前科があるとできないことは?日常生活・将来への影響を弁護士が解説

前科とは?

有罪判決や略式命令を受けた場合、いわゆる「前科」が付きます(罰金刑であっても、「前科」となります。)。「前科」が付いてしまうと、海外への渡航が制限されたり、履歴書の「賞罰欄」に記載しなければならない場合がある等、社会生活への復帰を目指す上でさまざまな障害が生まれる可能性があります。このような状況になることを避けるため、弁護士は、前科の付かない「不起訴処分」の獲得を目指した弁護活動を行います。
「不起訴処分」とは、検察官が、最終的に事件を起訴せずに処分をすること(すなわち、前科は付きません。)をいい、不起訴処分には、嫌疑なし、嫌疑不十分など、犯罪を立証できないケースと、起訴猶予のように犯罪は立証できるものの今回に限っては刑罰を科するには及ばないと考えられるケースがあります。

前科と前歴の違い

前科と混同されがちな言葉として前歴があります。
 前歴は、有罪判決に至らなかった犯罪歴を指します。前述のように不起訴処分の場合や、警察段階で処分された軽微な事案(微罪処分)では、前科ではなく前歴のみが残ることになります。
前歴も前科と同様に捜査機関に記録されることになりますので、過去の前歴が刑事事件の処分を決定する際に不利に働くことがあります。もっとも、前科については再び罪を犯したときに執行猶予が付かない場合があったり、刑が重くなったりするという法律上の不利益があるのに対し、前歴についてはそのような定めはありません。そのため、前科が付かないということは非常に重要です。

前科が付くことによって予想される不利益

就職活動・仕事

就職する際に前科があることを申告しなければなりませんか?

自ら進んで申告する必要はありません。
ただし、前科があるにもかかわらず、面接で聞かれた際や履歴書の賞罰欄に殊更に虚偽の申告をした場合には、経歴詐称等を理由に解雇されてしまう可能性があります(かつ、解雇の有効性を争いにくくなります。)。また、後述のように法律で前科が「欠格事由」となる職業も一部存在します。
近年では企業側が採用予定の人物について調査をするケースも増えているため、実名報道がなされている場合などは、前科の情報が知られてしまう可能性が高くなります。もっとも、前科・前歴等の情報は検察・警察、本籍地の市区町村で厳重に管理されており、企業から問い合わせがあったとしてもみだりに第三者に公になることはありません。
要するに、就職先の企業等が、確実な情報として前科情報を把握する可能性は低いものの、インターネット等によりその手掛かりを得るケースはあり、それを面接等で聞かれるリスクはあります。

前科を理由に勤めている会社をクビになることはありますか?

基本的に、警察等の捜査機関から勤務先の会社へ逮捕等の連絡が行くことはありません。
ただ、逮捕されてしまうと、接見で弁護士や家族に連絡を頼まない限り、少なくとも数日は無断欠勤となってしまいますので、そこから会社が家族や警察に連絡を取り逮捕の事実が判明することがあります。当然ですが、会社での職務に関する犯罪で逮捕されたような場合には職場で捜査が行われることがあります。
刑事事件で逮捕されたことが会社に知られた場合でも、刑が法律に定められた「欠格事由」該当する職種以外では、必ずしも懲戒解雇になるわけではありません。勤務先の会社ごとの判断になりますが、起訴・不起訴といった検察の終局処分、或いは裁判の結果を待ってから処分内容を決める場合も多いでしょう。

海外渡航

前科が付くことによって海外渡航は制限されるのでしょうか?

結論からいいますと、パスポート取得、ビザ取得、入国審査といった各局面において、制限されることがあります。

パスポート(旅券)は取得できるのでしょうか?

まずパスポートですが、これは日本国政府が発行するもので、周知のとおり、海外渡航時には必須のものです。

パスポートの取得に前科がどう影響するのでしょうか?

