嘘を言って,持続化給付金の給付を受けると,逮捕されるの!? ~ 持続化給付金詐欺事件について

Aさん

「私は会社員なのですが,コロナの流行で在宅勤務が増えた結果,残業代も減り,給料が下がってしまったんです。そんなとき,知り合いのBから,『持続化給付金を申請しない?申請の手続きを代わりにやってあげるから名前を貸してよ。もし,給付金が100万円振り込まれたら,20万円ちょうだい。80万円手元に残るんだから超ラッキーだよね。』と,話を持ち掛けられて…。給料が下がってしまい,月々のクレジット払いも苦しかったので,『まぁやってみるか!』と安易な気持ちで,Bさんに名前を貸してしまったんです。」

 

弁護士

 「そうだったのですね…」

 

Aさん

「令和2年の5月に,事業をやっているという形で名前を貸して申請して,同じ年の6月に給付金100万円が私の口座に振り込まれたんです。Bさんに,報酬として20万円を振り込みました。こんなに簡単に大金が入ってくるなんて夢にも思いませんでした。でも,持続化給付金詐欺で逮捕された人のニュースを見て,急に怖くなってしまって…先生,私も逮捕されてしまいますか?」

 

弁護士

 「Bさんの行為は,詐欺罪(刑法第246条1項)に該当します。そして,残念ながら,AさんはBさんの共犯として,やはり詐欺罪に該当します。Aさんに,定まった住所や職場があって逃亡のおそれがない,さらには証拠隠滅のおそれがないなどと判断されないと,Bさんとの関係次第では逮捕される可能性はあります。」

 

Aさん

 「えーっ!やっぱりそうなんだ…。でも先生,私はBさんから誘われなかったら,こんなことしませんでしたよ。Bさんは私がたこ焼き屋を経営していることにして,架空の確定申告書や売上台帳,そして持続化給付金申請書を作りました。実際に申請行為をしたのもすべてBさんでした。私は何もしていません。それなのに,私にも詐欺罪が成立して,逮捕されるおそれもあるなんて,あんまりですよ…。」

 

【なぜ,AさんとBさんに詐欺罪が成立し得るのか?】

1 中小企業庁が所管する持続化給付金制度は,新型コロナウィルスの感染拡大により,休業を余儀なくされるなどして,売上が前年同月比50パーセント以上減少した事業者に対し,事業全般に広く使うために支給される給付金です。中堅・中小企業・小規模事業者の方には上限200万円が,フリーランスを含む個人事業主の方には上限100万円が支給されます。

2 Aさんは会社員で,通常,就業規則で副業が禁止されていることが多いので,支給対象者に該当しません。にもかかわらず,Bさんは,Aさんがたこ焼き屋を営む個人事業者であるとして,令和2年の売上が令和元年の売上より50パーセント以上減少したとする虚偽の売上台帳や確定申告書を作成し,持続化給付金の申請をしています。そして,Bさんの申請を真実と誤信した国の担当者は,Aさんに100万円の持続化給付金を振り込んでしまいました。

3 BさんはAさんが持続化給付金を詐取するにあたり,重要な役割を果たしたといえるので,詐欺罪が成立します。

 そしてAさんは,仮に名前を貸しただけであっても,Bさんが「虚偽の事実を元に,架空の関係書類を作成・提出するなどして,持続化給付金を申請すること」を知っていたので,Bさんの一連の行為を利用して,持続化給付金という利益を得たといえますので,詐欺罪の共犯となります。

 

Aさん

 「確かに私も悪いですね…。先生,私はどうしたら良いのでしょうか。このまま怯えながら,警察に逮捕される日を待つしかないのでしょうか。」

 

弁護士

 「捜査機関がAさんやBさんの行為にまだ気づいていないならば,Aさんから警察に自首しても良いかもしれません。また,中小企業庁では誤って持続化給付金の給付を受けた場合の返還に関する窓口を設けています。Aさんには持続化給付金を受領する資格がないことは明らかですから,給付金の返還を進めることも必要だと思います。自首と返還を並行して行うのも良いかもしれません。

