どこからが強要罪?脅迫との違いを弁護士が解説

強要罪とは

強要罪は刑法に、「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者」(223条)と定められています。
法定刑は3年以下の懲役です。

強要罪に当たる行為とは
令和5年5月、交際相手に対し、「(床に付着した血痕を)全部舐め回せ。殺すぞ。」などと言って、床に付着した血痕を舐めさせた行為が強要罪に当たるとして、男性が逮捕されたという事件がありました。
強要罪で逮捕されることは比較的稀ですが、行為が悪質であったり、他の犯罪行為も一緒に行っていたりした場合には、逮捕に至るケースもあります。

強要罪は、
①被害者若しくは被害者の親族の「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫」する、又は被害者に「暴行」を加える
ことによって、
②被害者に対し、「義務のないことを行わせ」た、又は被害者の「権利の行使を妨害した」場合に成立します。
(未遂も処罰されます。)

例えば、①「警察に被害届を出したら、あんたの両親を殺すからな。」と言って、②被害届の提出をやめさせる行為、①「言うとおりにしなければ、通っている高校に、お前がパパ活をしている事実をばらすぞ。」と言って、②裸の写真を送らせる行為などが強要罪に当たります。

脅迫罪との違い

強要罪と似た類型の犯罪として、脅迫罪があります。
脅迫罪は、被害者又は被害者の親族の、「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨」告知して脅迫した場合に成立します(刑法222条)。
法定刑は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金です。
強要罪は、上記の態様で脅迫した結果、被害者に義務のないことを行わせたり、被害者の権利の行使を妨げたりした場合に成立します(刑法223条)。
法定刑は、3年以下の懲役で、罰金刑が定められていません。
したがって、強要罪の疑いで捜査を受け、起訴相当と判断された場合には、必ず正式裁判にかけられることになります。

強要罪で逮捕されたら

身体拘束が予想される期間
逮捕された場合、身体拘束が予想される期間は下記の通りです。

⇒逮捕されると48時間
⇒勾留決定がなされると10日間(勾留延長があれば、さらに10日間)
⇒起訴された場合は保釈が許可されるまで身体拘束が継続

逮捕から検察庁への身柄送致   最大48時間 
身柄送致から勾留請求      最大24時間 
勾留              10日~20日間
起訴後勾留           期限の定めなし(保釈もしくは執行猶予付き判決が出るまで)

強要事件においては、事件の性質上、被疑者が「否認」をしている場合は、逮捕される可能性が高まります。逮捕後、検察官から勾留請求をされた場合には、原則10日間身体を拘束されることになります。勾留延長請求がなされれば、さらに10日間身体を拘束される場合もあります。身体拘束から解放されるためにも、早期に弁護士に依頼することが大切です。 

弁護活動の方針

まずは、被害者との示談交渉を行い、早期に示談をして、不起訴処分の獲得を目指します。
被害者がどうしても示談をしたくないという場合には、贖罪寄付など、他の方法で謝罪の気持ちや反省の態度を示しつつ、粘り強く不起訴処分を目指します。
脅迫行為自体は行ってしまったが、被害者に対し義務のないことを行わせたり、権利の行使を妨害したりした事実がないという場合には、検察官に対し、正確な事実関係を伝え、罰金刑の定められている脅迫罪での処分を求めます。(罰金刑が定められている犯罪で、被疑者が事実関係そのものは認めている…という場合、検察官が罰金刑を求刑することが相当であると判断すれば、裁判所に被疑者を出廷させて審理を受けさせる正式起訴ではなく、書面審理のみで完結する略式起訴を選択する可能性が高いです。仕事を持っていたり、世話をすべき家族がいたりする人にとって、裁判所への出廷は心身ともに大きな負担となるので、起訴は免れないという事案の場合、略式起訴になることのメリットは非常に大きいものと言えます。)

時事事例

AV出演強要問題
近年問題となっているのが、女性がアダルトビデオに無理矢理出演させられるといった強要被害です。モデルや女優の撮影だと思って応募したところ、アダルトビデオに出演させられたというようなケースが多数報告され問題となっています。もし被害に会われたら、できるだけ早期に弁護士に相談し、被害届、告訴の措置をお取りになることをお勧めします。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

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