ホーム >  刑事事件の基礎知識 >  量刑について

量刑について

 

量刑とは、裁判所が処断刑の範囲内で刑の種類や程度を決めることで、量刑にあたって考慮される要素は多くあります。

最高裁判例によれば、刑事裁判における量刑は、被告人の性格、経歴および犯罪の動機、目的、方法等すべての事情を考慮して決定されることになります。

一般的に量刑を決定するにあたって考慮される事情について以下に示す最高裁の指針が参考になります。

 

最近、裁判員裁判事件の量刑問題に関して、最高裁が作成した「考え方」(YOMIURI ONLINE2009.5.21)は、「量刑は被告人や被害者の社会的地位に応じて変化してはならないということを原則」とし、「被告の前科(+前歴、余罪)や反省(+自白、被害弁償)の度合い、被害感情など(+社会の処罰感情、社会的影響、社会的制裁)は、刑罰を決める上で副次的なもの」と指摘しました(なお、+以下の部分は個人的見解です)。

その上で、量刑を決める評議の順序は、まず、

(1)「犯行の態様(+手段、方法)」

(2)「犯行の結果=結果の大小・程度・数量+被害弁償」

(3)「動機・計画性」

といった点に着眼するようにし、これらの本質的な要素から、事件の類型を見極め、量刑を導き出すものです。

具体的には、以下を犯罪事実やその他の事情についてその流れを追って説明します。

 

 

 

 

犯行そのものに関する量刑の事情

 

1.犯行の動機、計画性

 

動機が反社会的であったり、私欲を満たすためであったり、情欲に任せたものであったり、通り魔的だったりすることで、量刑が重くなります。

例えば、被害者から以前に何かをされて恨んだ末に犯行に及んだ場合や被害者に挑発されるなど被害者に落ち度がある場合と、理由もなく犯行に及んだ場合とでは量刑も異なってきます。

また、事前に十分な計画や入念な準備をして行った犯行と相手方の行動に触発されて突発的に行った犯行とは、異なります。

 

 

2.犯行の手段、方法、態様

 

共犯か単独なのか、共犯の場合は、主犯(首謀者や先導者)なのか、ただ、従属的に従ったまでのことかが問題となります。

けん銃や木刀等の凶器を使用した場合と、素手によるものなのか、でも量刑は異なります。

ただ、プロボクサーやこれに類する運動家などは、素手や素足でも凶器と同じような評価をされる場合があります。

 

さらに、犯行を加えた部位が生命の危険の及ぼす身体の重要な部分であったり、その犯行は周囲の者が止めるのを振り切って多数回にわたり執拗に顔面や腹部を蹴りつけた場合と、わずか臀部を1回蹴りつけた場合とで、量刑が異なることは当然でしょう。

これは、身体に対する犯罪を例に挙げましたが、財産やその他に対する犯罪でも犯行の手段、方法、態様にそれぞれ違いがあり悪質であればあるほど量刑が重くなることが考えられます。

 

 

3.結果の大小・程度・数量、被害弁償

 

これはもちろんのことですが、同じ傷害罪でも、全治2週間と全治6か月とでは異なります。

また、窃盗事件では、盗まれたものが数千万円もする高額な貴金属の場合と、現金1万円では当然異なります。

財産犯では被害を受けた財産の時価総額がどのくらいかなど被害の大きさが、量刑に当たって重要な判断要件となります。

また、犯行によって失われた被害や損害がどの程度回復したかも重要な判断基準となります。

財産的な損害の場合は、被害回復や被害弁償が重視され、その物か、その物の価格に応ずる現金、さらにそれ以上のものを弁償した場合と、全く弁償せず被害の回復もない場合は、当然異なります。

また、人命に関する犯罪で被害そのものの回復はできない場合でも、慰謝料等を金銭で支払い、特に多額の金銭を支払った場合は、被害又は損害の一部又は全部を回復させたと同視される場合もあります。

被害弁償がされた場合は、被告人に有利になります。

 

仮に被害者が示談金を受け取らずに被害弁償がなされないとしても、弁償に向けた努力、例えば法テラスや弁護士会に「しょく罪寄付」をした場合は一般的に、一定の評価を受けます。

なお、しょく罪寄附とは、脱税、贈収賄、覚せい剤取締法違反など「被害者のいない刑事事件」や、「被害者に対する示談ができない刑事事件」などの場合に、被疑者・被告人が事件への反省の
気持ちを表すために、公的な団体等に対して行う寄附のことです。

