家に警察が突然やってきたら?家宅捜索への対応を弁護士が解説

警察や検察が家宅捜索に入るまでの流れと捜索内容

警察や検察が家宅捜索に入る目的は、刑事事件の犯行の決め手となる証拠を入手するためです。家宅捜索が行われるタイミングは、刑事事件の捜査段階または既に刑事事件で起訴され公判が始まっている段階が考えられます。
警察や検察が家宅捜索を行うためには、「捜索差押許可状」が必要です。これは裁判所によって発行され、その内容には被疑者若しくは被告人の氏名と罪名、捜索すべき場所や物や身体、差し押える(押収する)べきもの、有効期限等が記載されています。当然ながら家宅捜索はこの内容によって行われるため、闇雲に捜索したり差し押えたりすることはありません。
捜索や差し押えられるものは、刑事事件の内容によって様々です。差し押えられたものは検証され、犯行を裏付けるための証拠品として裁判が終わるまで返還されない場合もありますが、刑事訴訟法で留置の必要のないものは被告事件の集結を待たないで還付しなければならないとされているため、必要の無くなった時点で返還されます。

 

家宅捜索について知っておくべきことと注意点

刑事事件の家宅捜索で、まれに事前に予告される場合もありますが、ある日突然やってくる場合が一般的です。これは事前に予告した場合、証拠隠滅や逃亡を図る可能性があるためです。捜索を行うためには、居住者やそれに代わる者の立会いが必要となります。被疑者若しくは被告人が立会いを求められるケースもあり、早朝など在宅の可能性が高い時間帯が多いとされています。まず捜索差押許可状を見せられ、数人の警察や検察が許可状に沿って捜索を始め、数時間程で終わる場合が多いとされています。
家宅捜索は強制捜査のため、拒否することができません。捜索を拒んだり警察や検察に対して抵抗するような行為を行ったりした場合、公務執行妨害となり逮捕される可能性もあります。突然の家宅捜索に困らないためにも、その前段階で弁護士と相談して対策を取るなど、しっかりと備えておく必要があります。

 

逮捕の可能性

また、捜索差押許可状と共に逮捕状を提示され、その場で逮捕されることもあります。
この場合、家族や同居人、大家などが捜索差押に立ち会い、本人はそのまま警察車両にて警察署に連行される場合と、家族等他に捜索差押に立ち会う人がいない場合は、本人が立ち会った後、捜索差押終了後に警察車両で連行される場合などがあります。

 

家宅捜索が行なわれる前に検討しておくべき対処法

家宅捜索は刑事事件の捜査がある程度進んだ段階で行われます。というのは、裁判所は簡単に捜索差押許可状を発付しないからです。捜査機関が裁判所に捜索差押許可状の発付を求めるには、「疎明資料」といって、その家屋・建物内に犯罪の証拠物件が存在する可能性が高いことを裏付ける捜査資料を提出することが必須となっています。裁判所は、疎明資料を検討した上で、その家屋・建物内に証拠物件が存する可能性があると判断して初めて、捜索差押許可状を発付します。
そのため家宅捜索以前に警察から任意同行や出頭を求められるなど、何かしらの予兆がある場合が多いでしょう。そこで行われる事情聴取への適切な対応や、犯行を認めている場合は被害者と示談しているかどうかによっても、家宅捜索の有無に影響が出てくるでしょう。前段階の対応次第では防げる可能性があることを知っておきましょう。
警察から任意の同行や出頭を求められた時点で弁護士に相談しておき、一定の条件を満たせば刑事事件の捜査段階での家宅捜索であっても、弁護士が立ち会える場合があります。また公判開始後の家宅捜索の場合は、弁護士には立ち会う権利があります。

家宅捜索の結果次第では現行犯逮捕となる場合もあります。もし刑事事件について自覚がある場合は、捜査が進んでいて決めてが見つかれば逮捕されるかもしれないことを理解しておきましょう。逮捕や裁判、被害者との示談等に向けて、焦らず対応できるように弁護士に相談して対応を考えておくのも一つの方法です。また出頭を考えている場合は、容疑が固まる前に行動する必要があることも意識しておきましょう。

 