なお,返還する金額ですが,受領した給付金全額はもちろんですが,ここに利息や違約金が付くので注意が必要です。1年で3パーセントの利息がつきます。Aさんの場合,受給から既に2年経過していますので,1年で3万円ずつ,合計6万円の利息が発生しています。受給額と合計した106万円をベースに違約金が20パーセント発生しますので,総額127万2000円を返還する必要があります。」

 

Aさん

 「えーっ!そんなに上乗せして返還する必要があるんですね…。でも,早く返さないと利息や違約金額が増えてしまいますよね…急いだ方が良いですね。」

 「もし,自首したら,私は最終的にどのような罪になるのでしょうか。」

 

弁護士

 「詐欺罪には,罰金刑がありません。ですので,起訴された場合は必ず公判廷で行う正式裁判を受けなければならなくなります。そこで,弁護士を早期に依頼して,不起訴処分にしてもらえないか,検察官に働きかける必要があります。不起訴処分を勝ち取ることはなかなか困難な作業ですが,実際に不起訴処分で終わったケースもありますし,最初から諦めることなく,できる限りの捜査弁護活動を行った方が良いと思います。

捜査弁護活動を精一杯尽くしても,起訴されてしまった場合ですが,次の判例をご紹介します。」

 

* 令和3年6月30日 広島地方裁判所・判決 

懲役2年10月・執行猶予5年

【事案の概要】

共犯者2名から申請名義人になるよう声をかけられ,持続化給付金を不正受給し,その一部を取り分として得た後,自らも勧誘役となって別6名に申請を勧誘し,他の共犯者らが虚偽の確定申告書等を作成,実際の申請手続を代行するしたことにより,合計700万円の持続化給付金を不正受給した。

【主な判決理由】

・ 多数の虚偽申請を繰り返した職業的犯行と評価でき,被害額も多額。

・ 1人当たり17万円を手数料として受け取っており,本件各犯行にとって重要かつ不可欠な役割を果たしているといえるが,上位の共犯者らと比較すると,やや従属的な立場である。

・ 被告人は,自己名義の申請によって受領した給付金については延滞金等を含めて全額弁償し,他の申請名義人6名も,それぞれ受領した分の全額を返金。財産的被害が全て回復している。

・ 被告人は,申請名義人ら6名に対して,1人当たり35万円を支払い,自らの返金分と併せ,被告人自身で合計310万円の被害弁償に努めた。

 

* 令和3年2月24日 那覇地方裁判所・判決

  懲役1年4月・執行猶予4年

【事案の概要】

自称コンサルタント業者の勧めもあり,被告人は,自己が小売業を営む個人事業主であると偽って,内容虚偽の事業内容・事業収入等を記載した上で,持続化給付金を申請し,100万円の持続化給付金を得た。

【主な判決理由】

・ コンサルタントによる勧誘が契機とはいえ,知人らにも不正申請の勧誘をしていたことなどの犯行態様・経緯にも照らすと,被告人自身の給付金詐取行為に対する規範意識が鈍麻しているといえる。

・ 投資等により約8000万円の借金があり,その返済金を得る必要があったという動機にも酌むべき点はない。

・ 親族の助けを得て,詐取した金銭を全額返還した。

・ 法律上の自首は成立しないにせよ自ら警察に出頭して本件犯行を自白した。

 

Aさん

 「いつ逮捕されるかビクビクしながら暮らすのは嫌なので,自首や持続化給付金の返還なども積極的に進めていきたいと思います。先生,私の弁護人になってくれますか?」

 

弁護士

 「もちろんです。まずは不起訴処分が得られることを最優先目標に,一緒に頑張りましょう。」

 

ヴィクトワール法律事務所の弁護士への相談をお勧めする理由

 持続化給付金詐欺について,ヴィクトワール法律事務所の弁護士にご相談いただいた場合は,持続化給付金の返還や自首,捜査機関との折衝などの弁護活動をいたします。不起訴処分等のより軽い処分を勝ち取れるよう,お手伝いをいたします。実際に,持続化給付金の不正受給の件で,弁護の結果,不起訴を勝ち取った実績もあります。

また,仮に起訴された場合は,より軽い刑罰となるよう,公判弁護に尽力いたします。

 持続化給付金詐欺事件に関与された方は躊躇されることなく,是非,ヴィクトワール法律事務所までお問い合わせください。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

刑事事件について高い専門性とノウハウを有した6名の弁護士が在籍する法律事務所です。

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