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冤罪とは
冤罪とは、一般的には、刑事事件において、犯罪を行っていないにもかかわらず、有罪の判決が確定した場合のことをいいます。
判決が確定していなくとも、犯罪を行っていないにもかかわらず、有罪の判決が言い渡されたり、被疑者として取り調べられたり逮捕された際などに、冤罪であると言うこともあります。
これまで、有罪判決が確定した後の再審によって無罪となった事例があります。これなどは、典型的な冤罪事件であるといえるでしょう。
判決は、裁判官により言い渡されます。裁判官は、法廷に提出された証拠によって事実認定を行います(証拠裁判主義・刑事訴訟法317条に「事実認定は、証拠による。」と規定されています。)。刑事訴訟では、冤罪が起きないように心掛けられてはいますが、人間が過去の事実を裁判に提出された証拠限りで判断する以上、そこに誤りが入ることは避けることはできません。現に、裁判は三審制がひかれ、第1審と第2審で有罪無罪の判断が違うことがあります。
もちろん、冤罪が生じることが仕方ないと考えられているわけではなく、裁判官による慎重な判断や、「疑わしきは被告人の利益に」の理念に基づき刑事訴訟は運営されるべきものとされています。
これまでの代表的な冤罪の事例
今の日本で、最も身近な冤罪事件といえば、電車内などでの痴漢事件における冤罪事件であると考えられます。
身に覚えのない痴漢の罪を着せられてしまうと、社会的信用を失い、家族からも見放されてしまう恐れがあります。痴漢を疑われても、裁判で最後まで戦うことはもちろんできますが、身柄を拘束されたり、刑事事件終了までの実際の時間等の負担を考えてしまうと、早く事件を終わらせたいと思ってしまい、冤罪を受け入れてしまうケースが生じてしまいます。
また、社会的に著名な事件では、死刑判決が確定し、執行を待つ段階までいっていたにもかかわらず、再審が開始され無罪となった事件もあります。このような事件では、事件発生から数十年経っているケースもあり、被告人の人生は刑事事件で染まってしまったといえるかもしれません。
【例】
免田事件…1948年末に発生した強盗殺人事件。免田氏が被疑者として逮捕され、1952年に死刑が確定しました。それから、免田氏のアリバイが明らかとなり、6回の再審請求を経て、1983年、無罪判決が確定しました。逮捕されてから釈放されるまで、34年以上かかった痛ましい冤罪事件でした。
もちろん、明らかにはされなくとも、埋もれた冤罪事件はまだまだあるはずです。
もし身に覚えのないことで冤罪となった場合には
もし、身に覚えのない刑事事件に対する罪で有罪判決が言い渡されてしまったらどうすればよいのでしょうか。
刑事訴訟における判決の内容を正すには、やはり判決しか方法はありません。既存の証拠を精査し、場合によっては新たな証拠を整えて、裁判所の判断を求めることになります。
翻って、事件発生当初又は被疑者として疑われた当初から、冤罪の有罪判決が言い渡されることないように準備をすることができる場合があります。日本の刑事裁判では、被告人本人の供述調書や供述が重視される傾向があります。
そして、捜査段階で作成される供述調書は、被疑者自身の供述調書とはいえ、その内容を作成するのは警察官や検察官などの捜査機関であって、刑事訴訟の相手方になります。ときには、供述調書は捜査機関の作文であるといわれることもあります。いずれにせよ、供述調書は重要な証拠となりますので、まずはその内容が真に納得できるものか慎重に判断しなければなりません。
供述証書に含まれている内容のどの部分が特に重要なのかは、法律の専門家でさえ慎重に判断する必要がある時もあります。供述調書を作成することは、裁判官の前で話すときと同じぐらいの気持ちで対応すべきことです。
弁護士と十分に相談して、捜査の段階から自らの弁護を尽くすことが大切です。いくら協力的であったとしても、警察官や検察官は、刑事訴訟の実質的相手方ですから、被疑者の味方ではありません。意識的にせよ無意識的にせよ、被疑者に不利益な証拠を作ることは避けられません。
刑事事件全体を見通して、初期の頃から防御を尽くし、冤罪に遭わないようにすることは、非常に重要であるといえます。
冤罪で逮捕されてしまった場合弁護士のできること
起訴されてしまうと、どうしても有罪率が高くなるので、捜査段階で、不起訴にしてもらうことが、冤罪を防ぐ第1歩です。
冤罪事件に巻き込まれてしまった場合、まずは、弁護士に相談し、捜査機関に素直に話すのか、黙秘するのか、手元にある証拠を踏まえて協議する形が良いでしょう。