占有離脱物横領罪で逮捕される?事例・罰則について弁護士が解説

占有離脱物横領罪とは

占有離脱物横領罪(遺失物横領罪)とは、遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領したときに成立します。
占有離脱物とは、占有者の意思に基づかずにその占有を離れたもので、誰の占有にも属さないものを指します。遺失物、漂流物はその例示です。

占有離脱物横領罪の刑罰

刑罰は「1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料」です。

本罪は横領罪に区分され、横領は不法領得の意思(権利者を排除して他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従い利用、処分する意思)を持って占有離脱物を自己の支配内に置けば成立します。
不法領得の意思がなく占有離脱物を取得してしまった場合においては、隠匿するなど不法領得の意思が発現する行為があれば既遂となります。

占有離脱物横領罪の具体例

占有離脱物横領罪の具体的なケースとしては、以下のような場合があります。

・落とし物の財布を警察に届けず自分のものにした場合

・おつりを多くもらったことを気づいていたにもかかわらず指摘せず自分のものにした場合

・セルフレジに置き忘れられていたおつりを持ち帰った場合

・何日も駐輪場に放置されていた自転車を自分のものにした場合

・誤送金されたことを知りながらお金を横領した場合

・誤配送されたことを知りながら郵便物を着服した場合

 

一方で、誤配送された郵便物を誤配送と気付かずに捨ててしまった場合や使ってしまった場合などでは、不法領得の意思がないため占有離脱物横領罪には当たりません。
交番に届けるため一時的に所持していたなどの場合も不法領得の意思がないため同様です。

他罪との違い

窃盗罪

窃盗罪との違いは、他人の占有物を奪っているか否かです。
他人の占有状態にあるものを奪った場合は窃盗罪に当たります。占有を離れているものを自分のものにした場合には遺失物横領罪に当たります。

占有離脱物横領罪で逮捕される?

占有離脱物横領罪で逮捕されることは極めて少ないです。
占有離脱物横領罪は、窃盗罪のように、明確に誰かの占有を侵害するわけではなく、誘惑的要素も強いため、比較的軽微な犯罪とされており、法定刑が軽くなっています。(窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円の罰金」である一方、占有離脱物の法定刑は、「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料」となっています。)また、被害額も小さいことが多いです。こういった事情から、犯罪の証拠を隠してしまうおそれや、処罰を恐れて逃げてしまうおそれがないと判断されやすく、逮捕をして身柄を拘束したうえで捜査をされることは、稀と言えます。
占有離脱物横領罪の被疑者になってしまった場合、在宅事件(逮捕されずに、必要に応じて捜査機関に赴き、取調べなどを受ける方法で、捜査が進んでいく事件のことをいいます。)で進むことが多いと言えるでしょう。

占有離脱物横領罪の事例

2023年4月9日、福岡県において、放置されていたシェアサイクルを無断使用していたとして、住居不定無職の人が、占有離脱物横領罪で逮捕されました。最近の裁判例においても、放置自転車を無断使用してしまったとして占有離脱物横領罪に問われている例が散見されます。

 

占有離脱物横領罪の法定刑が比較的軽いとはいえ、たとえ少額の罰金であっても、前科がついてしまいます。前科がつくと、日常生活に様々な支障が生じるおそれがあります。
占有離脱物横領罪に当たる行為をしてしまったのではないか、前科をつけたくないなど、ご不安がある方は、ぜひ弁護士に相談してみてください。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

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