パスポートの取得に関し定めた旅券法では、「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者」について、パスポートの発給が制限されることがある旨が定められています(旅券法13条1項3号)。執行を終わるまでの人、例えば仮釈放中の人については、この規定によりパスポートの取得が制限されることがあります。執行を受けることがなくなるまでの人、例えば執行猶予中の人についても、同様です。
また、公文書偽造罪等の前科がある人については、明文で、パスポートの取得が制限されることがある旨が定められています(旅券法13条1項5号)。
他にも、旅券法では、「死刑、無期若しくは長期2年以上の刑に当たる罪につき訴追されている者」等が挙げられています(旅券法13条1項2号)。「訴追」とは、例えば刑事裁判中であることを意味し、これは厳密には前科ではありませんが、パスポートの取得が制限され得るのです。

ビザ(査証)は取得できるのでしょうか?

パスポートは取得できたとして、ビザの取得に前科がどう影響するのでしょうか?
ビザは、パスポートと異なり、渡航先の国が発行するものです。
ビザを申請する際には前科の申告が必要になりますが、前科の内容次第では、渡航先の国がビザを発行しないことがあります。その場合、入国にビザが必要である国には入国できないことになります。

入国審査には通るのでしょうか?

上記のとおり、前科の内容次第では、ビザが発行されないことがあります。
それでは、入国にビザが必須でない国には自由に入国できるのでしょうか?
答えはノーです。
入国にビザが必須でない国であっても、例えばアメリカESTA(エスタ)を導入しており、ESTAでは前科・前歴に関する質問に回答しなければなりません。前科・前歴の内容次第では、ESTAによる認証が下りない可能性があります。また、前科・前歴に関し虚偽の回答をすれば、認証自体取り消されてしまい、以後、入国できなくなってしまうおそれがあります。
また、2023年から、EU加盟国はETIAS(エティアス)という事前渡航認証システムを導入する予定です。そして、ETIASでも、申請者は、過去10年に犯した犯罪の前科情報を通知しなければならないものとされています。こちらも、前科・前歴に関し虚偽の回答をすれば、認証自体取り消されてしまい、以後、入国できなくなってしまうおそれがあります。
以上のことは、他の一部の国が採用している認証システムについても、概ね同様です。
以上のとおり、前科がある場合、入国審査に通らない可能性があるのです。

資格等の制限・就くことのできない職業

公務員として働いているのですが、逮捕されると免職になってしまうのでしょうか?

通常、逮捕や前科が付いてしまったからといって当然に免職となるわけではありません。
ただ、公務員の方や、国家資格を持って働いている方は、罰金や禁錮以上の刑が確定すると、法律上の「欠格事由」に該当するとして免職となったり、資格が剥奪・取消とされたりする場合があります。また、そのような職に就こうとしたり、資格を取得しようとする際にも制限を受けることがあります。
多くの資格では、法律の定める欠格事由の他に、個別に審査機関を設け、懲戒等の審査を行っています。
例えば、公務員や教員は原則として、起訴され禁錮以上の刑が確定すると免職となり、執行が終わらない限り応募することもできません。医師は罰金以上の刑に処された者については免許を与えないことがあるとされています。

弁護士に依頼するメリット

弁護士は不起訴処分を目指し弁護活動を進めていきます。不起訴処分になることで被疑者が得られる主なメリットは以下のとおりです。

不起訴処分になることで被疑者が得られるメリット

①早期の釈放

身体が留置所等に拘束されている場合、不起訴処分になれば釈放されます。前科も付かないため、法律的に何ら制限を受けることなく、これまでどおりの日常生活に戻ることができます。

