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賭博罪とは
賭博とは「①勝敗が偶然の事情により決定されること、②その勝敗により財物や財産上の利益の得喪を争うものであること。」とされています。
この両方が認められると賭博罪が成立することになります。
① 「偶然の事情」とは
「偶然の事情」とは、勝敗について当事者の観念において不確定であることです。つまり、結果を予見できないこと、操作できないことを指します。いわゆる、花札やと麻雀などが分かりやすいですが、FXやCO2取引など国際市場相場を使用したものも賭博に該当しえます。また、当事者の能力が結果に影響を及ぼす場合でも、多少とも偶然性が認められるのであれば、「偶然の事情」が認められると言われています。実際、判例は将棋や囲碁など能力が影響しそうなものであっても、「偶然の事情」を認めています(将棋につき大判昭和12年9月21日、囲碁につき大判昭和4年10月16日)。
一方のみがその結果を知っているというような「イカサマ行為」が行われた場合には、偶然性がないので賭博罪は成立せず、詐欺罪が成立することになります。
② 「得喪を争う」とは
「得喪を争う」とは、何かを賭け、勝者はその利益を得て、敗者は失うことを指します。財物や財産上の利益について、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまる」(刑法185条ただし書き)場合は許されるとされています。
「一時の娯楽に供する物」かどうかは、価格が小さいことと、すぐに消費できることがその条件と言われています。「一時の娯楽に供する物」の具体例としては、たばこ1箱、食べ物1食等がこれに当たるとされています。一方で、金銭自体の場合は、価格が小さくても、賭博罪が成立することが多いです。
ところで、競馬、宝くじ、サッカーくじ等が、公認されていますが、特別法が定めているから許されているのであって、特別法が定めている方法以外の方法によって賭けを行えば賭博罪が成立します。
常習賭博罪とは
常習賭博罪は、賭博行為に常習性のある者が単純賭博を行った場合に、より重く処罰するための規定です。常習性がある者とは、反復して賭博行為をする習癖のある者をいいます。
常習として賭博したか否かは、賭博行為の種類や賭けた金額等を総合して判断されます。判例では、賭博前科があるか、遊技機の種類、動いた金額等が重視される傾向にあります。
賭博場開帳等図利罪とは
賭博場開帳等図利罪が成立するためには、①「賭博場を開帳すること」、②「①について図利の目的があること」が必要となります。
① 「賭博場の開帳」とは
「賭博場」とは言葉とおり、「賭博をする場所」です。この場合は、正式な設備が整っている必要はなく、自宅なども「賭博場」になりえます。
「開帳」とは、賭博場の設営にあたって中心的な地位に立つことです。自らが中心に賭博場を設けて、自らの監視下で賭博の機会を与える必要があります。もっとも、自らが賭博に参加することや、賭博者を集めることは必要ないとされています。
② 「図利の目的」とは
賭博場開帳等図利罪が成立するためには、賭博場を開設して、または賭博者を結合させることで利益を図ることが必要です。
判例では、「図利の目的」とは、「その賭場において、賭博をする者から、寺銭、または手数料等の名義をもって、賭博開設の対価として、不法な財産的利得をしようとする意思」とされています。
賭博罪の刑罰
賭博罪
第185条 賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
常習賭博及び賭博場開張等図利
第186条 常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。
2 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。
オンラインカジノ・スポーツ賭博の違法性
海外のオンラインカジノを日本でやったら違法になるの?
それでは、海外のオンラインカジノやスポーツ賭博(ブックメーカーでサッカーW杯の予想をして賭ける等)を行うことは、賭博罪となるのでしょうか。
オンラインカジノが、①勝敗が偶然の事情により決定されること、②財物や財産上の利益の得喪を争うものであること、の要件を満たすことは争いがないでしょう。
問題は、日本から海外のオンラインカジノを利用して賭博することに、日本の刑法を適用できるか(日本で違法となるか)です。
結論としては、日本の刑法が適用されうるので、違法となります。
平成25年の国会答弁では、「一般論としては、賭博行為の一部が日本国内において行われた場合、刑法第百八十五条の賭博罪が成立することがあるものと考えらる」との回答がされています。刑法1条1項は、「この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。」と規定しており、賭博行為の一部でも日本国内において行われたのであれば、「日本国内において罪を犯した」といえるからです。
実際、警察庁のHPでは、「日本国内の自宅において、自宅に設置されたパーソナルコンピューターを使用して、海外の会社が運営するオンラインカジノサイトにインターネット接続し、同サイトのディーラーを相手方として賭博をした賭客を単純賭博罪で検挙」した事案が報告されています。
スポーツ賭博(ブックメーカー等)に関しても、オンラインカジノと同様の賭け方・利益の得喪等があるといえるため、同じことが言えます。ブックメーカー利用を直接規制する法律はないものの、注意が必要といえます。
もし、賭博罪・賭博場開張等図利罪で嫌疑がかかった方がいらっしゃれば、当事務所までお気軽にご相談ください。
弁護士のできること
賭博罪で在宅捜査を受けたり、逮捕されたりすると、捜査機関で取調べを受け、供述調書の作成を行うこともあります。
弁護士は、取調べの対応について助言を行います。在宅捜査を受けている方の場合には、その方が、取調べのために捜査機関へ出頭する日に、一緒に捜査機関へ行くこともあります(出頭同行、準立会などと呼ばれています。)。
賭博罪は、直接的な被害者が存在しないため、示談や被害弁償による不起訴の獲得は非常に難しいです。
そこで、贖罪寄付を行ったり、(日常的にギャンブルをしてしまっている場合には)ギャンブル依存症の治療を行うためのクリニックに通院したりして、反省の態度や再犯可能性の低下を示し、不起訴の獲得を目指すことになります。
当事務所では、必要に応じて医療機関との連携も取りつつ、様々な方法で、不起訴処分の獲得や減刑を目指します。