目次
強制性交等罪とは?
強制性交等は、13歳以上の者に対して、被害者が反抗できないくらいの暴行又は脅迫をして性交等をする行為です。13歳未満の者に対しては暴行や脅迫をしなくても、性交等をした場合は、強制性交罪が成立します(刑法177条)。
ここでいう性交等とは、性交、肛門性交、口腔性交をいいます。それぞれ言葉のとおりですが、通常の性交、肛門を用いた性交、口を用いた性交が該当します。
また、「暴行」とは、身体に向けられた不法な有形力の行使(ナイフを突きつける等)を、「脅迫」とは、害悪の告知(「騒いだら殺す」と告げる等)を意味します。
「暴行」「脅迫」の程度は、相手を著しく困難にする程度のもので足り、犯行を抑圧する程度に達する必要はありません。その程度については、暴行・脅迫の態様のほか、時間や場所の状況(深夜か昼間か、街中か郊外かなど)、被害者の年齢・精神状態等様々な事情を考慮して判断することになります。例えば、被害者に知的障害がある場合は、通常よりも軽度な暴行や脅迫でも犯罪が成立することが考えられます。
準強制性交等罪とは?
暴行や脅迫を用いずに抵抗できない人に犯行に及ぶと準強制性交等罪となります(刑法178条)。例えば、酒に酔って抵抗できない、医療行為と信じ込ませるなどの状況で性交等に及ぶと本罪が成立します。
法定刑は、強制性交等罪と同じです。
監護者性交等罪とは?
さらに、18歳未満の者に対して、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした場合も、強制性交等と同様に犯罪になります(監護者性交等 刑法179条2項)。
本罪は強制性交等罪と異なり、性的行為に至るまでに直接的な暴行又は脅迫は不要となります。なお、「影響力があることに乗じて」と評価できる場合には、被害者の同意は問題とならず(同意があってもなお監護者性交等罪が成立するという意味です。)、犯罪が成立するとされています。
法定刑は、強制性交等罪と同じです。
強制性交等の罪の法定刑
強制性交等罪の場合は、5年以上の有期懲役となります(平成29年6月の法律改正以前は、強姦罪として3年以上の有期懲役、集団強姦罪として4年以上の有期懲役とされていましたが、強制性交等罪はそれらより重い法定刑が定められました。)。
執行猶予は、懲役3年以下の宣告刑(実際に裁判で言い渡される刑)にしか付けることができませんので、強制性交等罪で起訴され有罪となると、情状酌量等で減刑されない限り、実刑が見込まれることとなります。
不同意性交罪の成立?性交同意年齢の引き上げ?
2023年7月13日から「強制性交等罪」の名称が、同意のない性交が処罰対象となることを明示するために「不同意性交等罪」に変更されました。なお、施行日の2023年7月13日以前に行われた行為については、強制性交等罪で処罰されます。
改正法では、強制・準強制性交等罪を不同意性交等罪に統合されます。(法定刑は懲役(今後、「拘禁刑」と名前が変わる予定です。)5年以上は変わりません)。そして、要件として「暴行・脅迫を用いる」に加え「アルコール・薬物を摂取させる」「恐怖・驚がくさせる」などの8つの行為を列挙しています。
これらにより「同意しない意思」の「形成、表明、全う」を困難な状態にさせた場合、処罰できるとしました。
また、性的行為に関して自ら判断できる「性交同意年齢」は16歳へ引き上げることとしています(従前は13歳)。つまり、中学生に相当する16歳未満との性交は、同意の有無にかかわらず違法となることになります。もっとも、同世代間の行為は罪に問わず、13歳から15歳の場合は5歳以上の年齢差がある相手を処罰対象とすることにしています。
強制性交等罪における弁護活動
1 捜査段階(起訴前)
強制性交等罪で捕まった場合は、法定刑が重いのと証拠隠滅の可能性が認められやすく、基本的に勾留される可能性が高いです。
勾留された場合、少なくとも10日間(延長された場合は20日間)は警察の留置所から出られない状態になってしまいます。この間、会社を無断欠勤することになり、解雇されてしまう可能性もでてきます。ただし、弁護士を通して、被害者との示談交渉を行い、示談が成立し、被害届や告訴状を取り下げてもらえれば、留置所を出ることができる場合があります。早期に釈放されれば、勤務先などに逮捕されたことがばれずに、職場に復帰できるでしょう(なお、平生29年6月の法律改正により、強制性交等罪は強姦罪と異なり、非親告罪となりました。)。
また、合意をして性交等をしたのに、相手が「合意していなかった」と言い出すことがあります。強制性交等罪は、相手が13歳以上であった場合は、合意の下で行われた場合は成立しません。相手の言い分を争い、両者合意のもとで行為が行われたことを主張し、不起訴処分を目指します。
2 公判段階(起訴後)
起訴されてしまった場合は、罪を犯してしまっているときは執行猶予付きの判決が得られるように弁護をします。強制性交等罪で執行猶予付きの判決を得るためには、被害者の方に示談書や嘆願書を書いてもらったり、生活環境を改善することや、性犯罪再犯防止のクリニックに通院したり、贖罪寄付したり、家族の監督等反省と再犯防止の意欲を裁判官に伝え、反省の意思をしっかりと示し、情状酌量をしてもらう必要があります。
罪を犯していないときは、無罪が得られるように、無実を裏付ける証拠(メールやSNSのやり取り、直前・直後の防犯カメラの様子等)を提出する必要があります。被害者の証人尋問も行われることになりますので、無罪判決に向けて全力をつくすことになります。
強制性交等罪で不起訴になる可能性は?
強制性交等罪で逮捕されたとなると諦めてしまう方も多いかも知れません。
もっとも、令和3年の犯罪白書(法務省編)によれば、令和3年に強制性交等罪の罪名で処理された事件のうち、起訴されたのが502件、不起訴となったのは853件です。また、令和3年における有期の懲役刑又は禁錮刑を言い渡された総数に占める全部執行猶予率は63.8%でした(これは起訴されたすべての犯罪の数値です)。
勿論事案によって様々なケースが考えられますので一概には言えない部分もございますが、重要なのは強制性交等を認める場合であっても、否認する場合であっても、まずは弁護士に相談し、事案に応じた適切な対応をとるように努めることが大切です。特に、法定刑が厳罰化している現状、早期の動きこそが決め手になる場合が多いです。
当事務所では、それぞれの事案に即して、示談交渉、早期の身柄の解放や勤務先への対応、無罪主張のための証拠集めなど必要な弁護活動を行います。
是非、お気軽にご相談ください。