罰金刑とは?前科になる?刑事事件に詳しい弁護士が解説

罰金刑とは

犯罪行為に対する刑罰として、国に財産を納める刑を、財産刑といいます。
犯罪に関係のある特定の物の所有権を所有者から剥奪して国庫に帰属させる財産刑を「没収」、一定額の金銭を徴収する財産刑を「罰金」、「科料」といいます。

「罰金」と「科料」の違いは金額で、「罰金」は1万円以上(刑法15条)、「科料」は1千円以上1万円未満(刑法17条)です。
罰金刑の上限は、刑法や各法律の罰則規定において定められています。

罰金刑は、正式な刑事裁判ではなく略式手続によって言い渡されるケースが多いです。
略式手続とは、簡易裁判所で行われる書面上の裁判です。簡易裁判所は、軽微な事件であって、被疑者の異議がない場合に、100万円以下の罰金または科料を科すことができます(刑事訴訟法461条)。

罰金の可能性がある犯罪

刑法では、傷害罪(204条)につき15年以下の懲役又は50万円以下の罰金、脅迫罪(222条)につき2年以下の懲役又は30万円以下の罰金、窃盗罪(235条)につき10年以下の懲役又は50万円以下の罰金が定められており、他にも罰金刑が定められた罪は複数あります。
刑法以外でも罰金刑を定めた法律や条例は多数あり、例えば、各都道府県が定めているいわゆる迷惑防止条例においては、痴漢行為や盗撮行為に対し、(懲役刑と並んで)罰金刑が定められています。

罰金で前科は付く?

罰金刑になった場合、前科は付きます。

前科が付くと、就職や資格試験、海外へ行く際などに制限を受ける場合があります。職種によっては罰金刑であっても、懲戒などの処分を受ける可能性があります。
また、罰金刑でも執行猶予の可能性があります。刑法25条1項では、50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、執行猶予を付すことができることを定めています。

罰金の納付

罰金は基本的に一括払いで決められた期間内に納付しなくてはいけません。検察庁に直接お金を持参するか、納付書に基づいて金融機関で支払いをします。
ただ、急病など、一括で罰金を納めることができないやむを得ない事情がある場合には、検察庁の徴収事務担当者に相談することで、分割払いや期限の延長が認められるケースもあるようです。

罰金を払えなかったら

定められた期限内に罰金を支払わない場合、検察庁から督促状が届いたり、連絡が来ることになります。それでも支払わなければ財産の強制執行(差押え)が行われます。

労役場

罰金を支払えない場合、労役場に留置されて働くことになります。
労役場での作業は、1日あたり5000円に換算されます。土日祝日の作業はありませんが、留置されている期間も1日と換算されます。そのため、例えば罰金10万円の場合は20日間、50万円の場合は100日間労役場に留置されることになります。

罰金刑にならないために弁護士のできること

被害者がいる犯罪では、被害者に対して真摯に謝罪し、示談を成立させることができれば、不起訴処分となることが多いです。(一例として、迷惑防止条例違反の盗撮行為や痴漢行為、軽微な窃盗、暴行・傷害など)不起訴処分になれば、そもそも起訴がなされず、罰金刑を科せられることがないので、前科がつきません。
とはいえ、被害者は、「加害者である被疑者とは直接やり取りをしたくない。」という人がほとんどです。そこで被疑者に代わって弁護士が間に入り、謝罪文や示談金の受け渡しをサポートします。
被害者の衝撃や動揺、怒りの念が強く、なかなか示談交渉に応じてもらえない場合もあります。そのような場合、起訴・不起訴の判断権者である検察官に対し、示談交渉の進捗はどうなっているのか等を報告しておかないと、満足な示談交渉もできないうちに、突然起訴されるという事態も起こりえます。
また、示談が成立しなかった場合には、他の方法で謝罪や反省の意思を示す必要がありますが、その成果をきちんと検察官に伝えなければ、やはり、事情が分からない検察官が起訴処分をしてしまう可能性があります。
弁護士は、検察官とこまめに連絡を取って、被疑者に有利な事情を逐一伝えることで、粘り強く不起訴処分の獲得を目指します。

罰金刑にするために弁護士のできること

傷害罪や窃盗罪のように、懲役刑又は罰金刑を科すことが定められている犯罪の場合、問題となる犯罪行為の悪質性や前科の有無・内容によっては、検察官が懲役刑を科すのが相当であると考えて、正式起訴をする場合があります。
正式起訴をされた場合には、被疑者は、公開の法廷で審理を受けることになり、心身共に大きな負担が発生します。
そこで、弁護士は、被疑者が事実関係を認めている事件で、懲役刑の求刑が予想される場合には、被疑者に有利な事情を集めて、それをまとめた意見書を作成・提出するなどして、検察官に対し、罰金刑にするよう求めます。
この場合、検察官に、罰金刑の求刑が相当であると判断されれば、略式起訴され、書面審理のみで罰金刑が科されることになるので、裁判に出廷する負担を軽減することができます。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

刑事事件について高い専門性とノウハウを有した6名の弁護士が在籍する法律事務所です。

毎年500件以上のご相談が寄せられており、高い実績にもとづいた最良のサービスを提供いたします。

豊富な実績を元に刑事事件に関するコラムを掲載しております。

お気軽にお問合せ、ご相談ください。03-5299-5881 お気軽にお問合せ、ご相談ください。03-5299-5881 メールでのご相談はこちら