解決事例

【事案1】逮捕と同時の捜索差押!後日、還付請求により、押収品が返還された事案

ある日の早朝7時、複数の警察官がAさんの自宅にやってきて、逮捕状と捜索差押許可状をAさんに示しました。逮捕と捜索差押の理由は、Aさんが持続化給付金詐欺にかかわったという疑いでした。
Aさんはそのまま警察車両に乗せられ、警察署に連行されました。
Aさんが連行された後、Aさんの奥さんが自宅の捜索差押に立ち会いました。
そして同じ日の午前9時、Aさんの勤務先会社にも複数の警察官による、捜索差押がなされ、会社の社長が立会人となりました。

 

【解決方法】

■運転免許証や健康保険証、クレジットカード入りの財布、スマートフォン、自宅の鍵、銀行通帳、キャッシュカード…いつ返ってくるのでしょうか…

Aさんは、20日間の勾留後、詐欺罪で起訴されてしまいました。その後、保釈請求を行った結果、保釈が認められ、逮捕から26日目に外に出ることができました。
しかし、外に出られても、スマートフォンがないと職場や親戚、友人・知人に連絡が取れませんし、家族との連絡すらも取れず、非常に不便です。また、運転免許証がないと自動車の運転もできませんし、風邪をひいても健康保険証が無ければ病院を受診できません。キャッシュカードが無ければ生活費をおろすこともできず、クレジットカードの引き落とし用に口座に現金を預け入れることすらできません。

そこで、ヴィクトワール法律事務所の弁護士は、保釈請求に先立ち、担当の検察官に連絡を取り、押収品の還付をお願いしました。その結果、保釈で外に出る日に間に合うよう、スマートフォンや運転免許証等の還付を受けることができたので、Aさんは釈放時、これらの押収品を持って、帰宅することができました。

 

■会社のパソコン、帳簿等がないと困る!

勤務先からは、Aさんが用いていたデスクトップパソコンと、Aさんのデスク上に置いてあった帳簿類、領収書ファイル、社用携帯が押収されました。
これらの物品には、Aさんが担当していた顧客に関するデータが入っていたため、デスクトップパソコンや社用携帯、帳簿類がないと、Aさんが勾留されている間、他の社員がAさんの顧客の対応を引き継ぐことすらできません。
そこで、ヴィクトワール法律事務所の弁護士は、Aさんの勾留決定が決まってから3日後、担当検察官に対し、上記の理由を伝えて、会社から押収した物件の還付請求を行いました。
帳簿類と領収書ファイルは、捜査機関もすぐにコピーをとってくれたようで、この2点はすぐに還付してもらえました。弁護士はすぐさま、Aさんから宅下げを受けて、社長に帳簿類と領収書ファイルを渡すことができました。
それから1週間後、弁護士は検察官に対し、還付してもらえなかったデスクトップパソコンと社用携帯の還付を再度、請求しました。結果、社用携帯だけは還付がなされましたが、デスクトップパソコンの還付は実現しませんでした。還付できない理由として、パソコン内のデータ抽出に時間がかかっているとのことでした。
Aさんが起訴された直後、弁護士は改めて、デスクトップパソコンの還付請求を行いました。一般的に捜査は、刑事裁判で有罪判決を得るための証拠の収集という目的がありますが、有罪判決を得るための証拠が揃ったからこそ、検察官はAさんを起訴したわけです。起訴までに、会社のデスクトップパソコン内のデータ抽出やデータ精査が終わったものと見込んで、弁護士は3回目の還付請求を行ったのでした。
そして、ようやく還付が認められました。

 

さいごに

還付請求を行わないと、なかなか押収品は手元に戻ってきません。
起訴され、有罪判決を得て、その有罪判決が確定してからようやく押収品が戻ってくるということもよくあることです。控訴や上告をした場合、上告審の判決が確定するまで戻ってこないこともあり、もっとひどい場合には、誰も還付を働き掛けなかった結果、検察庁の証拠品係の元で保管され続けてしまうという事態もあります。
捜索差押許可状により、押収されてしまった物品の早期の還付をご希望される場合は、是非ヴィクトワール法律事務所にご相談ください。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

刑事事件について高い専門性とノウハウを有した6名の弁護士が在籍する法律事務所です。

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豊富な実績を元に刑事事件に関するコラムを掲載しております。

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