目次
逮捕から勾留のながれ
逮捕について
逮捕とは、罪を犯したと疑われる人(被疑者)の身体(身柄)を拘束する強制処分のことを言います。
逮捕は、以下の3つの種類があります。
(1)現行犯逮捕、(2)通常逮捕、(3)緊急逮捕
逮捕した後、警察は48時間以内に身柄を検察官に送検(送致)しなければいけません。
また、検察官は24時間以内に勾留請求するか、釈放するか、起訴するかを決めます。
現行犯逮捕
目の前で犯罪を行っている者を発見した場合、その場で逮捕することができます。
現行犯逮捕では逮捕状は必要なく,警察官ではない一般人でも逮捕することができます。一般の人が逮捕した場合は、至急、警察や検察庁に連絡して、犯人を引き渡すことになります。
通常逮捕
あらかじめ裁判官が発する逮捕状をもらって逮捕することです。
緊急逮捕
窃盗など刑の長期が3年以上の重い罪を犯したと疑われる場合で、逮捕状を請求する時間がないときに、まず理由を告げて被疑者を逮捕し、その後直ちに「その逮捕を認める」旨の裁判官の令状(緊急逮捕状)発付を求める場合のことです。
逮捕できる人は?
逮捕をする場合としては、
(1)警察官(司法警察員とされている麻薬取締官等も含みます。)が逮捕する場合、
(2)検察官・検察事務官が逮捕する場合、
(3)私人が現行犯人を逮捕する場合
があります。
警察官が逮捕する場合
原則として、逮捕時から48時間以内に、被疑者を釈放するか、
事件を被疑者の身柄付きで検察官に送る(送検)か、を判断しなければなりません。
警察官が被疑者を送検した場合
検察官は身柄を受け取ってから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内に勾留請求をしない限り、被疑者を釈放しなければなりません。
検察官が逮捕する場合
原則として、逮捕時から48時間以内に勾留請求をしない限り、被疑者を釈放しなければなりません。
勾留
勾留とは、被疑者もしくは被告人を刑事施設に拘禁することで、勾留請求は警察にはできないため、検察官が裁判官に請求します。
検察官から勾留請求があった場合、その理由について裁判官が被疑者と面接して勾留請求のあった事件の内容について質問します。
これを勾留質問と呼び、勾留質問の後、引き続き身体を拘束するかを決めます。
勾留は、原則として10日間と決められていますが、引き続き勾留が必要だと判断された場合はさらに10日間延長されます。
なお、勾留場所は裁判官が捜査機関の意見を参考にして決定しますが、多くは警察の留置所に拘束されます。通常、検察官が逮捕した場合は拘置所に留置されることになります。
解決事例 逮捕勾留に関する相談事例など
【事例】妻に対するドメスティックバイオレンスで暴行罪の現行犯逮捕~勾留請求を阻止した事例~
令和4年3月9日のお昼過ぎ、Aさんは夫婦喧嘩の際、思い余って妻のB子さんを殴ってしまいました。B子さんは夫に暴力を振るわれたショックと恐怖から警察に通報しました。臨場した警察官により、Aさんは暴行の現行犯逮捕をされてしまいました。
なお、B子さんは翌朝、近所のクリニックを受診し、Aさんの暴力により、左肩には全治1週間の青あざができていたことが判明しました。
【解決方法】
■現行犯逮捕直後の接見
Aさん夫婦は、Aさんの母親と二世帯住宅で同居していました。ヴィクトワール法律事務所の弁護士は、令和4年3月9日の午後6時にAさんの母親から、Aさんの弁護人になってほしいとご依頼を受けました。現行犯逮捕から8時間後、私たち弁護人はAさんが勾留されている警察署に赴き、Aさんと接見をしました。
Aさんから、夫婦喧嘩の理由・B子さんに暴力をふるってしまった経緯・B子さんとの結婚生活の様子など、本件暴行事件に関することを聞きました。また、Aさんはが勤務先の会社で経理課長をしており、3日後に大きな社内会議が実施されるということもわかりました。
■検察官に勾留請求をさせない!~B子さんとの示談交渉
Aさんを早期に釈放するためには、①検察官に10日間の勾留請求をさせないこと、もしくは➁裁判官に働きかけて、検察官の勾留請求を却下してもらうこと、のいずれかが必要となります。①の実現のためには、Aさんの逮捕から48時間以内に、担当検察官に対して、勾留請求をしないでほしい旨の弁護人意見書を提出する必要があります。一刻の猶予もありません。私たち弁護人は、①を実現すべく、事件翌日の令和4年3月10日、被害者のB子さんに示談の申入れを行いました。
B子さんは、この日の午後1時に、私たち弁護人と会ってくれました。
B子さんは、Aさんから暴力を受けた直後、ショックと恐怖から警察に通報したものの、まさかAさんがそのまま現行犯逮捕をされるとは思っていなかったとのことでした。B子さんから、「どうしたら主人は早く帰ってくるでしょうか。」と聞かれたため、私たち弁護人は、B子さんに対し、Aさんが非常に反省していることを伝えると共に、B子さんに被害届の取下げをしてもらえないかお願いをしました。
B子さんは、「主人が二度と私に暴力を振るわないと約束をしてくれるなら、被害届を取り下げても構いません。また、示談金といったお金は必要ありません。」と言いました。
■Aさんとの接見➁
B子さんとの面談後、令和4年3月10日の午後3時に、私たち弁護人はAさんに会いに、警察署へ行きました。B子さんの話を伝えるとAさんは、「二度と妻に暴力を振るわないことを固く約束します。夫婦喧嘩をしても、冷静に話し合いをするようにします。」と言いました。
そこで、弁護人が用意していた、「二度と妻に暴力を振るわない」旨を記載したB子さん宛の誓約書にAさんから署名・指印をもらいました。
■B子さんとの面談➁
Aさんから誓約書をもらった私たち弁護人は、すぐにB子さんに面談を申入れ、同じ日の午後5時に会うことができました。
Aさんが非常に反省していることを伝えた上で、B子さん宛の誓約書を手渡しし、被害届の取下げをしてもらえないか、再度お願いをしました。B子さんは示談合意書を受け取り、安心した様子で示談に応じてくれました。その場で示談合意書を作成することができました。
■検察官送致日~いざ検察官に意見書提出
令和4年3月11日、Aさんが検察庁に送致される日です。検察官はAさんから話を聞いた上で、10日間の勾留請求を裁判官に対して行うか否か、決定します。
この日の午前10時、私たち弁護人は、担当検察官に電話をし、勾留請求をしないでほしいと伝えると共に、弁護人意見書を提出しました。Aさんが非常に反省して、B子さんに誓約書を差し入れたことや、B子さんもAさんの謝罪を受けて被害届の取下げに合意する示談に応じてくれたことなどをまとめた書面です。
そして午後2時。検察官から私たち弁護人に対し、連絡がありました。
「Aさんと面談し、Aさんが心から反省していることがわかりました。また、B子さんと電話をし、B子さんご本人から被害届の取下げを希望する意思を確認することができました。勾留請求はしません。本日夕方、警察署でAさんを釈放するので、どなたかAさんのお迎えに来てください。」
■Aさんの釈放
私たち弁護人はすぐにB子さんと、依頼人であるAさんのお母さんに、3月11日夕方にAさんが釈放になることを伝え、B子さんらと共に、警察署に行き、無事、Aさんが釈放されるのを見届けました。
早期の釈放のためには、1日も早い弁護人の依頼が不可欠です。
ご家族・ご友人が逮捕されてしまった場合、すぐにヴィクトワール法律事務所にお問い合わせください。