 

 

犯行以外に関する量刑の事情

 

1.被告人の性格や職業

 

被告人の性格からみて取れる反社会性や常習性、犯罪傾向の進み具合、粗暴性などは、量刑事情に影響を及ぼします。

被告人の年齢や経済状態、定職に就いているかどうかなども量刑に影響します。

たとえば年齢が若ければ、更生の見込みがあるという点で有利に作用することもあります。

 

 

2.前科・前歴

 

同種の前科・前歴があれば、再犯のおそれありということで、情状が悪くなります。

前科に関しては、刑の言い渡しが失効した後も量刑事情としては考慮されることとなっています。

ただ、交通事故の前科が窃盗事件の量刑に影響を及ぼすことはほとんどないといってよいでしょう(ただし、執行猶予期間中の犯行は別です)。

しかし、同種前科が多数あり、特に窃盗事件で窃盗の前科が10年以内に3回以上窃盗や窃盗未遂の処せられていれば、懲役3年以上の「常習累犯窃盗」に処せられます。

これは、常習的に傷害事件を犯した場合に懲役1年以上の「常習傷害」に問われることと同じ理由によるものです。

常習について、法令にない場合でも、何度も同じような形態で犯罪を行っていた場合は、裁判の都度、刑が加重される場合がほとんどです。

なお、前歴は、通常逮捕歴や補導歴等を示すもので、警察でそのデーターを管理していますが、確定判決(罰金も含む)を経た前科(検察庁が管理)とは重みが違っています。

それは、証拠に基づき判決を経た前科と、警察が検挙したが判決まで行かなかった事件の重みの違いと言えます。

したがって、まず、同種前科の方が重視され、次に同種の前歴が考慮されるということになります。

 

 

3.余罪

 

余罪に関しては、条件付きで量刑事情として考慮できるとされます。

実質上、余罪を処罰する趣旨の場合は量刑の資料とすることはできず、単に被告人の性格、経歴および犯罪の動機、目的、方法などの情状を推知する場合には量刑の資料とすることができます。

質上、余罪を処罰する趣旨としては考慮してはいけないが、単に被告人の性格、経歴および犯罪の動機、目的、方法などの情状を推知するための資料としては考慮してよいということです。

余罪を処罰するための量刑の資料としてならない理由は、余罪はいまだ厳格な裁判手続を経ておらず、裁判に耐えうるだけの十分な証拠の裏付けがない場合もあるからです。

 

 

4.反省と自白

 

被告人が反省をしているにもかかわらず、誤解を受けて反省していないと疑われないように、弁護人としては十分に注意する必要があります。

反省して自白していることが有利に働くことは間違いありません。

否認や黙秘をすること自体は、検察官に対する対立当事者として正当な防御活動です。

しかし、証拠上、明白な事実に対して、悪あがきに見られるような不合理な否認・不合理な黙秘を続けた場合には、否認をしたことや黙秘をしたこと自体ではなく、その公判廷での態度からみて取れる反省のなさや再犯のおそれを量刑上不利に考慮されることはあります。

弁護士と相談してどのような供述態度を示すべきか総合的な判断をするべきでしょう。

 

 

5.社会の処罰感情、社会的制裁、社会的影響

 

社会の処罰感情が一般的に、量刑事情に影響することは否定できません。

ちなみに、特定の犯罪に対する社会の処罰感情はときどきの社会背景によって変化します。

新聞やテレビで報道される事件周辺の人々や一般社会の人々の声や意見などを反映した社会の反応や影響も判断材料となる場合があります。

また、逮捕や勾留によって会社を首になったり、有名人などが報道によって社会から無視や抹殺されたり報復を受けたりすることなどで、社会的制裁を受けた場合は、被告人にとって有利な事情になる場合が
あります。

社会的影響とは、凶悪犯罪などによって社会が感じる不安やこれに対する対策コストなどです。

 

 

刑事事件の基礎知識の詳細はこちら

1-10001.png 1-30023.png
1-40022.png 1-50021.png
1-70002.png 1-80001.png
1-60020.png

お問い合わせ・ご相談はこちら

刑事弁護・無料相談受付中

メールでのお問い合わせはこちら

Copyright (C) 2014 Victoire Law Office All Rights Reserved