微罪処分になるのはどんな事件?前科は付く?弁護士が解説

微罪処分とは

「微罪処分」とは刑事手続きの中で、検察に事件を送致しない処分となったものを指します。通常、刑事事件は、警察による捜査の後、検察に送られること(俗にいう「送検」)が原則です。もっとも、検察官に送致しても事案軽微との理由で起訴猶予処分になることが警察官からみても明白な場合には、わざわざ正式な事件送致の手続をとらせることは、限られた人的リソースを無駄にしてしまいます。
そこで、警察が検察へ送致の必要がないと判断した場合、事件は警察限りで終了することがあります。これを「微罪処分」と言います。
送検されずに刑事手続が終了するという点で書類送検とは異なります。

微罪処分で前科は付く?

令和3年度版犯罪白書によりますと、令和2年に微罪処分により処理された人員(刑法犯)は5万2035人であり、全検挙人員に占める比率は28.5%であったと報告されています。なお、微罪処分の場合であっても、前歴(捜査機関に犯罪の嫌疑をかけられ捜査の対象にされた経歴)は残りますが、前科にはなりません。

 微罪処分に該当するケース

微罪処分とすることのできる場合について、刑事訴訟法及び犯罪捜査規範(警察官の心構え、捜査の方法、手続等を定めたもの)には以下のように示されています。

〇刑事訴訟法
(司法警察員から)
第246条 司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。

○犯罪捜査規範
(微罪処分ができる場合)
第198条 捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。
(微罪処分の報告)
第199条 前条の規定により送致しない事件については、その処理年月日、被疑者の氏名、年齢、職業及び住居、罪名並びに犯罪事実の要旨を一月ごとに一括して、微罪処分事件報告書により検察官に報告しなければならない。
(微罪処分の際の処置)
第200条 第198条(微罪処分ができる場合)の規定により事件を送致しない場合には、次の各号に掲げる処置をとるものとする。
(1) 被疑者に対し、厳重に訓戒を加えて、将来を戒めること。
(2) 親権者、雇主その他被疑者を監督する地位にある者又はこれらの者に代わるべき者を呼び出し、将来の監督につき必要な注意を与えて、その請書を徴すること。
(3) 被疑者に対し、被害者に対する被害の回復、謝罪その他適当な方法を講ずるよう諭すこと。

どのような場合に微罪処分になる?

どのような場合に、微罪処分になるかは、条文上は明らかではありません。
微罪処分の内容は、各地方検察庁の検事正がその管轄区域内の警察に指定しており、全国一律ではありません。しかも、各地方検察庁が指定する条件は「非公開」です。微罪処分となる条件を明らかにしてしまうと、微罪処分になるような犯罪を誘発してしまう可能性があるからです。
現に、「微罪処分の指定罪種、適用範囲、処理手続を定めた文書」につき情報開示請求がされた事案において、行政不服審査会は、基準を含む一部文書について非開示にしたことは妥当であるという判断をしています。
それでも、概ねの手掛かりは得られます。昭和35年創刊当時の犯罪白書(法務省発行)では、以下の記載があります。

微罪処分の対象となる事件

現在,微罪処分の対象とされている事件は,おおむね,つぎのようなものである。

(一) 被害僅少かつ犯情軽微で,賍物(注:盗品のこと)の返還その他被害の回復が行なわれ,被害者が処罰を希望せず,かつ,素行不良でない者の偶発的犯行で,再犯のおそれのない窃盗,詐欺,横領事件およびこれに準ずべき事由のある賍物事件。
(二) 得喪の目的たる財物がきわめて僅少で,かつ,犯情も軽微であり,共犯者のすべてについて再犯のおそれのない初犯者の賭博事件。

仮に、昭和35年当時と大幅な基準変更がないのであれば、微罪処分の対象となる罪名は、窃盗、詐欺、横領、盗品関与罪、賭博罪等と考えられます(今では暴行罪も対象になることが多いです)。
そして、上記罪名にあたるだけでなく、①被害がわずか、②行為態様が悪質でない、③被害の回復がなされている、④被害者が処罰を望んでいない、⑤過去に同種前科・前歴がない、⑥計画的でなく偶発的な犯罪である、⑦再犯のおそれがない(反省している、監督者がいる)等の条件が重なったときに、はじめて微罪処分になると考えられます
したがって、被疑者に前科・前歴がある場合には微罪処分になる可能性は低い一方、前科・前歴がなく、金額の小さい初めての万引きで被害店舗に被害額の弁済と謝罪をし、被害者の許しを得ることができたような場合には、微罪処分になることもあります。

当事務所の弁護士ができること

犯罪の被疑者として、長期間、捜査機関(警察及び検察)から捜査の対象とされるストレスは想像を絶するものがあります。微罪処分の場合はその後の刑事手続きを経る必要もないので1日ないし2日の短期間で終了するため、日常生活への影響は最小限で済むでしょう。
そのために、当事務所の弁護士は、微罪処分になる可能性があるか、あるのであれば、どのような条件を重ねたら微罪処分となることを見立て、その条件を満たすため、例えば示談を成立させたり、再犯可能性がないと警察に考えてもらうため環境を整備するなど、尽力いたします。
まずはお気軽にご相談ください。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

刑事事件について高い専門性とノウハウを有した6名の弁護士が在籍する法律事務所です。

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