前科とは何ですか?

前科とは何ですか?

前科とはなにか

 
実は、『前科』という言葉は法律上の用語ではなく、刑事事件の確定判決で刑の言い渡しを受けたことを、一般に指す用語として用いられます。
前科には、『法律上の前科』と『事実上の前科』というふたつの意味があります。
刑事事件の判決で前科が付くと、本籍地の地方自治体が管理する犯罪人名簿に記載が行われます。
これが法律上の前科です。
執行猶予判決を下された場合は、執行猶予期間を問題なく過ごせば懲役刑の言い渡しが効力を失うため、前科はなくなります。
実刑判決の場合も、刑法の規定によって刑期満了から10年間、罰金以上の刑に処されることなく過ごせば、同様に前科はなくなります。
一方、事実上の前科とは、前科調書に記載され、検察庁などに保存された前科のことを言います。
法律上の前科は前述のとおりなくなる場合がありますが、過去に刑事事件で有罪判決を受けたという歴史的事実は残り、消えることはありません。
日常用語として用いられる『前科』というのは、こちらを指しています。
前科の有無は、量刑の判断に大きく影響します。
同じ犯罪を犯したとしても、2回目以降に対する求刑、判決は初犯より重くなります。
前科調書を照合できるのは、犯歴事務規定13条に基づき、検察官ないし検察事務官に限られています。
 

前科は消えるのか

 
前述のとおり、事実上の前科については消えません。
前科調書は犯歴事務規定18条に基づき、犯罪人が死亡するまで保存されます。
法律上の前科については、記載される期間が刑法および恩赦法によって定められています。
罰金・拘留・科料の場合、刑の執行終了または執行の免除を得て5年間、罰金以上の刑に処せられず経過すれば、刑法34条2項により言い渡しが効力を失い、前科はなくなります。
死刑・懲役・禁錮といった重い刑の場合は、倍の10年の期間となっています。
前科がなくなるとともに、犯罪人名簿からも前科の記載が削除されます。
また、恩赦や特赦の場合も、恩赦法3条および5条に基づき、刑の言い渡しの効力が失われ、犯罪人名簿からの削除が行われます。
 

即決裁判の場合の取り扱い

 
期日が1日のみで行われるのが即決裁判です。
罰金刑以上の刑が科せられるため、通常裁判と同様に前科がつきます。
身柄事件(被疑者逮捕や勾留請求による身柄拘束を伴う事件)では、勾留の延長をせず、即決裁判を用いて罰金刑を請求する検事もいるようです。
示談の可能性のある刑事事件にもかかわらず、弁護士との打ち合わせを十分行わないまま、即決裁判に持ち込まれないよう注意する必要があります。
過去には、弁護士の働きかけによって勾留期限の延長を行い、その間に示談を成立させ、不起訴処分にしたという刑事事件の事例があります。
拘束される不利益を気にして検事の甘言に乗らないよう、理解をしておく必要があるでしょう。
また、交渉は弁護士が担うので、担当の弁護士との話し合いを念入りに行い、自分の意向をはっきりと伝えることが大切です。
満員電車内での痴漢事件のように、勘違いによる冤罪が疑われる刑事事件の場合、被害者の供述の信ぴょう性の検証などによって拘束期間が長引くことがあります。
身体拘束の長期化による不利益の方が損失として大きい場合には、即決裁判で終わらせるという考え方もできます。
しかし、どんな刑であれ、前科として一生残ることはちゃんと理解しておく必要があります。
よほどのことでない限り、前科を背負う以上に不利益な状況というものはありません。
それはあなた自身による犯罪であっても、身に覚えのない冤罪であっても同じです。
弁護士の助力を得て、適正な形で裁判や示談交渉を受けられるように、法律や手続きについてあらかじめ調べて知っておきましょう。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

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