前科とは何ですか?

前科とは何ですか?

前科とは

「前科」という言葉は刑法や刑事訴訟法で使われているわけではありません。法律上の用語ではなく、刑事事件の確定判決で刑の言い渡しを受けたことを指す一般的な用語になります。
刑法においては、執行猶予期間を経過した場合、禁固刑以上の刑の執行を受け罰金以上の刑に処せられないで10年を経過した場合、罰金以下の刑の執行を受け罰金以上の刑に処せられないで5年を経過した場合などは、刑の言渡しは、効力を失うとされています。
言い換えれば、刑の言渡しが効力を失っていない間は、前科があるということができます。
 
刑事事件において言い渡される刑の種類には、主に、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料があります。罰金も刑の一種ですから、罰金刑を言い渡された場合には、それは前科となります。

前科の影響

前科がある場合、法律上、種々の制限を受ける場合があります。
 
・資格制限
・海外渡航の制限
・選挙権及び被選挙権の制限
 
国家資格によっては、前科があると資格を取得できなかったり、資格を取り消されたりする場合があります。その内容や程度は、資格によって異なりますので、対象となる資格について具体的に確認する必要があります。
 
海外渡航は、受け入れ側の国によって基準が異なります。入国を希望する国の大使館等に問い合わせて確認することになります。前科があることによってビザが必要とされたり、ビザを申請する場合に前科を明らかにする必要があることがあります。一般的には、例えば勤め先の関係などで出張などをするときに、会社から、無犯罪証明書(犯罪経歴証明書、渡航証明書)の提出を求められることがあります。前科があると、その旨が記載されることになります。
 
一定の前科がある場合、選挙権及び被選挙権が制限されます。いわゆる市区町村の犯罪人名簿は、当初は選挙権及び被選挙権の有無を確認するために保存されていたものです。
 
また、前科がある場合は、事実上、次のような不利益を受ける場合があります。
・就労への影響
・量刑への影響
就職する際に、前科の確認をされる場合があります。いわゆる履歴書の賞罰欄がこれにあたります。ここに虚偽の記載をした場合には、懲戒の理由となる場合があります。
 
前科がある者が、さらに別の事件で有罪判決を受ける場合、前科があることが量刑において不利に考慮されることがあります。特に、前科とその別の事件が同種の犯罪である場合には、前科があることはより重く評価されます。
 
このような事実上の影響については、刑の言渡しが効力を失っていることは、必ずしも決定的に影響を否定する要素となりません。
就職する場合においては、刑の言渡しが効力を失っていることは、ひとつの要素として配慮はされますが、事案によっては賞罰を確認する雇主側の理由の合理性が認められる余地があります。
量刑においては、以前の前科から経過した時間の長短は考慮されますが、刑の言渡しが効力を失っていたとしても、やはり不利益に考慮されることは珍しくありません。

前科記録の保管方法

前科は、市区町村の犯罪人名簿に保管され、また、各地方検察庁においても記録されています。しかし、これらの内容は誰でも見られるものではなく、定められた正当な理由がある場合に限り照会することができます。
 
基本的には、これらの記録から、第三者である一般人が他人の前科を確認することはできません。

前科と弁護活動

犯罪を行ってしまった場合,前科がつくことがやむを得ない場合というのは存在します。
 
しかし,事件によっては,被疑者の謝罪等により,被害者が被害届を取り下げてくれたり,特に処罰を望まない旨表明してくれたりする場合もあります。このような事件の場合には,検察官は,犯罪は発生しているけれども,起訴はしないという判断をすることがあります。このような場合に,被害者側へ働きかけ,話合いを行うのは,弁護人が行うことが多いです。検察官が起訴をしなければ,裁判にもならないわけですから,もちろん前科もつきません。
 
犯罪を行っていない場合には,捜査機関にその旨理解してもらい,検察官には起訴をしないとの判断をしてもらうことになります。もちろん,弁護人は,被疑者の主張が正しいことを,証拠も集めながら捜査機関に伝えていくことになります。
 
しかし,裁判には絶対はありません。また,長期間勾留されることは,それ自体つらいことですし,仕事などへの影響も無視できません。このような場合に,まかり間違って裁判で冤罪の有罪判決を言い渡されることを防ぐために,また,早期の身柄の開放を求めるあまり,真実や自分自身の認識に必ずしも合致しないけれども,罪を認める被疑者がいることは否定できません。
 
このようなときに,弁護人が被疑者の真意を把握した場合,弁護人は,真実と被疑者の要望との間で判断に迷うことになります。このような場合は,被疑者と弁護人とでとことん納得できるまで話し合うことになります。
 
確かに,前科の有無の影響は無視できませんし,前科がつかないのであれば,それに越したことはありません。とはいえ,仕事を失っては生活もままならなくなるかもしれません。しかしながら,ご自身の信念を曲げたというご記憶は残ることになります。当事務所では,既に罪を認めて不起訴や軽い刑で刑事事件は終わったけれども,やはり納得ができないので刑事手続をやり直したいというご連絡もしばしば頂きます。しかし,事後的にやり直すことは非常に困難です。最初の段階で,ご自身として納得される方法を見つけるしかないように思います。

執筆者

ヴィクトワール法律事務所

刑事事件について高い専門性とノウハウを有した6名の弁護士が在籍する法律事務所です。

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