取り締まりに本腰になっており、組織犯罪処罰法や風営法等でホストやホストクラブ経営者を処罰し始めておりますが、個人的には、このような事後的対応だけでなく、ホストクラブの売掛金問題は、事前に法令やガイドライン等で対応しなければならないものであると考えています。
現在、規制のための法令制定の機運も高まっていますが、現段階では制定できていないのが現状です。
ですので、ホストクラブの売掛金の支払いで日常生活に支障が出ている場合、どのように対処すべきか(民事上で交渉・訴訟、行政への申告、刑事事件化などケースバイケースです。)弁護士に相談することをおすすめします。
前述のように取り消すことが出来る可能性も大いにありますので、是非、気軽にご相談ください。