「社内調査における真相解明」参考資料

H23.2.3

社内調査における真相解明

ヴィクトワール法律事務所

弁護士 大竹健嗣

第1 総論

1 社内調査の態勢

① 社員による調査(プロジェクトチームor担当部署)

=社員による同僚社員に対する事実関係の調査と真相の解明

② 社外専門家による調査(弁護士,公認会計士等)

=社外の専門家等による社員に対する事実関係の調査と真相解明

③ 社員による調査+社外専門家による調査

【問題点等】

①のみでは,調査経験のない社員,未熟な社員,不慣れな社員が調査を担当する可能があり,調査担当社員と対象社員との人間関係のあつれきや混乱,精神的な打撃

②のみでは,実行部隊が存在しない可能性

③が望ましいと思われる。③も社内調査が大きなウエイトを占めるのでは。

※ 調査が行われた場合,これを統括して調査を指揮し調査結果について総合的な判断ができる司令部,又は合議体が必要。

 

2 強制力のない社内調査

① 物証の確保=証拠物の収集

◎  関係部署,参考人からの任意提出

 ◎ 本人(調査対象者)からの任意提出

② 人証の確保=事情聴取→rarr;証拠化=上申書,陳述書(捜査機関の供述調書)

◎ 参考人

◎ 本人

【問題点等】

任意調査が,全て有効だとは限らない。そもそも任意性が確保されているかが問題,裁判で訴えられたとしても,対応できる調査手続を踏んでいるか。

 

3 職員の協力義務

① 雇用契約

② 就業規則その他の社内規定(管理規定等)

パソコン(私的メール等),引き出し,用紙等の私用禁止に関する規程,私的メールの調査等に関するモニタリング(監視)の事前告知,

③ 業務命令

④ 事前の了解,説得

【問題点等】

     ※  労働法規違反やプライバシー権の問題でなど拒否されたり,訴えを提起される可能性あり。→任意調査の限界を理解すること

 

4 真相解明(社内調査)の目的と真相追及(終局処分)のバランス

① 刑事処分(告訴・告発)+懲戒解雇

② 懲戒解雇

③  降格,減給等の処分

④ 和解等の合意

【問題点等】

目的に応じて,調査の時間,範囲や深さを検討すること,調査対象者からの事情聴取等に時間をかけすぎて問題になる場合もある。

 

第2 各論(調査の手順)

1 人証

調査の端緒(刑事事件の告訴,告発,被害届)から始め,調査範囲を拡大する

① 通報者  通報者の事実認識+通報動機を十分に聴取,

通報者(目撃者or被害者等)も,都合の悪いことは隠す。

まずは,通報者の供述(陳述)が客観的証拠(証拠物、第三者の供述)と合致して信用できるかを確認。

とにかく,通報者の供述を鵜呑みにしないこと。むしろ疑ってかかること(内心の問題,表面出すと今後の協力を得られない可能性あり。)

裏付けとなるような証拠の収集等の依頼,今後の協力や安全確保の約束。

② 協力者(客観的第三者,ときには被対称者の同僚,友人等)

協力してくれる動機や立場等を見極める,ときには協力者を装って情報入手のために近づき,被対象者に情報が流されることもある。

③ 非協力者

調査の上で重要な立場にある者は,説得,協力の必要性,調査目的の告知

 

2 物証

① 業務命令による確保

② メール等を閲覧

③ 私物の携帯電話,パソコン,手帳,書類の任意提出

④ 任意に自宅に同行し、物もしくは書類を預かる

③,④については,自筆の同意書面or承諾書を作成させること,

+録音,ビデオ。

【問題点等】

メールの内容確認=不正行為等を裏付ける重要な証拠になる可能性あり。  しかし,パソコンや携帯電話のデータの解析は,専門家でないと困難な場合が多い。

解析専門会社に解析を依頼し,消去,又は削除されたデータを復元させること消去や削除された部分は,当事者が見られては困ると判断して積極的に罪証を隠滅した可能性が高く,不正行為の意図が裏付けられる場合が多い。

 

