横領をしてしまったら?逮捕される?弁護士ができることを解説

横領罪とは

会社でお金を横領してしまった場合、その事実が明らかになれば、逮捕されたり警察に呼び出しを受けることがあります。弁護士は、事件化を防ぐための示談交渉や、逮捕された場合は早期の釈放や不起訴処分を目指し活動をすることができます。
横領の被害に遭われた企業の方はこちら。

●単純横領罪(刑法第252条)

単純横領罪は、自己の占有している他人の物を横領した場合に適用されます。
刑罰は「5年以下の懲役」です。

●業務上横領罪(刑法第253条)

業務上横領罪は、業務で自己の占有している物を横領した場合に適用されます。
刑罰は「10年以下の懲役」です。
業務とは社会生活上の地位に基づき反復継続して行われる事務を指します。金銭等の財物の委託を受けて管理する職務についている、銀行員や会社の経理担当者などが横領した場合に本罪の対象となるケースが多いです。

その他、遺失物、漂流物その他の占有を離れた他人の物を横領したときに成立する占有離脱物横領罪(遺失物横領罪)があります。

横領をしてしまった場合

横領をしてしまった場合には、民事と刑事両方の責任が生じます。

民事事件

被害を受けた会社が損害賠償を請求することがあります。
裁判になった場合には横領した額だけでなく、調査費用や弁護士費用なども加算して請求されることになるでしょう。訴訟を提起されてしまった場合は、基本的に弁護士に依頼することが必要です。

刑事事件

被害を受けた会社が警察に告訴したり、事件に気付いた同僚等が告発したりした場合には、刑事事件となります。
在宅事件として捜査が進む場合もありますが、被害金額が大きい場合や常習的に継続して横領していた場合には逮捕される可能性が高くなります。

逮捕された場合

逮捕された場合、身体拘束が予想される期間は下記の通りです。

⇒逮捕されると48時間以内に検察官のもとへ身柄を送致される
⇒検察官は、被疑者の身柄を受け取ってから24時間以内に、勾留請求をするかどうか決める
(検察官の勾留請求を受けた裁判官が、当該被疑者を勾留すべきと考えた場合には勾留決定がなされ)
⇒勾留決定がなされると10日間の身柄拘束(勾留延長があれば、さらに最大で10日間)
⇒起訴された場合は保釈が許可されるまで身体拘束が継続

もちろん事件の内容によっては、数日で釈放となる場合もあり得ますが、最長の場合には捜査段階で最大23日間程度の身体拘束が予想されます。勾留が決定してしまうと、長期に渡る身体拘束を受けることとなり、仕事や私生活への影響は避けられません。

逮捕から勾留請求まで

逮捕された警察署で取調べを受けることになります。逮捕から48時間以内に事件と身柄が検察庁に送致されます。検察官が、捜査のために、さらなる身柄拘束の必要があると判断した場合は、裁判官に被疑者を勾留するように請求します。
なお、逮捕から勾留が決定するまでの間(最大で72時間)は、弁護士以外の面会は認められない場合がほとんどです。

※勾留が決定した場合、資産が50万円以下の被疑者であれば、国選弁護人を選任することができます。
もっとも、この国選弁護人は、勾留決定前には選任することができないので、「勾留される前に、家族や職場の人と連絡を取りたい。」「勾留されないための弁護活動を行なってほしい。」という場合には、私選弁護人を選任する必要があります。

勾留

勾留とは逮捕に引き続き身柄を拘束する処分のことを言います。
勾留するには、「罪を犯したことを疑うに足る相当な理由があること」に加え、以下の3点のうち、ひとつ以上該当することが必要となります。
・決まった住所がないこと
・証拠を隠滅すると疑うに足る相当の理由があること
・被疑者が逃亡すると疑うに足る相当の理由があること
検察官の勾留請求が裁判所に認められ、勾留決定が出された場合には、10日間の身体拘束を受けることになります。そして、検察官が、身体拘束を継続した上でさらなる捜査を尽くすことが必要と判断した場合には、さらに最大で10日間勾留が延長されることがあります。

検察官による最終処分

検察官はこの勾留期間中に、被疑者の取調べや関係者の事情聴取、客観証拠の収集等を行なって、当該事件を起訴するか、不起訴にするか決定します。検察官が、そもそも被疑者が横領したという事実を立証できないと考えた場合(嫌疑不十分)や、犯罪事実そのものは立証できるけれども、事案の軽重や被害者の処罰感情、被疑者の前科の有無等を総合考慮して、今回に限り起訴をしないと考えた場合(起訴猶予)には、不起訴になります。
一方で、起訴には、略式起訴(書面審理のみで罰金又は科料の刑罰を科す、略式手続きでの裁判を求めること)と正式起訴(公開法廷での裁判を求めること)の2種類があります。
単純横領罪及び業務上横領罪は、法定刑に懲役刑しか定められていません。ですので、罰金又は科料の刑罰を科すということが考えられず、起訴される場合には、必ず正式裁判になります。
遺失物等横領罪の場合は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料が法定刑となっています。軽微な事件で、被疑者も事実を認めている場合には、略式起訴が選択されることも十分考えられます。

弁護士にできること

横領罪には、単純横領罪、業務条横領罪、遺失物等横領罪の3種類がありますが、もっとも刑事事件化しやすいのは、「業務上横領罪」です。
横領額が増えれば増えるほど、刑事事件化、そして逮捕の危険性は高まります。

示談交渉

「横領をしてしまった…。」という方は、一刻も早く、被害者との示談交渉を開始して、横領してしまったお金を返す必要があります。
そして、まだ被害者が捜査機関に被害届や告訴状の提出を行なっていないのならば、きちんとお金を返している間は、捜査機関に対し、被害届や告訴状の提出をしないという約束をしてもら
ったり、既に被害届や告訴状が提出されているのならば、返金と引換えにそれらの書面を取り下げるという約束をしてもらったりすることが考えられます。
とはいえ、横領したお金全てを一括で返すことはなかなか困難だと思います。そのような場合、工夫を凝らした分割返済案(例:初回返済の頭金の額をできる限り多くする、家族に保証人になってもらう等)を提案し、粘り強く交渉することで、被害者との間で、示談が成功する可能性は高まります。
諦めずに、弁護士に相談されることをおすすめいたします。

自首

どうしても返金が難しい場合には、自首をすることも考えられますが、場合によっては、自首のために出頭して、その場で逮捕されてしまうという事態も考えられます。
自首に臨むにあたっても、事前に弁護士に相談されることをおすすめいたします。

 

当事務所では、刑事事件の被害者との示談交渉、自首同行の経験が豊富な弁護士が多数在籍しています。
お悩みの際は、お気軽にご相談ください。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

刑事事件について高い専門性とノウハウを有した6名の弁護士が在籍する法律事務所です。

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豊富な実績を元に刑事事件に関するコラムを掲載しております。

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