②刑事手続から解放される

不起訴処分になれば、通常は、同じ容疑での再逮捕や再捜査をされることはなく、刑事手続からの解放が見込まれます。

③前科が付かない

刑事裁判にかけられることもないので、前科が付く心配もありません。

弁護士を選ぶポイント・弁護士のできること

一度起訴された事件を後から不起訴にすることはできないため、事件の発覚後はできるだけ早く法律相談を受け、依頼する弁護士を選びましょう。

その際のポイントは

・同様の事件に取り組んだ経験があるか
・動きはスピーディか
・スケジュールは確保してもらえるか
という3つの点です。刑事事件では通常、急を要する弁護活動になるので、動きの速い弁護士を見つけることが大切です。当事務所は、刑事事件に強い経験豊かな弁護士が迅速に動けるよう態勢を組んでおります。
依頼を受けた弁護士は、弁護士である強みを利用し、不起訴処分に向けて迅速に弁護活動を開始します。具体的には、被疑者に有利な情報収集をしたり、その情報をもとに捜査機関に働きかけ不起訴処分が妥当である旨を訴えます。
また、被害者がいる事件では、示談成立のために被害者と交渉を行います。このような事件では被害者と示談することで不起訴になる可能性が高まります。ただ、被害者は加害者と直接接触することを避ける傾向があるため、弁護士が双方の主張を調整することで、示談がまとまりやすくなります。

解決事例

弁護活動により不起訴処分を獲得したケース

当事務所の弁護士は、弁護活動により依頼者様に前科が付かないようにすることを最重要視しており、刑事裁判になる前の捜査段階から事件を積極的に受任しております(刑事裁判になってしまうと、無罪判決とならない限り、ほとんどの場合、前科が付いてしまうことになります。)。
その結果、当事務所は、弁護活動により不起訴処分を獲得したケースやそれに関するノウハウを蓄積しています。捜査段階における弁護活動の目的の一つは、不起訴処分など、検察官による終局処分をできる限り軽い処分にすることなのです。

被害者との示談

例えば、暴行・傷害や痴漢・盗撮、窃盗など、法律上罰金刑がある事件については、依頼者様に前科・前歴がなかったり少なかったりすれば、被害者との示談によって不起訴処分となる可能性が十分に見込まれます。
当事務所には、これらの事件類型について、被害者との示談を成立させ不起訴処分を獲得した豊富な解決実績があります。
法律上罰金刑がない比較的重い事件についても、示談やその他の情状によっては、不起訴処分となる可能性がありますので、決してあきらめるべきではありません。
当事務所の弁護士は、強盗、強制わいせつ、強制性交等、誘拐等々、法律上罰金刑がない比較的重い事件についても、被害者との示談を成立させ不起訴処分を獲得した実績を有しています。

嫌疑不十分

依頼者様が事件を起こしたことを認めていない、いわゆる否認事件においても、場合により不起訴処分となる可能性が見込まれます。捜査機関は、立件した全ての事件を起訴しているわけではなく、証拠が不十分であることや逮捕後判明した事情により嫌疑不十分であるとして不起訴処分となることもあり得ます。
当事務所には、否認事件についても、不起訴処分を獲得した豊富な解決実績があります。
当事務所の弁護士は、否認事件についても、全部又は一部の黙秘、署名押印の拒絶といった被疑者の権利を行使することを助言したり、取調べへの同行などの弁護活動を行ったり、被疑者に有利な証拠を独自に収集したりするなどして不起訴処分を獲得した実績を有しています。

早期の釈放により失職を免れたケース

上記のほか、捜査段階における弁護活動の目的の一つは、不起訴処分となる以前に、できる限り早期の釈放を獲得することです。
結果として不起訴処分となったとしても、それ以前に約20日も勾留され、職を失ったり家族を失ったりすれば、依頼者様は大きな犠牲を払うことになります。
当事務所には、事件類型を問わず、被害者との示談を成立させ早期釈放を実現した実績や、否認事件であっても事案の特殊性、被疑者の事情を積極的にアピールして早期釈放を実現した実績があります。
当事務所の弁護士は、原則としてどんな事件であっても、早期釈放をあきらめず、早期釈放の実現のために必要な一切の弁護活動、準抗告申立て、勾留取消請求など、勾留を積極的に争う弁護活動を行います。
その結果、多くの事件において、依頼者様が勾留されずに釈放されたり、勾留期間の前半で早期に釈放されたりして、依頼者様は失職を免れることができました。もとより、その後も継続的に弁護活動を行い、結果として不起訴処分となったケースが数多くあります。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

刑事事件について高い専門性とノウハウを有した6名の弁護士が在籍する法律事務所です。

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