3 調査対象者+共犯者

① 主犯は後で,関与の程度が低い者からは,供述を得やすい。

利益誘導は,できればしない方がよい。やむを得す行う場合は,事前に権限者との調整を行うか,その権限者や調査責任者が慎重に行うこと。

② 調査対象者

調査社員の人選が重要=人柄,人格,責任感等がすぐれている社員をあてる。

調査対象者の嘘を見抜く力,真実を述べさせる力が問われる。

周到な準備をした上,気力,体力を充実させた状態で聴取

これまで得られた人証による証拠,証拠物を整理し,事実関係を十分把握した上で,聴取。その場になって慌てて書類や証拠物を点検しない。

いくら聞いても嘘をつく者については,詳細な弁解をさせ,その裏取りをし,その後,動かぬ証拠を提示し,自白させることもある。

 

聴取の際,できるだけ2名程度で立ち合い,1人が聴取し,他1人が聴取状況全般を確認できるようにし,任意性について証人に立っても問題ないようにしておくこと(1人だと暴行を受けたとか,強迫されたと弁解されたときに,反論するのに困難な場合がある。)

 

録音や録画の可否と供述の証拠化

今,問題となっている「取調べの可視化」の問題と同じ。

強迫をした、しないなどの争いを回避

録音・録画を事前に告げた方がベターである。しかし,内々に録音・録画をしても違法性が問われることはないと思われる。

 

陳述書又は上申書(供述調書,供述録取書)

まず,内容を十分確認させた上(本人に閲覧させることも一法方法),本人に署名,押印させる。

短い書面であれば,全て自書させる。

 

取調べの場所や時間にも配慮

ドアに鍵をかけ,監禁状態にしないこと,聴取中の休憩時間や終了時間にも配慮

 

【問題点等】

事実認定に関し,当初から決めつけないこと(大阪地検特捜部の筋書きは誤り)

問題が多い。利益誘導によって得られた供述は,信用性が問題となる可能性が多い。

やむを得ない場合は,社内処分しないこと,責任を軽減することを条件にして真実を話すよう求めることも可能だが,利益の内容が客観的に見て合理性や合目的性に合致すること。

 

判例:

東京地裁・H14.2.26日経クイック情報(電子メール)事件

1 企業秩序に違反する行為があった場合に,違反行為の内容等を明らかにし,乱された秩序回復に必要な業務上の指示,命令を発し,または違反者に対し制裁としての懲戒処分を行うため,事実関係の調査をすることができるが,その調査や命令は,企業の円滑な運営上必要かつ合理的なものであること,方法,態様が労働者の人格や自由に対する行きすぎた支配や拘束ではないことを要する。 

 

2 社内における誹謗中傷メールの送信という企業秩序違反事件の調査を目的とし,その送信者であると疑われる合理的理由がある以上,原告労働者に対して事情聴取を行う必要性と合理性が認められる。 

 

3 2回にわたる事情聴取につき,事情聴取の時間は30分ないし1時間であり,質問内容も特に不適切なものではなく,強制にわたるものではないから,社会的に許容しうる限界を超えて原告の精神的自由を侵害した違法な行為ではない。 

 

4 原告のメールファイルの点検は,事情聴取により原告が送信者である疑いをぬぐい去ることができず,また,原告の多量の業務外の私用メールの存在が明らかになった以上行う必要があるとし,その内容は業務に必要な情報を保存する目的で会社が所有し管理するファイルサーバー上のデータ調査であることから,社会的に許容しうる限界を超えて原告の精神的自由を侵害した違法な行為とはいえない。

 

5 処分を相当とする事案に関して,調査ないし処分の決定に必要な範囲で関係者がその対象となる行為の内容を知ることは当然であり,それが私用メールであっても違法な行為ではない。

 

6 処分事案に関する調査記録は当該事案に関連する紛争に備えて,あるいは同種事件への参考資料として相当期間保管する必要があり,私用メール等の本件データは違法に入手したものではない以上,これを削除しないとしても違法ではないし,原告が具体的に必要とする事情が存在するといった事情が認められない以上,返還義務はない。 

 

7 退職の日付けを早めることについての争いは,全体の経過としては双方が合意の成立を目指してねばり強い交渉を続けたという程度にとどまり,会社側が再検討のうえ譲歩したことを考慮すると,社会的に許容しうる限界を超えて原告の精神的自由を侵害した違法な行為とはいえない。 

 

8 私用メールは,送信者が文書を考え作成し送信することによりその間職務専念義務に違反し,私用で会社の施設を使用する企業秩序違反行為になるばかりか,私用メールを読ませることにより受信者の就労を阻害し,受信者が送信者からの返信メールの求めに応じてメールを作成・送信すれば,そのことにより受信者に職務専念義務違反と私用企業施設使用の企業秩序違反を行わせることになる。 

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